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樹上の村

街角保管室

街角の更新ログ

何となく残しておくと面白いかも知れないと思ったので記録しておくことにする。

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2019/8/11(2/3)

「……寝てる間に攫われちまうってか。厄介なモンだぜ」
「今の所この情報は一部の者以外に公表していません。『謎の存在による謎の拉致』など……多くの民や子供達の不安を煽るだけですからね。『ザントマン』とやらの正確な正体を掴むまでは、少なくとも」
 だろうな――ディルクはそう呟き、さて今後の展望を見据えなければならなかった。
 真っ当なだけではない彼は一通り悪徳をも嗜み、理解する。『永遠に美しい幻想種』が如何程の商品価値を持つのかは想像するに難くない。ラサがそれに手を染めるかどうかは別にして、垂涎の商売足り得る理屈は理解出来る。
 果たして『ザントマン』とやらの犯行が単純な金銭欲のみを理由にしているかは知れなかったが……
 ひとまず当面はこの『ザントマン』なる人物を追うのが手掛かり、足掛かりになるのは確実だ。同時に、形成している売買ルート潰しも重要だ。拠点潰しに出向いた者達の方で、イグナートやセララが収集した情報によるとまだまだ複数の拠点・活動の記録があったらしい。
 しかしこの点で問題なのが……なぜザントマンはそんなルートを持っているのかと言う事。
 商売のルートと言うのは全く外部の人物が一朝一夕で網を張れる様なモノではない。規模が大きくなるにつれて時間と人脈が必要になるモノだ。そう考えると『ザントマン』とは全く存在の掴めない謎の人物――ではなく。
 元から『ラサ内部に存在している人物』なのではないか、と。

 (……その事態こそが最悪なんだけどな)

 勿論これはあくまで推測だ。違う可能性も存在する。
 しかしもし『そう』であるのなら、もはや言い訳のしようもなくなる。長である自分が関わっていないと証明出来ても、大多数の民は『ラサ』という一括りに対して良い感情を抱く事はないだろう。勿論やれることはやれる限り行うが――万策尽きれば後に残るのは誠意を見せる、と言う手段だけしか残らない。そして、それは謂わば『敗戦処理』に過ぎまい。
 深緑と長らくの同盟関係を結んできたラサとしては彼女等の信頼を失う事は大いなる国益の損失である。何故ならば、ともすれば閉鎖的とも揶揄される深緑はラサにだけは心を開いてきたのだから、色々な意味でその関係は特権的だからである。
「誠意――か」

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