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樹上の村
2019/8/11(1/3)
『ザントマン』
青天の霹靂、一寸先は闇、禍福は糾える縄の如し。
如何な平和を謳歌していたとしても、留まりを良しとしてそうあるように努めていたとしても。
やはり、ささやかな願いが叶い続けるかどうかは運命なる大きな何かの胸先三寸に拠るものなのかも知れない。
『何か』が起きる時は、得てして突然なものだ。
深緑。『赤犬』と呼ばれしディルクは再びその地を訪れていた。
ラサの重鎮である彼が、外部に赴く機会はそう多くは無い。そんな彼の要件はただ一点。近頃深緑を騒がせている拉致事件の事であり――かの一件に出向いたイレギュラーズ達から報告に挙がった『黒幕』と思わしき者の名を伝える事だ。悠久の同盟者――深緑を脅かすその名は。
「ザントマン、そう呼ばれる存在が裏にいる……と。
成る程、その名は深緑でも有名ですよ――ただし、あくまで御伽噺の存在としてですが」
ディルクからの言を聞いたリュミエ・フル・フォーレはその名を思考内で反芻していた。
ザントマン。砂の男、を意味するその単語は深緑の中で有名な御伽噺に登場する妖精の名である。
――夜の森は危険だよ。さっさと眠ってしまいなさい。
そうしないと、眠たい砂が降ってきてザントマンに攫われてしまうよ――
……自らも身内に語った事のある御伽噺だ。内容はよく知っているとも。
「しかしそれは躾の為の子守歌。実在人物を謳った伝承ではないのです」
「いずれにせよ『そう』名乗る奴がいるのは確かさ。そっちでも怪しい奴はいたんだろ?」
ええ、まぁ。と目を伏せて紡ぐリュミエ。
ラサで起こっている事態である以上、ディルクに……というよりもラサの者に深緑内部で調査活動を行わせるのは非常に憚られた。リュミエとしては彼がそのような行いに加担する者だとは思っていないが、立場というのがどうしてもある。
故に第三者の立場としての意を受けたイレギュラーズに深緑内の調査 を依頼したのだが――
「こちらでは明確にザントマン、と名乗る人物がいた訳ではありませんが……
そちらの報告にあったのと同様に『砂』を纏う謎の存在がいたのは確かです」
あわや攫われる寸前だったとか。夢遊病の如く意識なく歩き、出回って。
『ザントマン』
青天の霹靂、一寸先は闇、禍福は糾える縄の如し。
如何な平和を謳歌していたとしても、留まりを良しとしてそうあるように努めていたとしても。
やはり、ささやかな願いが叶い続けるかどうかは運命なる大きな何かの胸先三寸に拠るものなのかも知れない。
『何か』が起きる時は、得てして突然なものだ。
深緑。『赤犬』と呼ばれしディルクは再びその地を訪れていた。
ラサの重鎮である彼が、外部に赴く機会はそう多くは無い。そんな彼の要件はただ一点。近頃深緑を騒がせている拉致事件の事であり――かの一件に出向いたイレギュラーズ達から報告に挙がった『黒幕』と思わしき者の名を伝える事だ。悠久の同盟者――深緑を脅かすその名は。
「ザントマン、そう呼ばれる存在が裏にいる……と。
成る程、その名は深緑でも有名ですよ――ただし、あくまで御伽噺の存在としてですが」
ディルクからの言を聞いたリュミエ・フル・フォーレはその名を思考内で反芻していた。
ザントマン。砂の男、を意味するその単語は深緑の中で有名な御伽噺に登場する妖精の名である。
――夜の森は危険だよ。さっさと眠ってしまいなさい。
そうしないと、眠たい砂が降ってきてザントマンに攫われてしまうよ――
……自らも身内に語った事のある御伽噺だ。内容はよく知っているとも。
「しかしそれは躾の為の子守歌。実在人物を謳った伝承ではないのです」
「いずれにせよ『そう』名乗る奴がいるのは確かさ。そっちでも怪しい奴はいたんだろ?」
ええ、まぁ。と目を伏せて紡ぐリュミエ。
ラサで起こっている事態である以上、ディルクに……というよりもラサの者に深緑内部で調査活動を行わせるのは非常に憚られた。リュミエとしては彼がそのような行いに加担する者だとは思っていないが、立場というのがどうしてもある。
故に第三者の立場としての意を受けたイレギュラーズに深緑内の調査 を依頼したのだが――
「こちらでは明確にザントマン、と名乗る人物がいた訳ではありませんが……
そちらの報告にあったのと同様に『砂』を纏う謎の存在がいたのは確かです」
あわや攫われる寸前だったとか。夢遊病の如く意識なく歩き、出回って。
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何となく残しておくと面白いかも知れないと思ったので記録しておくことにする。