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樹上の村

街角保管室

街角の更新ログ

何となく残しておくと面白いかも知れないと思ったので記録しておくことにする。

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2019/8/2(2/2)

 オランジュベネを興し、ブラウベルクは滅ぼす――後戻りなどなせるはずがない」
 厳格さを見え隠れさせる落ち窪んだ双眸が、ぎらりと光る。
「忌々しき失墜の地よ――あぁ、主よ。我は、見事この地に我が家を築きましょう」
 いるかどうかも分からぬ主に捧げ、男は静かに動き出した。



 ―――――幻想『レガド・イルシオン』
 貴族達によって統治され、混沌世界における中央部に位置し、温暖な高原部を擁する大国である。
 そして――救世主たるイレギュラーズが所属するローレットの本拠を都メフ・メフィートに置く国だ。
 かつて、サーカス団の策謀がイレギュラーズの手で最小限に防がれ、砂蠍の蠢動と鉄帝国の南征がほぼ同時期に起こったことは、記憶に新しい。
 そして、その戦争のど真ん中、幻想の南部にて小貴族が兵を挙げ、イレギュラーズの活躍により鎮圧された。

 生暖かく、冷たさを伴った風が窓辺から入ってくる。
「――そういうわけで、今、我らのブラウベルク領及び旧オランジュベネ領にて、暴動が
 いくつも起きております。暴動の伝播は我々の管轄区を越え、
 幾つかは他の所まで行っているとのこと」
「そうですか……引き続き、近隣諸侯の皆様には警戒を厳にして
 いただくことにいたしましょうか。こちらで検問の徹底をお願いしても、
 流石に行くなと言えないですし」
 少女――テレーゼ・フォン・ブラウベルク(p3n000028)は、青い髪を揺らして小さく呟いた。
 細められた双眸は、不思議と安堵と落ち着きに満ちている。
「ローレットの皆様に連絡を。自分で言うのもあれですが、
 落ちぶれた小貴族同士の争いとはいえ、魔種相手です。私達じゃ荷が重いでしょうから」
「これがオランジュベネの仕業である確証はありますか?」
「伯父は確実に攻めてきます。今までもさんざんやってきてくれましたし――何より、
 オランジュベネとブラウベルクはそういうモノ、らしいですから」
 そう言って笑うテレーゼの表情は、少しばかり疲れが見えた。
「今度こそ逃がさない。いえ――逃げる場所なんて与えてなるものですか。
 あれは、私の領民に傷を負わせて、私の友人を傷つけた。
 ……そのために、また友人を傷つけてしまうかもしれないのは、かなり歯痒いですけれど」
 ゆるぎない覚悟が籠った双眸で言ったテレーゼが静かに口を閉ざす。


※不穏な気配が幻想で蠢き始めたようです……

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