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樹上の村

街角保管室

街角の更新ログ

何となく残しておくと面白いかも知れないと思ったので記録しておくことにする。

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2019/7/26(2/4)

「レオンは大きくなった……でごぜーますね」
「『抜く瞬間が抜けた』のは不本意だったぜ。今じゃ勝負にならねえな」
 元々、同年代より小柄だったレオンはこの数年の成長期で随分とたくましくなっていた。
 幾分か低くなった声に、そこかしこについた幾つもの傷。
 ざんげの記憶の中にあった少年と、今のレオンの姿は完全にはイコールしない。
 衝撃的な展開から始まって――それでもきっとレオンはレオンの侭なのに。
 そこまで考えてざんげは思った。
(――ああ、レオンは冒険に出たですね――)
 未知の探求を、血沸き肉躍る冒険への憧れを隠さなかった彼だから。
 その夢が叶ったのならばそれはざんげにとっても何処か――ほんの僅かに温かい事だった。
「……もう、来ねーもんかと思ってたですよ」
「もう来る気なんて無かったさ。まぁ、それでもこうなったのは――俺も大概諦めが悪いね」
 ざんげの言葉に半目のレオンは苦笑する。
「だって、何だって繰り返しさ。何時だって繰り返しだろう?
 俺が大人になっても、爺さんになっても。オマエは同じ答えを返すだろう?
 太陽を照りつけても旅人は外套を脱ぎやしない。
 だから俺とオマエはまっとうに噛み合いやしないし――
 ――ああ、一応聞いておくが。オマエ、この数年で何か劇的な変化は?」
 ざんげは真顔で首を振る。
「良し、それならいい。流石の俺でも俺の不在中にオマエに変化があったなんて聞いたら。
 カミサマを恨むを通り越してぶっ殺してやりたくなる」
「神様――って呼んでいいかは知らねーですが、とんだとばっちりじゃねーですか」
「いやさ、手違い(バグ)の責任だ。奴には俺の八つ当たりを浴びる義務がある」
 冗句めいたレオンにざんげは曖昧な表情を浮かべた。
 彼女が『曖昧』を取る事自体が珍しい。本人の自覚がどうあれ、である。
「神様にヤキを入れるのはレオンに任せるですよ。
 ……でも、やっぱり分からねーです。どうしてレオンは今ここに……」
「てっきり、嫌われたとばかり思ってたですが」。ざんげは言葉の後半を呑み込んで小首を傾げた。

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