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樹上の村

街角保管室

街角の更新ログ

何となく残しておくと面白いかも知れないと思ったので記録しておくことにする。

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2019/7/25(2/3)

 ……ざんげは何時も駄々をこねる俺をかわしていた。
 それは、うんざりする程に毎度毎回繰り返されるやり取り。代わり映えもしない挨拶で日常。
 来訪と同じ数だけ繰り返された徒労でしか無かった。
「オマエ、一生ここに居る心算なのかよ。
 それって最悪だろ。どんな仕事だって休み位ある。
 ケチな武器屋のおっさんだって店番を替わる事だってあるんだぜ?」
「『神託屋』は私だけでごぜーますよ」
「分かってるよ。分かってるけど、ああ、もう!」
 クソガキはクソガキだからこそ思った事を素直に言えるもんだ。
 俺が捕まえたのは『やがて来る混沌(せかい)の終わりを予見する神託の少女様』。
 きっと何処かにいらっしゃるカミサマとやらの意を受けて終焉に抗う世界で一番有り難い聖女様だ。
 こいつが『こう』なのはきっと世界の為で、顔も知らない誰かの為で、俺の為で……
 でも、この頃の俺はきっとそんな事はどうでも良かった。
 繰り返しの数を忘れた先。
 兎に角、忘れもしない三度目の夏の日に――俺はあの女に言ったのだ。


「一回でいいよ」
「……一回、でごぜーますか」
「ああ。一回でいい。一度聞いてくれたらもう言わねーから」
 言葉は半ば本当で半ば嘘だった。
 正直な話、俺が一回で満足したかどうかは分からない。
 だが、一回でも――頑なな女に『ルール違反』をさせたなら、些細な何かが変わるそんな気がしていた。
「……」
「……………」
 見飽きる位に見た、ざんげの無表情。
 無表情でも俺には分かる。些細な気配に『揺れた』と思った。
 この女を『揺らす』事が出来たのは少しだけ誇らしく、だから僅かに縋ってしまう。
「……」
「……………」
 長い沈黙が本当に長かったのかは定かではない。
 唯、只管に長く感じる時間の後で、確かざんげはこう言った筈だ。

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