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樹上の村

街角保管室

街角の更新ログ

何となく残しておくと面白いかも知れないと思ったので記録しておくことにする。

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2019/7/25(1/3)

23 Years Ago...
 もし、俺がざんげと同じように。
 もし、俺がざんげと同じように『何一つ変わらない』なら。
 きっと空中神殿の時間は何一つ変わらず。平穏と思い出は一つとして歪まない。
 絵本の中の出来事のように求める事を知らなかったなら。
 どれ位の時間が流れても、何回季節が巡っても。
 俺は何時までも幸福(しょうねん)の侭だったのだろう――


 望みは望む程に遠ざかる。
 それは追いかける程に遠ざかる。
 運命の女(ファム・ファタル)は致命的なまでに無自覚で。
 余りにも贅沢で、余りにも些細な『願い』は解き方を忘れたパズルだった。
 きっと逃げ水のようだった。叶わない魔法のようだった。
 どうしても――どれだけ我慢しても、焦りと怒りはどうしたって俺の中に蟠る。
『自覚して身勝手な俺』は、人間の――それもクソガキで、ざんげの世界を許容出来ない。
 空中神殿の端から端――たったそれだけの世界で固定化されたあの女を到底尊重何て出来なかった。
 ……それで諦められる位に、歳を取ってはいなかったのだ。
 そして同時に、何も変わらずに居られる程に子供でもなかったのだ。


 ……最初に顔を合わせてから随分長い時間が経っていた。
 ざんげは何一つ変わらず、俺はそれなりに変化した。
 神殿で会った回数は覚えてないが、あいつがここを出た事は『一度も無い』。

 ――ざんげ、今日こそは降りてきて貰うからな――

 ……顔を見るなりの挨拶がそんな風になったのは一体何時の頃だっただろうか?
「私はここを離れる訳にはいかねーので」
「誰も来ないじゃん。一日位どうって事ないだろ」
「……それでも誰かが来た時、私が居なけりゃ困るでごぜーますよ」
 クソ真面目な無表情に似合いもせず気持ちばかり困ったような――罰の悪そうな色を張り付けている。
 桜の咲く春に誘った。「オマエも女ならそーゆーの好きだろ?」。
 暑い夏の日に誘った。「海って知らないだろ、オマエ」。
 葉の色付く秋に誘った。「エウレカっておっさんと知り合ったんだよ。幻想の仮装盛り上がるぜ!」。
 雪のちらつく冬に誘った。「シャイネン・ナハトだってさ。オマエも顔出せよ。有り難がられるぜ」。

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