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樹上の村

街角保管室

街角の更新ログ

何となく残しておくと面白いかも知れないと思ったので記録しておくことにする。

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2019/7/24(2/2)

「……どうしてここに来るのです?」
「来ちゃ悪いかよ」とレオンは怒る。
 怒りん坊の彼に私は首を振って問うた。
「いいえ。でも、レオンは何時もここは退屈だと言います。
 だから……どうして来るでごぜーます?」
「ばっ……か……オマエが辛気臭い顔してるからだよ。
 つまんねー場所につまんねー女が一人で居たら、そんなもんもっとつまんねーじゃん?
 別に来なくてもいいんだよ。むしろオマエが来い。そっちが降りて来い」
「私は……ここで出迎えるのが仕事でごぜーますから」
「ほらな。だから俺が来てやってるんだ。感謝しろよ!」
 そういうものか、と思ったのを覚えている。
 レオンは何時も不機嫌で、身勝手で、何時も一生懸命だった。
 私は口数が少ないから彼が黙れば静かになった。それを嫌うように何時も喋っていた。
 私は彼から色々な話を聞いた。地上の話、大変だった事、冒険への憧れ、本当に色々な話を。
「……でも、用がある訳ではねーのですね」
「しつけーな、オマエ。用が無くちゃ来ちゃいけねーのか?」
「空中神殿はこの場所にアクセス出来る誰を拒む事もしねーです。
 ……レオンの場合、バグであったとしても。それでも駄目ってルールはねーですから」
「ルールか」と大きく溜息を吐いたレオンは決まって私の頭を小突くのだ。
「オマエ、やっぱムカつく――」
 怒ってばかりいる癖に、そんな時は何故か楽しそうに笑っている。
 私はレオンが分からなくて、分からなかったけれど、彼が来るのは嫌では無かった。


 私は澱だ。

 夏が過ぎ、秋になる。秋が過ぎて冬が来る。
 季節が巡り、私は変わらない。出会った時より少し背が高くなったレオンが笑う。
「オマエ、変わらなさすぎ。ほら、本持ってきたからこれでも読めよ」
 又、夏が来て秋になる。秋が過ぎて冬が来る。
「よーし、あと何センチか。すぐ抜いてやるからな。覚悟しとけよ!」
 目線の変わった彼の声が少し低くなっていた。
 あどけない顔立ちは変わらなくても、その言葉が変わらなくても。
 流れる時と共に少しずつ、少しずつ変化は積み重なっていた。
 レオンが顔を出す機会は相変わらず多かったけれど、その頻度は少しずつ、少しずつ減っていく。
 私はつまらない女だから。私は彼の言葉に応えられた事は無いから。

 ――きっと、それは仕方のない事だった。

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