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街角の更新ログ

何となく残しておくと面白いかも知れないと思ったので記録しておくことにする。

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2019/7/24(1/2)

24 Years Ago...
 空中神殿を訪れる人間は多くは無かった。
 何日か、何週間か、何か月か――時に何年かに一度である事も。ふらりとやって来る『稀人』を出迎え、混沌召喚と特異運命座標の意味、混沌肯定――世界のルールを伝える事が私の仕事である。
『生まれた時からそうだし、この先も恐らくは変わらない』。
 特異運命座標に選ばれた何人かの『物好き』はしきりに私に話しかけたりしたけれど、私は面白い事を言えるタイプでは無いから、そんな彼等もすぐ顔を見せなくなった。
(……この間、口を開いたのは何時だっただろう?)
 ふとした時に過ぎる疑問にすら答えは易々とは返らず。
 引き延ばされた時間こそ日常であり、それは当たり前であって別段忌避するようなものですらない。
 私の世界は、狭い世界は。一人には広過ぎる空中庭園は昨日も今日も変わらない。
 きっと明日も同じ筈――その筈、だったのに。


「オマエ、もっと喋れよ」
「喋れと言われても、その……良く分からねーですし」
「何が好きとか、何がしたいとか。色々あるだろ。
 ……何なら俺が持ってきてやるから何か言えよ」
 ……空中神殿を訪れた『特異運命座標では無い唯一』はそうでなくても唯一人の存在だった。
 少年――レオン・ドナーツ・バルトロメイという――は、何故か良く私の神殿を訪れた。
 何処か顔を紅潮させ、不機嫌そうな――複雑な顔をして、私に文句を言いながら毎日のように顔を見せる。
 その言葉の大半は理不尽で、唐突で、私にとっては聞いた事も無いような内容で……それから少し面白い。
「何だかすまねーです」
「あん?」
「……良く、わかんねーのです」
「わかんないって……オマエ、それじゃ駄目だろ。
 いいか、俺が教えてやるから。何か見つけろよ。ええと、例えば……」
 私がそう応えた時、レオンは何時も怒ったような反応を見せた。
 怒ったような顔をしながら、お人よしに下手くそに私に説明をした。
 例えば季節に咲く花であるとか。例えば良く冷えたお菓子であるとか。
 多分それは彼なりに――女の子の好きそうなものを挙げていたのだと今思う。
 ……レオンは子供で、私は長くを生きていた。
 けれど、私の世界は空中神殿で閉じていて、レオンの世界は混沌全てであるかのようだった。だからなのだろう。私は答えを知らず、レオンは私が困る程に饒舌になるのだった。
「レオンは」
「あん?」

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