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樹上の村

街角保管室

街角の更新ログ

何となく残しておくと面白いかも知れないと思ったので記録しておくことにする。

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2019/7/23(1/2)

26 Years Ago...
 頬を撫でる初夏の風。
 青いキャンバスにもくもくと入道雲。
 空中神殿の一幕を見下ろしていたのは、晴れ過ぎる程に澄み渡った空だけだった筈だ。
「オマエは何時もそうだよなー」
 弾む足取りで朽ちかけた石畳の上を歩く。
「そう、とは何でごぜーますか」
「面白くもなさそうでさ。でも、暇でもなさそうでさ。
 暇だろ、こんな所。面白い事もねーし、俺しかいねーし」
 俺の言葉に小首を傾げた女は「……考えた事も無かったでごぜーますよ」何て言う。
 混沌世界にまことしやかに語られる『御伽噺』が唯の冗談でない事は知っていた。
 地上(した)には稀人――異世界から呼びつけられたという『特異運命座標(イレギュラーズ)』が確かに居たからだ。練達なんて国がある以上そこは疑う余地も無い。この世界には御伽噺が実在し、空には神託の少女(みずさきあんないにん)が居る――それは誰もの、俺を含めた共通認識だった。
 ……でも。
「どんな聖女様が出て来るかと思ったらよ。変な女、オマエみたいなのが一人で居るんだもん」
 物語に聞いた『それ』がイメージと同じだったとはとても言えない。
 女は酷く無表情で、酷く無感動で、無味乾燥としていて、それから――とても綺麗だった。
「私は変でごぜーます?」
「ああ、変だね。断然変だ! だって、こんな所に一人で居るなんておかしいだろ!
 笑わねーし。意地悪しても泣かねーし。オマエって本当に変な女!」
 吹き付けた風になびく髪を抑え、女は俺の言葉を静かに受け止めていた。
「……変って言えば」
 意趣返しですらないのだろう。女は何も変わらない表情で俺を指差した。
「――こそ、変でごぜーますよ。こんなの、初めてで――
 第一、――こそ暇でごぜーます。『つまらない所』にしょっちゅう来るでごぜーますからね」

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