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樹上の村

街角保管室

街角の更新ログ

何となく残しておくと面白いかも知れないと思ったので記録しておくことにする。

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2019/7/12(2/2)

「この混沌に生まれ落ち、悪逆の声に従い。世界を侵す事は紛れも無い罪である。
 アシュレイ・ヴァークライトも、ジルド・C・ロストレインも、シリウス・アークライトも。
 許されざる罪人なのは間違いない。そこに例外等認めれば、人の世の秩序は成り立たぬ。
 それを常に否定してきたからこそ、聖教国は聖教国であり続けた。間違いは無いな?」
「……はい」
 レオパルはフェネスト六世の言葉に頷く他は無い。
 彼は間違いなく正義の人である。私心を殺し、正義と神の為に国家を運営してきた理想的な法王である。
 さりとて、彼の治世は常に厳格だった。私情を、例外を認めず――何時も清廉潔白を求めていた。
 人は弱いものだから。人は情を、愛を知るものだから。
『例外』を認めれば、小さな蟻の一穴さえ巨大なダムは決壊しよう。
 故に彼はこれまで全ての『例外』を殺してきたのだ。その意味を知らないレオパルでは無い。
「……では、やはり。彼等には『咎』を」
「聖教国が聖教国である為には、致し方ない事だ」
 フェネスト六世の言葉は重く、断罪の刃は今日も厳しく振り下ろされた。
 されど、今日に限っては――言葉はそれで終わらなかった。
「だがそれは――『聖教国がこれまでと同じく。あくまで聖教国で在り続けねばならぬなら』だ」
「……陛下?」
「コンフィズリーの名誉を回復せよ。ロストレインの不正義をその後継に灌げと命じよ。
 それはヴァークライトの娘にしても、アークライトの息子にしても同じ事だ。
 聖教国には正義がある。その正義はこの瞬間も些かも曇る事は無い。しかし――」
 疲労に塗れた法王は玉座に深く寄りかかり、言った。
「レオパルよ、疲れた民を勇気付けるのだ。
 このネメシスを再建――いや、新しく築き上げるのだ。
 これはわしの治世を否定する愚かか。
 フェネスト六世の名を汚す乱心か。それでも。わしも、今だけは――」

 ――この先を、新たな未来を見てみたい。

 王は笑っていた。酷く珍しく酷く不器用な笑みだった。

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