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樹上の村
2019/7/7(1/2)
黒の断章
『嗚呼、胸を掻き毟りたくなる位に。猛烈な苛立ちを禁じ得ない』。
聖都の動乱に黒神父――パスクァーレ・アレアドルフィという――は酷く憤慨していた。
此の世を呪い、総ゆる悪を憎む彼が紆余曲折を経てネメシスに流れたのは暫く前の出来事だ。
以前、即ち只敬虔なる神の徒だった頃ならばいざ知らず、罪を呑み干し、罰の螺旋を欲する今の彼は、至上の潔白と正義を謳い、神の愛を追い求めるこの場所が『言葉程に綺麗でない事は分かっていた』のだが。
それはそれとしても、これ程の邪悪に厄災を受ける理由が何処にあろうか?
ネメシスには相応の正義はあった筈だった。
歪で理不尽極まる――パスクァーレにとって蛇蝎を眺めるに等しき所業に塗れていたとしても。
その全てが間違っていた筈は有り得ない。
この場所には娘を想う父の愛も、国を憂う王の気持ちもあった筈なのだから。
「――魔種、か。いや、それに阿る人間が悪いのか」
何処をも向かない呟きと共に斬撃の一閃が繰り出された。
血の線を引いて斃れたのは魔物の類か、不逞の兵隊か、それとも魔種そのものなのか。
パスクァーレはいちいちそれに頓着していない。
唯、身を潜める必要も無く純粋な暴力を掲げる事が出来る『戦場』は彼にとって都合の良い場所だった。
混乱を極める聖都を抜身の十字剣と共に駆け抜ける彼は――水を得た魚の如く悪を、理不尽を断罪する。
彼は聖都の人々を憎んでいない。
この街に普通の暮らしを営む無辜の誰かを害そうとは思わない。
但し、その正義は大凡何にも属さない。
黒の断章
『嗚呼、胸を掻き毟りたくなる位に。猛烈な苛立ちを禁じ得ない』。
聖都の動乱に黒神父――パスクァーレ・アレアドルフィという――は酷く憤慨していた。
此の世を呪い、総ゆる悪を憎む彼が紆余曲折を経てネメシスに流れたのは暫く前の出来事だ。
以前、即ち只敬虔なる神の徒だった頃ならばいざ知らず、罪を呑み干し、罰の螺旋を欲する今の彼は、至上の潔白と正義を謳い、神の愛を追い求めるこの場所が『言葉程に綺麗でない事は分かっていた』のだが。
それはそれとしても、これ程の邪悪に厄災を受ける理由が何処にあろうか?
ネメシスには相応の正義はあった筈だった。
歪で理不尽極まる――パスクァーレにとって蛇蝎を眺めるに等しき所業に塗れていたとしても。
その全てが間違っていた筈は有り得ない。
この場所には娘を想う父の愛も、国を憂う王の気持ちもあった筈なのだから。
「――魔種、か。いや、それに阿る人間が悪いのか」
何処をも向かない呟きと共に斬撃の一閃が繰り出された。
血の線を引いて斃れたのは魔物の類か、不逞の兵隊か、それとも魔種そのものなのか。
パスクァーレはいちいちそれに頓着していない。
唯、身を潜める必要も無く純粋な暴力を掲げる事が出来る『戦場』は彼にとって都合の良い場所だった。
混乱を極める聖都を抜身の十字剣と共に駆け抜ける彼は――水を得た魚の如く悪を、理不尽を断罪する。
彼は聖都の人々を憎んでいない。
この街に普通の暮らしを営む無辜の誰かを害そうとは思わない。
但し、その正義は大凡何にも属さない。
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何となく残しておくと面白いかも知れないと思ったので記録しておくことにする。