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樹上の村

街角保管室

街角の更新ログ

何となく残しておくと面白いかも知れないと思ったので記録しておくことにする。

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2019/7/4(2/2)

 こくりと船をこぎ、アストリア枢機卿は目を覚ました。
 ずいぶん古い夢を見ていた気がする。
 俊英の孤児たる彼女は、ふらりと現れた時から聖典を諳んじる事が出来た。
 神童。星の乙女。
 修道院から神学の道を目指した彼女は、長い年月を上り詰め此所に居る。

 振動と爆音。続く鬨の声。
 遙か前方だ。敵が――人間風情が、あの忌々しいイレギュラーズの小僧共が突入を開始したのだろう。

「おい……ロガリ」
 返事はない。彼女は振り返り舌打ちした。
 居るはずもない。
 ロガリは神器の護りを命じられている。そうさせたのはアストリア自身だ。
 あれは今後の為にも必要な物である。疎かには出来ない。
「くそめが」
 ぶつける先のない苛立ちに身を任せて、彼女は歩き出す。
 右の後ろに続くのは十名の騎士。全て動く死体。
 左の後ろに続くのも十名の騎士。真新しい深紅の鎧――月光人形。
「どうじゃ、木偶共」
 返事はない。
「同じ騎士から死体で十騎、模造で十騎」
 死体は虚ろに。深紅の騎士達は射貫くような憎悪の視線を枢機卿に投げかける。
 それでも月光人形に反逆は許されていない。
「二倍の収穫じゃ。実にプラクティカルだと思わんか?」
 あざ笑う。
「だのに顔を焼くなぞ、木偶風情がつまらん真似をしおって」
 颯爽と目指すのは門。向かうは最前線。

「……アブレウめ」
 ぐずぐずした、だらしのない奴だ。
 援軍に駆けつけるつもりが、このままでは勝利の凱旋となってしまうに違いない。
 戦などと言う物は――己が敵を皆殺しにすれば終わるのだ。
 奴めと呑み交わしたい葡萄酒もあった。
 これから国を分かち合う末永き友に、その程度の楽はくれてやってもよかろう。

 さて、ならば。
 事は単純。まずどの命から奪おうか!

 ※ネメシスの運命を左右する決戦が行われています……!

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