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樹上の村

街角保管室

街角の更新ログ

何となく残しておくと面白いかも知れないと思ったので記録しておくことにする。

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2019/6/20(2/4)

 苦笑したリンツァトルテの首筋を一筋の汗が流れ落ちた。
 蒸し暑い夜だが、感触は冷たく――故に気温が理由でない事は明らかだ。
「貴女は、これから天義を壊すのだろう?」
「ええ、その予定です」
「魂の器を破壊し、全ての抑圧を解き放つ」
「ええ、私は『強欲』なれば」
「――俺も、それに一口乗りたい」
 リンツァトルテの言葉にベアトリーチェは少しだけ驚いた顔をした。
「人間の貴方が、騎士の貴方が。魔種なる女の企てに加担すると?」
「生憎と俺一人じゃ何も出来ない、唯の一兵卒に過ぎないのでね。
 相応の満足は単なる参戦じゃ満たされない――貴女は俺がどういう人間だか知っているのだろう?
 俺は――イェルハルド・フェレス・コンフィズリーの息子だ。あの国に疎まれ、嫌われ、虐げられた、ね。
 復讐を望むのはおかしな話か? 無実の父親を、名誉を剥奪され、侮蔑と嘲笑の中生きてきた俺が。
 それを望むのはおかしいと――貴女は思うか」
「……………」
「怒りの日に鳴る――この復讐は全て遠き鎮魂歌なのさ。
 諸悪の根源がエルベルト・アブレウという一人の男だったとしても、システムの問題だ。
 エルベルトを排除した所で、ネメシスがネメシスである以上――一つだって変わらない。
 歪にねじくれた神の国なんて、無くなってしまえばいい」
 ベアトリーチェの柳眉が動く。切れ長の目はそう言い切った『元』騎士をねめつける。
「貴方は人間の侭、人間の国に反旗を翻そうと仰るのね。
 その実がどうあれ、敵の敵は味方――件の執務官さんは私を味方と思っているふしさえあるのに」
「アブレウはアブレウで片付けるさ。それは全くの別問題だから。
 ああ、俺は反転する心算は無いんだ。『お節介な友人』に止められて時期を逃したのもあるしね、何より。
 俺は俺の怒りをそれ以外の何かに邪魔されたくはない。
 これは俺の『強欲』であって、それ以外のものじゃない。
 ……なあ、七罪。『到底叶わぬような望みを他ならぬ貴女に持ちかける強欲』を。
 他ならぬ貴女は――貴女が、真っ向から否定出来るのか?」

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