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何となく残しておくと面白いかも知れないと思ったので記録しておくことにする。

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2019/6/17(1/3)

原罪(あい)或いは罰(せいぎ)の詩
 正義とはなんなのだろうか。
 少なくとも形を持たぬものだ。
 見る人間により、如何様にも変質する不定形だ。
 誠実な概念であり、不実そのものですらある――この国の誰が否定しようと。
 誰もが言う。耳障りな程に伝える。  正義。正義。正義。正義!  正しくあれかし、美しくあれかし。正義に従えと。唯、正しき事を成せと。
 此の世の誰にも『正しい事』なんて確定出来はしないのに!
「第一、正義とは何だ」
 苦笑いと諦念を交え、アシュレイ・ヴァークライトは嘆息交じりの言葉を吐き出した。
 色濃い疲労と苦虫を噛み締めたようなその顔は胸の内に燃ゆる不合理への怒りを感じさせるもの。

 正義とは何だ。
 魔種を討つ事か。成程。
『正しき』に従わぬ者を討つ事か。成程、成程――

 神は確かに天上におわすのだろう。
 さりとて、神の代行者を気取る人間は――何処まで行っても神ならぬ人間でしかない。
 有り難き経典も、信仰の盾も。物言わぬ神は決して『正解』と担保はすまい。
 ならば、究極的に――悪とは誰が定める。正義とは誰が定める?
 問えば皆言う『神の御心のままに』。その御心は一体誰が『保証』しよう?
「……思考停止だ。この国は神ならぬ人の国だ。『そういう』正義を望まれたのは誰なのだかな」
 ネメシスとは天罰の称号でもある。
 その罪と罰は時と場合をそう選ばぬ。
 時として子供ですら『悪』と見なして断罪を成す――神が望まれたのだと胸を張って。
(神が。神が。神が。神が――馬鹿共めが。大いなる神がそんな狭量を望むものか!)
 今この瞬間、何に身をやつしたとて。アシュレイの胸に信仰が残る限り、この怒りは消しても消えぬものだった。
「……あなた」
「――いや、まったく……どうしても、ね」
 目頭を押さえたアシュレイは、妻の言葉に脳の奥を痛ませる憤怒の色を押し込めた。
 アシュレイ・ヴァークライトは、かつて天義に所属していた騎士の一人である。とある任務の際に自身のとった行いが『不正義』と断ぜられ――死の淵を彷徨った者である。天義には珍しい話では無く、しかし彼が特別足り得るのは魔種として反転の切っ掛けを得た事と言えるだろうか。

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