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樹上の村
2019/6/16(1/2)
<神が正義を望まれる>
その日、ゲツガ・ロウライトは自身と共に戦ったイレギュラーズの一人が『悪しき呼び声』に堕ちたと耳にした。
言葉なく。机の上に置かれたティーカップに揺れる波紋を眺めたゲツガは報告書をさも興味なさげに塵箱へと放り込む。彼は時にして悪をも成すローレットの在り方を容認してはいないが、同時にイレギュラーズは神の遣わした徒であると認識している。
それ故に、己が孫娘がローレットに所属しイレギュラーズとして活動していることを静観していた。
だがそれは『そうした不正義が起こる前まで』だ。
少なくとも、現時点を持ってのゲツガは不正義の種がローレットにあった事を知ってしまった。
孫娘を無理矢理に連れ戻すことは容易にできよう。しかしそれを行わぬのは苛烈な正義を行う彼とて『ローレットに所属しながらも悪に手を染めず、正義を遂行』する内は見過すというスタンスを貫いているからだ。
だがもしも、孫娘がかの聖女のように悪に堕ちたならば――……
……いや、この思考自体が無為だ。
天義の騎士たるもの『一つの不正義』にあれやこれやと思考を巡らせても仕方がない。
例えば、そう。
もし万一に、己が孫娘が『そう』なったのだとしても。
「私がなすべきは変わらないのでしょう――神よ」
嘗て、自身と志を伴にし。そしてゲツガが断罪した――『ヴァークライト』の一件のように。
不正義は全て裁くのみ。
その呟きに、執務室の扉の影より覗く孫娘、サクラ(p3p005004)は祖父と共に剣を取った日を思い返す。
――どうか聞いてください、ここの月光人形達は……かつてロウライトが断罪した者達です。
そう、口にした日。祖父が信ずる『正義』に、少女は違和感を禁じ得なかった。
確かに祖父は高潔である。確かに祖父は潔癖で善良であり、心より正義を願っている。そこに疑う余地は無い。
しかし、少女は想う。正義の為。未来の善きを守る為。それは同じであるとしても――二者はきっと違うのだ。
<神が正義を望まれる>
その日、ゲツガ・ロウライトは自身と共に戦ったイレギュラーズの一人が『悪しき呼び声』に堕ちたと耳にした。
言葉なく。机の上に置かれたティーカップに揺れる波紋を眺めたゲツガは報告書をさも興味なさげに塵箱へと放り込む。彼は時にして悪をも成すローレットの在り方を容認してはいないが、同時にイレギュラーズは神の遣わした徒であると認識している。
それ故に、己が孫娘がローレットに所属しイレギュラーズとして活動していることを静観していた。
だがそれは『そうした不正義が起こる前まで』だ。
少なくとも、現時点を持ってのゲツガは不正義の種がローレットにあった事を知ってしまった。
孫娘を無理矢理に連れ戻すことは容易にできよう。しかしそれを行わぬのは苛烈な正義を行う彼とて『ローレットに所属しながらも悪に手を染めず、正義を遂行』する内は見過すというスタンスを貫いているからだ。
だがもしも、孫娘がかの聖女のように悪に堕ちたならば――……
……いや、この思考自体が無為だ。
天義の騎士たるもの『一つの不正義』にあれやこれやと思考を巡らせても仕方がない。
例えば、そう。
もし万一に、己が孫娘が『そう』なったのだとしても。
「私がなすべきは変わらないのでしょう――神よ」
嘗て、自身と志を伴にし。そしてゲツガが断罪した――『ヴァークライト』の一件のように。
不正義は全て裁くのみ。
その呟きに、執務室の扉の影より覗く孫娘、サクラ(p3p005004)は祖父と共に剣を取った日を思い返す。
――どうか聞いてください、ここの月光人形達は……かつてロウライトが断罪した者達です。
そう、口にした日。祖父が信ずる『正義』に、少女は違和感を禁じ得なかった。
確かに祖父は高潔である。確かに祖父は潔癖で善良であり、心より正義を願っている。そこに疑う余地は無い。
しかし、少女は想う。正義の為。未来の善きを守る為。それは同じであるとしても――二者はきっと違うのだ。
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何となく残しておくと面白いかも知れないと思ったので記録しておくことにする。