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樹上の村
2019/6/13(1/2)
<背徳の葡萄酒>
この聖都には『神』が居るとされている。
その存在は或いは――そう、或いは空中神殿でざんげが思う『神』とは些か違うのかもしれないが――信仰上の『神』を、その概念を国家で奉じるとするならば、その意志『とされる』正義の遂行が求められる事もあるだろう。
しかしながら多数の人の想う正義や信仰、全ての『正しき』が一枚板になる事等有り得ない。
それは清廉と潔白の天義を襲った今回の災厄が指し示す証明であり、故にこの都にも『神の御心以外の正義を信ずる事を是とする集団』が存在しているのは中央のみが認めないある種の必然だったのかも知れない。
例えばそれは――密教集団『ウィーティス』。
その教祖たる旅人は、元は天義の価値観に照らし合わせるならば『魔』に分類される『神』の一柱である。
そんな享楽的な『旧き蛇』サマエルは『禁忌』蔓延る天義の内情をゲーム感覚で見据えていた。
「ふぅむ……」
小さく息を吐いたサマエルは自身が教団の内部にも月光人形と内通している者が存在していたことを把握していた。
だが、そんなサマエルがこれまでに何かを為したという事実は無い。
「サマエル殿。良かったのですか?」
「なに、弔い位はしてやればいい。高潔『であった』この国が痴態を晒している。
ふふ……いや、ゲームもこうは転ぶとは思わなかったものでな。愉快――愉快すぎて腹が千切れるわ」
そこに存在する危険と害意を理解していない訳ではない。単に不干渉的であり、怠惰なのである。
彼女のスタンスから言えば来るもの拒まずではあるのだが――それを護るという意思も極端に低いのだ。
「御意に」。その言葉がどういった色を帯びていたかは本人のみぞ知るといった所か。
サマエルの背後で教団の入口――聖堂にて聖職者を務めるエドアルド・カヴァッツアは『一応』と教祖の言う弔いの用意をした。 彼にとっては月光人形の生死や先の戦いでの死傷者の増加などは露ほど興味はない。
「嗚呼、そうだ。エドアルド」
「なんでしょうか」
葡萄酒の注がれたグラスを弄りながらサマエルは表情を変えぬままのエドアルドを見上げた。 「――汝、『妹』は見つけたのか?」
「貴女こそ、『口にするのも憚られる『左目』のご友人』がかの勇者、ローレットの一員だったのでしょう」
<背徳の葡萄酒>
この聖都には『神』が居るとされている。
その存在は或いは――そう、或いは空中神殿でざんげが思う『神』とは些か違うのかもしれないが――信仰上の『神』を、その概念を国家で奉じるとするならば、その意志『とされる』正義の遂行が求められる事もあるだろう。
しかしながら多数の人の想う正義や信仰、全ての『正しき』が一枚板になる事等有り得ない。
それは清廉と潔白の天義を襲った今回の災厄が指し示す証明であり、故にこの都にも『神の御心以外の正義を信ずる事を是とする集団』が存在しているのは中央のみが認めないある種の必然だったのかも知れない。
例えばそれは――密教集団『ウィーティス』。
その教祖たる旅人は、元は天義の価値観に照らし合わせるならば『魔』に分類される『神』の一柱である。
そんな享楽的な『旧き蛇』サマエルは『禁忌』蔓延る天義の内情をゲーム感覚で見据えていた。
「ふぅむ……」
小さく息を吐いたサマエルは自身が教団の内部にも月光人形と内通している者が存在していたことを把握していた。
だが、そんなサマエルがこれまでに何かを為したという事実は無い。
「サマエル殿。良かったのですか?」
「なに、弔い位はしてやればいい。高潔『であった』この国が痴態を晒している。
ふふ……いや、ゲームもこうは転ぶとは思わなかったものでな。愉快――愉快すぎて腹が千切れるわ」
そこに存在する危険と害意を理解していない訳ではない。単に不干渉的であり、怠惰なのである。
彼女のスタンスから言えば来るもの拒まずではあるのだが――それを護るという意思も極端に低いのだ。
「御意に」。その言葉がどういった色を帯びていたかは本人のみぞ知るといった所か。
サマエルの背後で教団の入口――聖堂にて聖職者を務めるエドアルド・カヴァッツアは『一応』と教祖の言う弔いの用意をした。 彼にとっては月光人形の生死や先の戦いでの死傷者の増加などは露ほど興味はない。
「嗚呼、そうだ。エドアルド」
「なんでしょうか」
葡萄酒の注がれたグラスを弄りながらサマエルは表情を変えぬままのエドアルドを見上げた。 「――汝、『妹』は見つけたのか?」
「貴女こそ、『口にするのも憚られる『左目』のご友人』がかの勇者、ローレットの一員だったのでしょう」
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何となく残しておくと面白いかも知れないと思ったので記録しておくことにする。