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樹上の村

街角保管室

街角の更新ログ

何となく残しておくと面白いかも知れないと思ったので記録しておくことにする。

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2019/5/20(2/2)

 その背中を見送ってたっぷり三十秒――否さ、一分。
 静寂を好むアネモネは自身の聖堂に基本的に他の者を置かない。
「これで、宜しくて?」
「ええ。予想通りと言えば予想通り、予想外と言えば予想外でしたけれど」
 声色からガラリと変わったアネモネの言葉にベアトリーチェが薄く笑った。
「では、ここからを『本当の査問』としましょうか」
「何なりと」
「まず最初に、フォン・ルーベルグの一連の事件の根源は、貴女かしら?」
「ええ。そうなりますわね。演目『クレール・ドゥ・リュヌ』、月光劇場は満足頂けておりまして?」
 イエスともノーとも言わずにアネモネは続ける。
「貴女がフォン・ルーベルグに居たのは」
「そちらにご挨拶に伺おうかと思いまして――いや、冗談ですわ。
 座長たるもの、俯瞰して状況を見回すのは重要なお話です。『何かが足りない』ならば足す。
『演者が裏切る』ならば、適切に場を修正する――何れも必要な工程です」
「……では、みすみすと連行なんてされたのは」
「ふふ、それは――言わない方が宜しいのではなくて?」
 アネモネの第三の問いにだけ、ベアトリーチェは質問を以って答えとした。
 そう『普通に考えれば』この状況は適切ではないのだ。
 闇に潜む諸悪の根源が敢えて表に引きずり出される等、馬鹿げている。
 だが、『普通に考えないならばどうか』。連行を受け、周囲を兵に囲まれ、『拘束の聖女』を目の前にしても『そんなもの最初から問題にならない存在ならばどうか』。
 昏い三日月と共に、嗜虐的な愉しみのままだけにこの場を訪れる女ならばどうだったのか――
「しかし――予定外ではあるのです。
 どうも、この国にもこの国らしくなく鼻の利く方が居るようで。
 それはかのローレットであり、それを利用した探偵さんなのでしょうが。
 愉快ですが、多少鬱陶しいのも事実です。一幕はもう十分、次を進める時期なのかも知れませんわね」
「貴女ね、私が誰だか御存知ではないの?」
 アネモネは肩を竦めた。
 長らく異端審問等をしてはいるが、自身を前にこれ程あっけらかんとした者も居なかった。
「知っておりますとも。ですが、この場が証明しているではありませんか。
 貴方は関与しないまでも劇の続きを望んでいる――この先を眺めて、楽しみたいと考えている」
 返事をしないアネモネにベアトリーチェは微笑んだ。
「勿論、その期待は裏切りませんとも」

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