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街角の更新ログ

何となく残しておくと面白いかも知れないと思ったので記録しておくことにする。

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2019/5/20(1/2)

<月を呑む聖女>
「――白、ですわね」
「はぁ、白……でございますか」
『拘束の聖女』アネモネ・バードケージ――彼女の異端審問に掛かれば、大半の案件は黒くなる。
 白でも……とまでは言わないが、グレーでも大体黒。ネメシスに査問を行う聖職は数居るが、その中でも取り分け厳しい事は言うまでもない。
 そんな彼女の吐き出した『白』の一言に衛兵が少し間の抜けた返答をしてしまったのは仕方のない事だったのかも知れない。
 彼が聖女に引き合わせたのは皮肉にも全身を黒衣で覆った占い師の女だった。月光を思わせる美貌の彼女は何処までも妖しく、美しい。見た目で判断するのは愚かだが、確かに魔性と呼べばそうも見えるのだから、その返答は実に意外だったのだ。
 ローレットと探偵サントノーレの仕掛けは早かった。
 ローレットとの共同作業で月光事件の一つの解決に当たった彼は、途上で一つの情報を得るに到ったのだ。
 事件のそこかしこに姿を見せる『黒衣の占い師』。確証こそないとは言え、これが何らか事件に関与していると考えた彼は、天義上層部へ覚えのいいローレットを『てこ』にフォン・ルーベルグ近辺の『容疑者』を調査するという大胆な手に打って出たのだ。
 これが奏功し、現在この瞬間がある。
 黒衣の女――ベアトリーチェ・ラ・レーテは訝しい顔をした衛兵にニコリと微笑む。
 少し赤面しわざとらしい咳払いをした彼に言葉を続けたのはアネモネであった。
「――もし、この近郊にその妖しき悪があったとして。
 もし、この彼女が諸悪の根源であったとして。
 そうならば、それは貴方の手に負えるものではないのではありませんか?
 不本意ですが『拘束』の名を頂くこの私を前に――ええ、とても不本意ですが。
 こうも余裕の素振りでいられる道理はないのではなくて?」
「な、成る程……」
 衛兵はアネモネの言葉に合点した。
 確かにそれはそうだ。『普通に考えて悪党は連行されないし、アネモネを前に余裕ではいられない』。
『普通に考えるならば、この状況を避けるし、そもそも黙って連行を受けるような事をしないだろう』。
『普通に考えるならば』。
「……しかし、陛下をはじめとした上層の御指示は絶対です。
 貴方はこれからも忠勤に励み、怪しき者を見逃しませんよう」
「はっ!」
アネモネの命を受けた衛兵は敬礼して聖堂を辞する。

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