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樹上の村

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街角の更新ログ

何となく残しておくと面白いかも知れないと思ったので記録しておくことにする。

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2019/5/9(2/2)

 ルストと頷いたベアトリーチェの言う通り『常夜の呪い』でネメシスを覆った魔種は討ち果たされた。
 酷い個人主義者で構成される魔種は『親』であっても完全な統制は難しく、ましてやその親がカロン(きょくどのめんどうくさがり)であれば言うまでもない。従ってこの時期に彼女が場を引っ掻き回したのは元々は二人の計算の内にあらず、さりとてどちらかと言えば強力な魔種であった彼女の活動が役に立ったという評価は妥当な所だった。
「直線的な手段ではあれが精々。
 お陰様で十分な準備は出来ましたとも。次はルストのお望みの通り、この私。
 この私の『クレール・ドゥ・リュヌ』をご覧あれ、といった所です」
 芝居がかったベアトリーチェを薄笑いの半眼で眺めるルスト。自身の司る『傲慢』の通りにそれは何処か彼女をすら軽侮する色を帯びていたが――面倒臭い『兄』のそんな有様にベアトリーチェは構わない。
「ルストは、人間をどう思いますか」
「魔種と変わらんな」
「勿論。魔種とは『最も人間らしい存在』ですとも。では、この『聖都』の事は?」
「まるで呪いだな。全く以て理解に苦しむと言わざるを得ない。
 先程は魔種と変わらんと言ったが――ここの連中と比べるなら魔種の方が『人間らしい』」
 さもありなん、と満足そうにベアトリーチェは頷いた。
「呪いのように染みついた強い抑圧、感情を押し殺すのが美徳とされるこの『聖都』。
 だからこそ、中途半端では何事も起きないのですよ。『常夜』が力を尽くしてもそれは一時。
 コップの中を幾ら騒がせても、そこに立つ水面は一時の騒乱(なぐさめ)にしかなりませんから」
 ベアトリーチェの口角が邪悪な程に持ち上がる。
「『器自体を叩き割るだけの衝撃こそ不可欠です』。
 故に月光人形は昏く輝く。ヒトの琴線を揺らし、鉄の抑圧さえ振り切るのは」

 ――常に最も罪深く、最も美しい愛という感情に他ならないのですから――

「ええ、ええ――イノリ様も、きっとそれを望まれる」
 薄い唇を血のように赤い舌が舐め上げた。
 ベアトリーチェはやがて始まる狂騒の舞台を夢想するように仄暗き愛を想うばかり。

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