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樹上の村
2019/5/7(2/2)
どうやら、この国に蔓延る闇の気配は彼女の周囲にも取り巻いているらしい。
こんな場合、大抵は黒だ。彼女も『噂』に触れている――
そう踏んだサントノーレの直感は実に正しい。
「……明日も早いんだ。今日は――」
「ああ、カワイ子ちゃんを遅くまで連れまわしちゃ、俺が怒られるんでね」
幾ばくか罰が悪そうなイルにサントノーレは手をひらひらと振った。お代は良いから帰りな、と少女の背をぽんと叩く。少女には余りに似合わぬ重たい刃ががしゃんと音を立て、彼女はゆっくりと歩き出した。
(ああ、間違いない。有り難くは無いが――)
事件が探偵を呼ぶのか、それとも探偵が事件を呼ぶのか――こんな時ばかり、彼の勘は冴え渡る。
その背中からも妙な気配がしたのだ。色濃く、間違いなく、確信めいて。
死者の帰還。
黄泉還り。
この聖都には不似合いな禁忌。
禁断の果実というのはどうも美味いもので手放したくないのは当たり前の話だ。
サントノーレだって――彼は自嘲染みた笑みを浮かべてそっとグラスの中身を飲みほした。
「……まったく、どうしたもんかね」
調査を進めるまでもなく、死者蘇生の話は公然の事件として噂が伝播し続けている。
広まって、広まって、広まって、烟の様な存在であったはずが。
もはや、酸素の様に当たり前となっていく。
だからそれは唯の噂では無い。最早それは単なる事実で、その事実は――
「黄泉還り……これからも、嫌な予感がするぜ……」
――きっと、これで終わりではない。
繰り返して。探偵の勘には自信があるが、これはそれ以前の問題だろう。
どうやら、この国に蔓延る闇の気配は彼女の周囲にも取り巻いているらしい。
こんな場合、大抵は黒だ。彼女も『噂』に触れている――
そう踏んだサントノーレの直感は実に正しい。
「……明日も早いんだ。今日は――」
「ああ、カワイ子ちゃんを遅くまで連れまわしちゃ、俺が怒られるんでね」
幾ばくか罰が悪そうなイルにサントノーレは手をひらひらと振った。お代は良いから帰りな、と少女の背をぽんと叩く。少女には余りに似合わぬ重たい刃ががしゃんと音を立て、彼女はゆっくりと歩き出した。
(ああ、間違いない。有り難くは無いが――)
事件が探偵を呼ぶのか、それとも探偵が事件を呼ぶのか――こんな時ばかり、彼の勘は冴え渡る。
その背中からも妙な気配がしたのだ。色濃く、間違いなく、確信めいて。
死者の帰還。
黄泉還り。
この聖都には不似合いな禁忌。
禁断の果実というのはどうも美味いもので手放したくないのは当たり前の話だ。
サントノーレだって――彼は自嘲染みた笑みを浮かべてそっとグラスの中身を飲みほした。
「……まったく、どうしたもんかね」
調査を進めるまでもなく、死者蘇生の話は公然の事件として噂が伝播し続けている。
広まって、広まって、広まって、烟の様な存在であったはずが。
もはや、酸素の様に当たり前となっていく。
だからそれは唯の噂では無い。最早それは単なる事実で、その事実は――
「黄泉還り……これからも、嫌な予感がするぜ……」
――きっと、これで終わりではない。
繰り返して。探偵の勘には自信があるが、これはそれ以前の問題だろう。
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何となく残しておくと面白いかも知れないと思ったので記録しておくことにする。