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樹上の村
2019/5/7(1/2)
探偵の勘
聖教国ネメシス――その本拠は聖都フォン・ルーベルグ。
魔種を不倶戴天の敵と看做し、信心深き民が集う『正義』の都である。
そんな純白の都に似合わない男は寂れた酒場で噂話に耳を傾ける。
――行方不明になって居た、あの……
この清廉なる聖都に下賤な噂話が広がるのは珍しい。彼の故郷の事もある。
珍しい事だが、ここ暫くこの国はそんな異常事態で持ちきりだ。
どうにも疑う余地も無く、どうやら、この国は妙な奴に目を付けられたらしい。
妙なやつ――というのはサントノーレ・パンデピスの勝手な言い回しだが、彼がそう例えた事に表情を曇らせる者もいた。
「……こんなところに呼び出して」
「いや、何。リンツァトルテとは元気にやってるか?」
サントノーレの前にちょこりと腰掛けたのはイル・フロッタ。天義の騎士団を志す騎士見習いである。
彼女はその言葉にバツが悪そうに表情を曇らせ「まあ、一応」と小さく告げる。
イル自身、少なからず衝撃を受ける出来事があったばかりだし――件のリンツァトルテの様子も普段と違うように思えた。
彼を何時も、じっと見てきた彼女だから分かるその機微は、嘘と作り笑いの上手い騎士を見透かす乙女の『審美眼』である。
「……きっと、ええ」
幾ばくか歯切れの悪いイルの言葉に、グラスを弄ぶサントノーレはそうかい、とだけ返した。情報収集に交えた雑談がてらにイルを呼び出したが、彼女はぎこちない笑みを浮かべるだけだ。
探偵の勘
聖教国ネメシス――その本拠は聖都フォン・ルーベルグ。
魔種を不倶戴天の敵と看做し、信心深き民が集う『正義』の都である。
そんな純白の都に似合わない男は寂れた酒場で噂話に耳を傾ける。
――行方不明になって居た、あの……
この清廉なる聖都に下賤な噂話が広がるのは珍しい。彼の故郷の事もある。
珍しい事だが、ここ暫くこの国はそんな異常事態で持ちきりだ。
どうにも疑う余地も無く、どうやら、この国は妙な奴に目を付けられたらしい。
妙なやつ――というのはサントノーレ・パンデピスの勝手な言い回しだが、彼がそう例えた事に表情を曇らせる者もいた。
「……こんなところに呼び出して」
「いや、何。リンツァトルテとは元気にやってるか?」
サントノーレの前にちょこりと腰掛けたのはイル・フロッタ。天義の騎士団を志す騎士見習いである。
彼女はその言葉にバツが悪そうに表情を曇らせ「まあ、一応」と小さく告げる。
イル自身、少なからず衝撃を受ける出来事があったばかりだし――件のリンツァトルテの様子も普段と違うように思えた。
彼を何時も、じっと見てきた彼女だから分かるその機微は、嘘と作り笑いの上手い騎士を見透かす乙女の『審美眼』である。
「……きっと、ええ」
幾ばくか歯切れの悪いイルの言葉に、グラスを弄ぶサントノーレはそうかい、とだけ返した。情報収集に交えた雑談がてらにイルを呼び出したが、彼女はぎこちない笑みを浮かべるだけだ。
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何となく残しておくと面白いかも知れないと思ったので記録しておくことにする。