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樹上の村
2019/4/7(2/2)
(……それはいいとして)
――胸の内を焼き焦がす吐き気を振り払うように黒神父は柳眉を顰めた。
異変がこの一件だけならばどんなにか良かったが……
フォン・ルーベルグを、ネメシスを覆うこの奇怪な状況は隠蔽も叶わず、広がりを見せる一方である。
先の『常夜』事件も尋常では無かったが、民心を荒らすという意味では今回は尚更となろう。
つまる所、中央はこの状況を看過すまい。
それを分からぬ子爵では無いから邸宅は物々しく警備で覆われている。
故にこそ、自身はこの屋敷に詰めているのだから。
恐らくはあの御令嬢を亡くしたその時から。
笑顔の消えた子爵と、悲しみに包まれたバルイエ家は今、久方振りの充足の時間を迎えているだろう。
皮肉に、奇妙に、歪と破滅を孕んで――
(――だが、破綻の時は近付いている)
黒神父は手にした十字剣を握り直し、無意識の内に浮かんだ苦笑を噛み殺した。
自身は全ての理不尽の敵である。
本来、世界の摂理に抗う不自然を、この『理不尽』を庇護する身の上にはない。
さりとて、さりとて。
――この、胡蝶の夢ばかりは――
嗚呼、悲喜をこもごもに。
数多の思惑、数多の想いを呑みこむフォン・ルーベルグの天蓋は厚く灰色に覆われていた。
光輝にして白亜の都さえ、褪せて見える程に――世界の色はくすんでいる。
※フォン・ルーベルグに奇妙な噂が流れているようです……
(……それはいいとして)
――胸の内を焼き焦がす吐き気を振り払うように黒神父は柳眉を顰めた。
異変がこの一件だけならばどんなにか良かったが……
フォン・ルーベルグを、ネメシスを覆うこの奇怪な状況は隠蔽も叶わず、広がりを見せる一方である。
先の『常夜』事件も尋常では無かったが、民心を荒らすという意味では今回は尚更となろう。
つまる所、中央はこの状況を看過すまい。
それを分からぬ子爵では無いから邸宅は物々しく警備で覆われている。
故にこそ、自身はこの屋敷に詰めているのだから。
恐らくはあの御令嬢を亡くしたその時から。
笑顔の消えた子爵と、悲しみに包まれたバルイエ家は今、久方振りの充足の時間を迎えているだろう。
皮肉に、奇妙に、歪と破滅を孕んで――
(――だが、破綻の時は近付いている)
黒神父は手にした十字剣を握り直し、無意識の内に浮かんだ苦笑を噛み殺した。
自身は全ての理不尽の敵である。
本来、世界の摂理に抗う不自然を、この『理不尽』を庇護する身の上にはない。
さりとて、さりとて。
――この、胡蝶の夢ばかりは――
嗚呼、悲喜をこもごもに。
数多の思惑、数多の想いを呑みこむフォン・ルーベルグの天蓋は厚く灰色に覆われていた。
光輝にして白亜の都さえ、褪せて見える程に――世界の色はくすんでいる。
※フォン・ルーベルグに奇妙な噂が流れているようです……
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何となく残しておくと面白いかも知れないと思ったので記録しておくことにする。