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樹上の村
2019/3/9
忘れられし墓標
幻想王都メフ・メフィートの北。小高い丘で少女は花を携えていた。
背格好は小さいが長い耳――幻想種の彼女にとって、その呼称はふさわしくないかもしれないが。
「遂に、動きだそうとしているわさ」
彼女の他には誰もなく。けれど語りかけるように彼女は言葉を紡いだ。
「あの子達ならきっと大丈夫……だから安心してねい」
思えば長く――実に遠くまできたものだった。
遠くて近いあの場所で避けられなかった永久の別れ、仕方ない事とは言え、必ず割り切れるものでもない。 何時かの夜。夢を語って飲み明かした冒険者達。
ペリカの後ばかりを追いかけていた気弱な後輩。
柄にもなく――夢中にさせられた、あのひと。
今はもう誰も居なく、その数々が。ちくり、ちくりと彼女の胸を苛んでいる。
そこは知る人も少ない小さな墓所。
彼女の眼前にあるのは『果ての迷宮』の踏破にしくじり、命を落とした冒険者達の墓標である。
知る限り皆、素晴らしい腕前だった。
けれど足りなかったのは、一体何だったのだろう。
勇気だろうか。皆勇敢だった筈だ。
情熱は――今も私が、残された私が遠い途を追いかけている。
時間だろうか? きっとどれも正しいのだろうけど――
ペリカは花を添え、目を閉じ、しばし祈った。
あの時、――なら、もっと。どうして――
かつては自責に囚われもした。けれど今は違う。
老成した意地と言えばそれまでだが、私はどうしてもこれをやり遂げる。
それが救いになるだろう。それこそ報いになるだろう。
今も尚、魂を遠く引く――滲んだ在りし日の時間に対する手向けに違いないのだ。
「行ってきますねい」
そう告げるとペリカ・ロジィーアンは踵を返す。
視線は力強く。朗らかに。歩き出すその先に見えるのは、遠く白ずんだ王城。
今日はそこへ、待望のイレギュラーズ達が来てくれる筈だから。
忘れられし墓標
幻想王都メフ・メフィートの北。小高い丘で少女は花を携えていた。
背格好は小さいが長い耳――幻想種の彼女にとって、その呼称はふさわしくないかもしれないが。
「遂に、動きだそうとしているわさ」
彼女の他には誰もなく。けれど語りかけるように彼女は言葉を紡いだ。
「あの子達ならきっと大丈夫……だから安心してねい」
思えば長く――実に遠くまできたものだった。
遠くて近いあの場所で避けられなかった永久の別れ、仕方ない事とは言え、必ず割り切れるものでもない。 何時かの夜。夢を語って飲み明かした冒険者達。
ペリカの後ばかりを追いかけていた気弱な後輩。
柄にもなく――夢中にさせられた、あのひと。
今はもう誰も居なく、その数々が。ちくり、ちくりと彼女の胸を苛んでいる。
そこは知る人も少ない小さな墓所。
彼女の眼前にあるのは『果ての迷宮』の踏破にしくじり、命を落とした冒険者達の墓標である。
知る限り皆、素晴らしい腕前だった。
けれど足りなかったのは、一体何だったのだろう。
勇気だろうか。皆勇敢だった筈だ。
情熱は――今も私が、残された私が遠い途を追いかけている。
時間だろうか? きっとどれも正しいのだろうけど――
ペリカは花を添え、目を閉じ、しばし祈った。
あの時、――なら、もっと。どうして――
かつては自責に囚われもした。けれど今は違う。
老成した意地と言えばそれまでだが、私はどうしてもこれをやり遂げる。
それが救いになるだろう。それこそ報いになるだろう。
今も尚、魂を遠く引く――滲んだ在りし日の時間に対する手向けに違いないのだ。
「行ってきますねい」
そう告げるとペリカ・ロジィーアンは踵を返す。
視線は力強く。朗らかに。歩き出すその先に見えるのは、遠く白ずんだ王城。
今日はそこへ、待望のイレギュラーズ達が来てくれる筈だから。
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何となく残しておくと面白いかも知れないと思ったので記録しておくことにする。