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樹上の村

街角保管室

街角の更新ログ

何となく残しておくと面白いかも知れないと思ったので記録しておくことにする。

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2019/2/1(2/2)

 傭兵にとってこの案件は国内の治安維持に相当する。外貨は獲得できない。要するに『儲からない仕事』ではある。だが元はと言えば『砂蠍』は彼等の獲物であった。他国に逃してしまった経緯もあり、話題への熱量は高いのは言うまでもない。かの砂蠍は彼等にとっても仇敵であり、煮え湯を飲まされた回数はお互い様。損得以上の動機は十分所か、十二分さえ超えている。
「ま。馬は馬方、蛇の道は蛇だな」
「なんだ『白牛』の。今日に限って奥手じゃねえか。腰にでもキてんのか?」
「がっはっは!」
 茶化したハウザーに、マグナッドはもう一度豪快に笑った。
 カラシナの情報によれば砂蠍残党共の中に、魔種が紛れ込んでいるらしい。
 いかに勇猛な傭兵とはいえ、『原罪の呼び声』を持つ魔種は戦いたくない相手であることに違いはないが。
 それだけでは彼等が剣をとらない理由にはならない。第一、生半な戦士など認めぬ傭兵達が、切った張ったの荒事を余人に委ねるなど、到底あろう筈のないことでもある。
 ならば何故――その答えは恐ろしい程に簡単(シンプル)だ。
「見たくて見たくて仕方ねえって顔だぜ」
「違いない!」
 つまり彼等の目当ては『噂のローレット』そのものでもあるという訳だ。
「細けぇこたあ、後で決めりゃいい。おい姉ちゃん!」
「はいはい、いつものね」
 傭兵達の合意は幾つかの思惑を孕む。
 餅は餅屋、乗りかけた船に乗せちまえ、或いは見物半分、面白半分。
 ハウザーに言わせれば「キングが討ち取れねえなら、そんなもん。俺が出る程の事って言えるかよ」。
 もっともその言葉は『実際にキングを討ち取った連中』への負け惜しみも半ば含んでいる。
 全くもって特異運命座標というのは『総ゆる運命を吸引する』。まさに特別なのだろう。
 傭兵が誰ぞに傭兵稼業を『依頼』するのは稀有な機会ではあるのだが――

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