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自由図書館

【1:1RPスレ】ジョン・ドゥが生まれた時

とある日の夜。霊共の声ガ、何やら騒がしイ。
死霊術師としても連中が五月蝿いのは落ち着かないのデ、少し近辺を見廻って来る事にしタ。

……ったク、こちとラ、夜警なんて真面目なオシゴトするような柄じゃないんだがなァ。

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(『大地』は既に眠っている。彼をわざわざ起こす必要もあるまい。『赤羽』は我が物顔で、その歩みを動かし、赤に染まった瞳で周囲を散策している)
(闇に閉ざされた路地裏。眼下に横たわる一つの死体。
 無事"依頼"を終えて、彼は満足げに帰路に就こうとしていた)

……あぁ。
(誰かが近寄ってくる気配を感じて、彼は首を揺らす。
 死体となった者の関係者ならば、適切な始末をしなければならないと、そういう依頼であったがーー)
(霊魂が何かを訴えるよう、赤羽の周囲を飛ぶ)

……そうカ、今し方……。

(『ヒトが死んだ。殺された。』声はあらずとも、それぐらいを読み取るのは容易だ。そしてその事自体には、何の感慨も浮かばないが)

さーテ、鬼が出るか蛇が出るかねェ……。

(一応、羽ペンを握りしめて。路地裏へと入り込む)
(外套の下に潜めた短剣を手にし、路地裏の闖入者の顔を見る)
……赤羽君、だったかな?
(ひとまずは短剣を見せぬまま、努めて、柔らかい声音で。
 敵対せずにいられるなら、それに越したことはない)

貴方もこの人物を殺すように頼まれたのかね? そうだとしたら手間が省けたな。
私が既に殺してしまったよ……。脈拍を確認したいと望むならば、道を空けよう。
アンタハ、確カ……(あの廃ホテルに集まった人外魔境の面々。その中で数少ない『人間側』だったと認識している)ルブラット?

(死体と彼を交互に見て、なんとなくの状況は把握した。というか、今まさに、そこで死んでいるやつの身体と魂のが切れたことを確認した)

……あー、いヤ。俺は暇してただけサ。
随分と仕事熱心だなァ、アンタハ。
(検死などというつもりはない。ただ、どういう死に様をしたか興味が湧いて、その死体を見下ろした)
(死体には短剣による幾つかの刺突痕。口元は血で染まっている。
 一見刺殺に見えるが、見る者が見れば、これは「暗器の毒が回って死んだ」のだと見抜けるかもしれない)

仕事熱心、か。よく言われるよ。
しかし、こんな夜中に路地裏に来るなんて……と、警告する必要も無さそうかな。貴方はずいぶん、死体を見慣れているようだ。
何、朝挨拶した隣人ガ、夜には命も衣も何もかも剥がれてるなんテ、スラムじゃ常識だったモンでネ。
まア、数百年も前の常識なんザ、アンタの興味に入るか分からんガ。
(死体に見える幾つもの刺し傷。しかし、 ならば、然るべき場所で処置を施せば、まだこれの命があったかも分からない。……ということは、この男の死因は。……いや、それとも失血死も時間の問題だったか?それはともかく)
いやァ、大地クンが見なくて良かったヨ。
特に なんか見ちまったラ、発狂一直線だったろうなァ。

(叫び声を挙げさせないためにやったのだろうか、喉元の一突きを指してそう笑う)
……数百年前? それが中世と呼ばれる時代ならば、興味があるよ。どうやら私もそういう時代から来たようでね。

(混沌には人ならざる者が数多く存在する。
 目の前の彼もその類であったか、と不可思議な感覚に包まれた。
 ふと、「大地」という名前に反応を示し)
ああ、そうだ。確か貴方は……そう、貴方の中には二人の人間が存在するのだったかな?
ふむ。自身を正当化させたいつもりは無いが、今回は優しく死なせてあげた部類だと思うよ。
この世に絶え間なく偏在する恐怖と絶望に塗れた死を思えば、ね!
……外観がグロテスクであるという事実は認めよう。
中世、ネ……。
そうさなァ、自分の歳なら数えるのはとっくに辞めたガ……思えバ、俺が生まれたのハ、 だったりかもしれねぇナ。
尤モ、あの頃のあそこにハ……医者も神父も役人も憲兵もろくすっぽ来なかったがナ。
(そういえば、目の前にいるルブラットも、ペストマスクと言い……そのような装いではある)

そうそウ。色々あっテ、流れ流れて2X世紀生まれの大地クンのとこで してるって訳ヨ。まあこの安宿とはいずれオサラバしなきゃだけどナ。

(そして足元の死体の有様については)
ハハ、死化粧としちゃあ上等じゃねぇカ?
いい感じに紅も入ってるしヨ。
……そうダ、アンタ、これをった証か何カ、持ち帰らなくって大丈夫かイ?
あぁ……そうなのか。では、貴方が血に慣れているのも納得だな。(一瞬、彼の心に深い感慨が過ったかのように、口を閉ざす)
ふふ、共に暮らす者を安宿などと呼んでやるな。家族のようなものだろう? 違うのかね?
(皮肉混じりでもない、真っ直ぐとした言い方だった。そのまま事もなげに死体の話題に切り替える)

心配することはない。既に証拠となる物品は回収済みだ。詳しくは機密事項故に口にできないが、安心するといい。
だが、こうやって死体の前で話すのは――また人が来たらややこしくなるな。
私はこれから帰路に就く予定だが、貴方は?
(路地裏の奥をじっと見つめる。
 話し相手を求めているのか、「付いてきたいのならば一緒に行っても構わない」と言いたげだ)
あァ、まあナ。……案外、若い頃の俺ガ、アンタとどっかですれ違ったかもナ?
(冗談のつもりでそう云う。けど、なまじ事実だったとしても悪い気持ちはしない)

ヒヒッ、悪かったヨ。高級なモノじゃないガ、確かにコイツは俺が言うほど悪い相方じゃ無かっタ。
俺が巣立つまでに教えることハ、まだまだ山程あるがナ。

(証拠は既に回収した、と聞くと)
流石抜かりねぇナ、先生。
それじゃあ俺モ……まだ夜は長いんダ、もう少し してこうかねェ。
(つま先をルブラットと同じ方向に向ける、その前に)
もう少しだケ、いいかイ?
何、コイツの尊厳を犯すような真似はしないサ。

(掌からインクを少量抉り取ると、空に何らかの陣を描く。死体に何かの術を使おうとしているようだが)
もしも顔を合わせていたとしたら、貴方にとっては数百年ぶりの再会というわけか。小洒落た響きだな?
(ふ、と笑い。続く言葉にも機嫌を良くしたように、あるいは微笑ましく感じているかのように、うなずく)

それでは、夜風に当たりながら……ふむ?
……まあ、彼の死体は私の所有物ではあるまい。好きにするといい。
(じっと、陣を描く様子を見守る。どうしても心の片隅に警戒心が芽生えてしまうのは、職業病と言うべきか)
(じっとこちらを見る目に、視線を合わせて)
……言っとくガ、侍らせるならもっと美丈夫を選ぶからナ、俺ハ。

(それだけいうと、さらさらっと簡素な魔法陣を描く。描いた陣はぼんやり赤く光ると、そのまま煙のように消えていく)
……よシ。これで霊魂変なのは入り込まねぇゾ。
寝かしつけたはずの相手に起き上がられても嫌だロ?

(そう言うと掌をハンカチで拭い、抜け殻には用無しとばかりに、さて行こうかと路地の奥を向く)
こいつがどこの名無しの権兵衛ジョン・ドゥだか知らねぇガ、ゾンビの類になられても面倒だしナ。
十年百年後の事は保証せんガ、その頃にはどうセ、お前さんのことはわからなくなってるだロ。
なるほど、なるほど……。興味深い話だな。
(特に干渉することなく、魔法陣が描き終わるのを見届ける。)
死者の眠りを護ってくれてありがとう、などと――殺害者である私がそれを言うのは、単なる傲慢だな。
私や依頼人を恨んで、面倒な事態を起こさないようにしてくれた事には、礼を言うべきかな?

(考え込むように目線を下に傾けながら、路地裏の奥へと一歩足を進める)
もともと私は、死後に彷徨う霊魂や、ゾンビは信じない性分だった。死霊術師と呼ばれる存在のことも。
混沌に来てからは、どういう風に考えるのが正しいのか……悩まされる機会が多い。
――ああ、別に貴方を悪く言いたい訳ではないよ。それは本当だ。
別ニ?
たまには『それっぽい』事をしねぇと腕が鈍っちまうからナ。
(路地裏をゆく彼についていく)
安心しなヨ、このぐらいで怒る程、俺は小物の魔術師じゃねぇシ。
俺は俺デ、むしロ、皆が膝折り祈リ、跪キ、救いを求める天の主の存在なんザ、微塵も信じちゃいなかったからナ。
……マ、あんな酷い時代だったんダ、神にしろ何にしロ、すがりつく何かが必要だったのは理解するサ。
わざわざ牧師の聖書をぶんどって焼き払う趣味もないしネ。

……おっと話がそれタ。
まア、実際この混沌ハ、そういうのが『居てしまう』世界なんだからしょうがないサ。
アンタにとっちゃ信じ難い俺でさエ、驚かされることが一度や二度じゃなかっタ。
郷に入っては郷に従エ、じゃないガ、そういうルールだと思って諦めるんだなァ(意地悪そうにクククと笑った)
赤羽君は無神論者なのだね?
賛同はできないが、貴方のそこまで言い切る潔さと、同情の心は……嫌いではないよ。

(彼の言葉に何かを思い出したのか、長く、黙った末に)
おや。諦める、か。貴方もなかなか意地悪なことを言ってくれるな!
……だが、それも一つの答えなのだろう。私は諦めが悪い人間だから、幽霊として生が続くなら医師は必要なのだろうかとか、そういった事ばかり考えてしまうよ。
割り切りの良さが長生きの秘訣、といった所かな……。
いんヤ、アンタが言ってくれる程、俺は諦めが良い方じゃないゼ?
そうじゃなかったラ、器を乗り換エ、切り捨ててまデ、ずーっと生き延びようなんて思わねぇヨ。
(どこか自嘲めいた言い方をした)

……さテ、俺がこれまで生きてきた時間の何倍もノ……遠い遠い未来でハ、人間がきちんと生身の人間をやっているかも分からんシ、その時代では医師の職が残ってるか保証せんガ。
少なくとモ、今はまだまだ必要だと思うゼ。

俺様は天才的に術を習得できたからともかク、誰しもにそういう才覚があるわけじゃねぇシ、逆に死んだやつ全員が幽霊になるかって言うとそうでもなイ。

普通のやつは一回で人生終わりダ。誰にもどうしようもない大病ならいざしらズ、その一回ヲ、たかが傷口の処理が甘かったとかくらいで終らせちまうのはあまりにもかわいそうだロ。
助かる道具も方法はあるのニ、適切な処置を知らなかったってだけで死んじまうのはあまりにも哀れダ。

大地の時代でモ、人間はこれといった病や怪我なく生きられて、せいぜい寿命は120年って聞いたしナ。
(きょとんとしたように彼の横顔を見つめる)

意地悪かと思いきや――随分優しい答えを返してくれるのだな。
人殺しが一丁前に命を語るなと、そう一蹴されるとばかり。
……そうしてくれても、良かったのだぞ? 貴方自身も死霊術師である故に、人のことを言えないと思っていたのかもしれないが――。

(一旦言葉が途絶える。「諦めが良い方ではない」という言葉を思い返し、)
いいや、貴方は人間が生へ執着する気持ちがよく理解できるから、医師に対する評価も高い。そんなところかな?
そういった気持ちが分かるのは、医師への素質がある。どうだね赤羽君、人を救う道を歩むのは?
先ほどの魔法陣の気遣いといい、素質があると思うよ(戯れと冗談混じりに)
……言っただロ、迷える子羊の抱き抱えた十字架を奪って投げ捨てる趣味はねぇっテ。
(ふいと顔を背ける。わざと本心を隠そうとしたかのように)

……さテ、その辺はアンタの想像に任せるヨ。……ったク、俺にそういう が似合うかヨ。
そういう尊い道へと口説くなラ、大地の方にしておきナ。尤も今夜はグッスリ眠っているけどナ!
(クツクツと愉快げに肩を揺らした)
大地君、貴方の同居人に言えばいいのだね? 了解したよ。
(やはり冗談めかした言い方――かと思いきや、今度は本当に言いかねない真剣味が含まれている)

あぁ、だが今宵のことを話すとなると、私と貴方が出会った経緯も伝えなければならなくなるな?
であれば、私は大地君に何も言えそうにない。残念だ。
貴方も分かっているとは思うが、今日の殺人に関しては内密でお願いするよ。闇の最中に葬ることを、依頼人は望んでいたからね……。
わかってるわかってル、俺だって進んでオトモダチを減らす真似はしたくないからナ。

マ、もし信じられねぇってなラ、俺が口を滑らせてやいねぇカ、フッツーの利用客の面して『自由図書館』にでもくれば良イ。
その合間合間にでも大地を口説けバ?
秘密は守れル、同志を増やせル。一石二鳥だロ?(これまた軽い言い方だ。が、仮に口説いたとして断固阻止する気はないのだろう)
分かってくれるならば、結構だ。私も安心して寝付けるよ。依頼人君も、きっとね。

……うん?
口説く――? 私が? 大地君を?(一瞬不思議そうに首を傾げたか、すぐさま元に戻り)
いいや、そういう比喩表現か。
ふむ、確かに私も知の宮殿たる図書館には興味がある。
それでは、上手い具合に大地君を説得する方法と、読みたい本の分類を見繕っておくとするよ。
(白き仮面の下で、薄く微笑んだ――かもしれなかった)
あァ。『自由図書館への扉は、誰にでも開放しているよ』。
(大地の言葉をわざと真似して、ふと空を見上げた)
ン、今しがたが増えたんデ、少々はしゃいでる奴もまだ居るガ……霊共もかね落ち着いてきたカ。じゃあ俺がやることはないナ。
(もう少し歩けば、じきに大通りへと出られるはずだ。図書館に帰るにもそう遠くない)
(彼の言葉を聞き、自分も何か見えないかと空中に視線を彷徨わせる)
――やはり、私には見えないようだ。全くもってその方面の才が無い。
だが、私にはそれでいいのかもしれないな。

(少しだけ自分を恨む顔を想起して、首を振る。
 そして何事もなかったかのように大通りの道を見やった)
そろそろお別れ、かな。
また会おう。……今度は日の当たる時間に。日の当たる場所で。
まあ見えたら見えたで色々面倒だシ。いいんじゃなイ?
(気に病むことはないとばかりに、カラッと言ってのけて)

……あァ。大地もきっと歓迎してくれるヨ。
じゃあナ、先生。殺すのは良いけど死ぬなヨ。
(全く持って軽い調子でひらり手を振って、背を向けた。足はそのまま、帰路の方へ)
さぁ? 保証できないな。死は唐突なものだから……。
いや、冗談だ。また会おうと言った手前、健康体で居られるよう努力するよ。
(後ろ姿に呟き気味に語りかけ、自分も背を向ける。)
それでは。

(最後には簡単な挨拶を一つだけ。そして自分も帰路についていった)
──こうして、静かに朝が来る。
ジョン・ドゥが最期に見たものを知るものは、誰も居ない。

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