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【旅日記】白子の娘の秘宝

このスレッドは、冒険の記録をまとめたものである。
それ以上でも以下でもない。事実と脚色と、ほんの少しの旅情のある記録達――

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【アト・サインの日誌】

   ―――5月初旬
   レガド・イルシオン王都メフ・メフィート

本日明け方、僕たち二人は出発することとなった。
現在、僕はローレット行きの乗合馬車内でこの日誌を書いている。

準備期間はあっという間に過ぎた。
メフ・メフィート内で購入したほうが安い保存食や旅支度を揃えることに奔走した。
現地でしか手に入らないものは現地で手に入れたほうがいいが、バザールがあるとは言え、ネフェルスは幾重の農民の耕作地に囲まれ、大量の職人を抱えるメフ・メフィートよりも物価は高い。
荷物を持ち運ぶ手間を考えるのならば荷物を軽くすることに苦心しなければならなかったが、僕たちイレギュラーズには空中庭園の転送ポータルがある。
ローレットからネフェルストには一瞬で飛ぶことが出来るだろう。
これがイレギュラーズにとって最もありがたいことであった。

司書の調査により、安全が確保できてからは話は早かった。
ローレットでの事前交渉により、明日には目的地の白兎の湖まで出発できる。

明け方の出発は乗合馬車の混雑を避けてのことだった。
始発の乗合馬車、しかもローレット行きは人がまばらだった。
快適に荷物をおいて休むことが出来る。

見上げれば空は薄っすらと明るくなっていた。
とはいえ字を書くにはまだ暗すぎる。
そういうわけで自分は乗合馬車の灯りの下に陣取ってこの日誌を書いていた。

灯りの届かない場所に司書は座っている。
様子は暗くてはっきりとしない。
休んでいるのか、それとも早めの朝食をかじっているのか。

ふと、司書の話を思い出す。
白兎の与えられた唯一の娯楽が音楽だったのかもしれない、と。

音楽は今でこそ安価な趣味になった。
少しばかりの金を払って国一番のコンサートホールに行けば腕利きの音楽家たちの公演を楽しむことが出来る。
勿論、席によって払うゴールドは大きく差はあるが、一番悪い席ならば子供が小遣いをためて買うことが出来る程度だ。

しかし、当時はどうだろうか。
音楽を楽しむにしても国から遠く離れた砂漠の社。
そこに運ばれる音楽人形。
最近は練達の蓄音機とよばれる音を出す機械も出回っているが、当時は魔法で動く単調な演奏を行う人形で精一杯だろう。

しかし、それだけが彼女に許された唯一の娯楽。
唯一、許されたものだとしたら。

王の心境を考えるが、想像が及ばない。
何故彼は、音楽だけを許可したのだろうか。

馬車は揺れる、蹄と車輪の音は我々を只々運ぶ。

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