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文化保存ギルド

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忘れられし墓標
 幻想王都メフ・メフィートの北。小高い丘で少女は花を携えていた。
 背格好は小さいが長い耳――幻想種の彼女にとって、その呼称はふさわしくないかもしれないが。
「遂に、動きだそうとしているわさ」
 彼女の他には誰もなく。けれど語りかけるように彼女は言葉を紡いだ。
「あの子達ならきっと大丈夫……だから安心してねい」

 思えば長く――実に遠くまできたものだった。
 遠くて近いあの場所で避けられなかった永久の別れ、仕方ない事とは言え、必ず割り切れるものでもない。  何時かの夜。夢を語って飲み明かした冒険者達。
 ペリカの後ばかりを追いかけていた気弱な後輩。
 柄にもなく――夢中にさせられた、あのひと。
 今はもう誰も居なく、その数々が。ちくり、ちくりと彼女の胸を苛んでいる。
 そこは知る人も少ない小さな墓所。
 彼女の眼前にあるのは『果ての迷宮』の踏破にしくじり、命を落とした冒険者達の墓標である。
 知る限り皆、素晴らしい腕前だった。
 けれど足りなかったのは、一体何だったのだろう。
 勇気だろうか。皆勇敢だった筈だ。
 情熱は――今も私が、残された私が遠い途を追いかけている。
 時間だろうか? きっとどれも正しいのだろうけど――

 ペリカは花を添え、目を閉じ、しばし祈った。
 あの時、――なら、もっと。どうして――
 かつては自責に囚われもした。けれど今は違う。
 老成した意地と言えばそれまでだが、私はどうしてもこれをやり遂げる。
 それが救いになるだろう。それこそ報いになるだろう。
 今も尚、魂を遠く引く――滲んだ在りし日の時間に対する手向けに違いないのだ。
「行ってきますねい」
 そう告げるとペリカ・ロジィーアンは踵を返す。
 視線は力強く。朗らかに。歩き出すその先に見えるのは、遠く白ずんだ王城。
 今日はそこへ、待望のイレギュラーズ達が来てくれる筈だから。

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