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文化保存ギルド
【第三章 第二節】
『参加者:武器商人(p3p001107)』『メリッカ・ヘクセス(p3p006565)』
「君たち、選択肢があったらどうしてもその周辺を開拓したくなるタイプかい」
花園で、マーリンは何度目かのため息を付いた。といっても最後の一日、一番謎を抱えているのは自分かと独りごちる。
その対面には武器商人とメリッカの姿。
「いやいや、お母さんにはお世話になりまして。こんな機会はまたとありませんし是非ご挨拶をと思っておりまして。これ、王都で買ったお茶菓子ですがどうぞお収めください」
「義理堅いねぇ。ありがとう、受け取っておくよ」
メリッカは王都の仕立て屋から仕入れた、外出に使える品の良い、プリーツワンピースにジャケットを身にまとっていた。既製品だが寸法を体にかっちり合わせているのはさすが王都といったところか。
よく似合っているよとマーリンが頷いてから微笑む。
「ああ、それと勘違いを訂正しておこう。私はイリモナインではないよ。ナインは娘の魂から分離した八つの要素。私はこの世界に居るあの子の母親だから全く別物なんだ」
「えっ、あ、そうだったんですか。てっきり名前がそっくりなものでつい」
「はは、あの子の使う偽名でいう。それっぽいのを選んで勘違いを促すというやつさ。覚えがあるだろう」
確かに、とメリッカが顔を赤くして頷くとマーリンは花園から一輪の花をいつの間にか摘んでいた。
「ああ、それと声をかけたのはあの子自身さ。あの子が自分を助けてほしいと願ったから。君たちが来た。だからこれは私からのささやかのお礼だ、挿しておくといい」
「いいのかい。出どころがバレたりはしないかい」
武器商人の言葉にマーリンは今度はいたずらっぽく笑う。安心したまえ、この花園はこの世界の花しかないんだ。どこから手に入れたと聞かれたら、行商からでもと言えば良いさと。
メリッカは、コサージュのようにその花を後ろの髪留めに取り付けた。薄く品の良い赤が、彼女のデート着に艶やかさを添えた。
「ありがとうございますお母さん。それでは失礼いたします、お元気で」
メリッカが頭を下げ、それから席を立つ。
「潮騒の匂いがするいい子だね」
「ああ、我もそう思うよ」
「で、なんで君は残るんだね」
武器商人とマーリンの視線が合う。
「それはもう、母親なら是非とも仕入れたい情報を持っているからさ。それも最後に伝えなきゃいけないような、ね」
「なんと興味深い、是非とも聞かせていただこう」
武器商人の目が細められ、口元が三日月を描く。
「あの子はね、まだ苦手ではあるみたいだけど。ブロッコリー、食べてたよ」
マーリンは目を丸くし、それからひどく優しい顔をして、目元を一度拭った。
「ああ、あの子は。向こうでも成長しようとずっと」
努力を続けていたんだ。
体の時を止められていても。
母親として、それ以上の喜びはなかった。
イーリンに転移の瞬間を見られないように工夫していたメリッカは、王都で意気揚々と歩を進めていた。ガーリーな衣装をジャケットで引き締める。眼帯とコサージュがそれを引き立てている。
せっかくの里帰りだ。
そして自分にとっては最初で最後の、この世界でのイーリンとのデートだ。一緒に王都を巡ろう。
その時はそうだ、マーリンが言っていたイーリンの偽名が『それっぽいのを選んで勘違いを促す』物なのなら。自分が一番イーリンと思い出深い偽名を選んで、誘ってやろう。
この世界で生まれた女としてのイーリンでもなく、馬の骨でもない。練達国で自分と何度もふざけあった名前、少なくとも自分を先輩扱いしていた名前を使えば、イーリンはきっとわざとらしく甘えてくるだろう。
だから『伊鈴』って呼んでやろう。
きっと、楽しいことになるぞ。
『成否:成功』
『参加者:武器商人(p3p001107)』『メリッカ・ヘクセス(p3p006565)』
「君たち、選択肢があったらどうしてもその周辺を開拓したくなるタイプかい」
花園で、マーリンは何度目かのため息を付いた。といっても最後の一日、一番謎を抱えているのは自分かと独りごちる。
その対面には武器商人とメリッカの姿。
「いやいや、お母さんにはお世話になりまして。こんな機会はまたとありませんし是非ご挨拶をと思っておりまして。これ、王都で買ったお茶菓子ですがどうぞお収めください」
「義理堅いねぇ。ありがとう、受け取っておくよ」
メリッカは王都の仕立て屋から仕入れた、外出に使える品の良い、プリーツワンピースにジャケットを身にまとっていた。既製品だが寸法を体にかっちり合わせているのはさすが王都といったところか。
よく似合っているよとマーリンが頷いてから微笑む。
「ああ、それと勘違いを訂正しておこう。私はイリモナインではないよ。ナインは娘の魂から分離した八つの要素。私はこの世界に居るあの子の母親だから全く別物なんだ」
「えっ、あ、そうだったんですか。てっきり名前がそっくりなものでつい」
「はは、あの子の使う偽名でいう。それっぽいのを選んで勘違いを促すというやつさ。覚えがあるだろう」
確かに、とメリッカが顔を赤くして頷くとマーリンは花園から一輪の花をいつの間にか摘んでいた。
「ああ、それと声をかけたのはあの子自身さ。あの子が自分を助けてほしいと願ったから。君たちが来た。だからこれは私からのささやかのお礼だ、挿しておくといい」
「いいのかい。出どころがバレたりはしないかい」
武器商人の言葉にマーリンは今度はいたずらっぽく笑う。安心したまえ、この花園はこの世界の花しかないんだ。どこから手に入れたと聞かれたら、行商からでもと言えば良いさと。
メリッカは、コサージュのようにその花を後ろの髪留めに取り付けた。薄く品の良い赤が、彼女のデート着に艶やかさを添えた。
「ありがとうございますお母さん。それでは失礼いたします、お元気で」
メリッカが頭を下げ、それから席を立つ。
「潮騒の匂いがするいい子だね」
「ああ、我もそう思うよ」
「で、なんで君は残るんだね」
武器商人とマーリンの視線が合う。
「それはもう、母親なら是非とも仕入れたい情報を持っているからさ。それも最後に伝えなきゃいけないような、ね」
「なんと興味深い、是非とも聞かせていただこう」
武器商人の目が細められ、口元が三日月を描く。
「あの子はね、まだ苦手ではあるみたいだけど。ブロッコリー、食べてたよ」
マーリンは目を丸くし、それからひどく優しい顔をして、目元を一度拭った。
「ああ、あの子は。向こうでも成長しようとずっと」
努力を続けていたんだ。
体の時を止められていても。
母親として、それ以上の喜びはなかった。
イーリンに転移の瞬間を見られないように工夫していたメリッカは、王都で意気揚々と歩を進めていた。ガーリーな衣装をジャケットで引き締める。眼帯とコサージュがそれを引き立てている。
せっかくの里帰りだ。
そして自分にとっては最初で最後の、この世界でのイーリンとのデートだ。一緒に王都を巡ろう。
その時はそうだ、マーリンが言っていたイーリンの偽名が『それっぽいのを選んで勘違いを促す』物なのなら。自分が一番イーリンと思い出深い偽名を選んで、誘ってやろう。
この世界で生まれた女としてのイーリンでもなく、馬の骨でもない。練達国で自分と何度もふざけあった名前、少なくとも自分を先輩扱いしていた名前を使えば、イーリンはきっとわざとらしく甘えてくるだろう。
だから『伊鈴』って呼んでやろう。
きっと、楽しいことになるぞ。
『成否:成功』
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【偽シナ】彼女に最後に残るもの
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