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文化保存ギルド
【第二章 第十一節】
『参加者:那須 与一(p3p003103)』
「先輩」
目を覚ました後、与一がものすごく尻尾を振っていた。
「先輩」
宿で目を覚ますと、与一がものすごく耳をピコピコさせながら顔を出した。
「せーんぱい」
「すごく懐かれてますねイーリンちゃん」
「はい、先輩は恩人ですので」
元からスキンシップが多いキキモラがびっくりするくらい、与一はイーリンに甘えていた。
ただ甘えるだけではない、ブレイブ達勇者パーティにも家族のように与一は話しかけていた。仕事の打ち上げには全員で肉を食べることにしていたとか。酒は実は全員あまりやらなかったとか。そんな何気ない日常の話さえ、与一は喜んで聞いた。
出会いは本当に、なし崩しでその場に居た人間を引っ掴んだようなものだった。それで五年も、彼らは互いの背中も命も預け合う仲になった。全裸でサイクロプスの巣に放り込まれたり、海賊の潜む入江に小舟で潜入しようとしたらバリスタの雨を受けた話も、自分のことのように聞き入った。
イーリンの側にいると決めた与一。だのに戦場では一歩も二歩も、常にイーリンが先に行っていた。弓を絞れど、矢を放てど届かない場所に居たイーリンのために今回働けた事がどれほどの喜びを抱えたのか、イーリンでさえ予想がつかない。
だから王都に至り、宝剣の返還が終えられた時。与一は笑顔でデートがしたいと宣言した。イーリンがいいわよと言うより先に、キキモラたちが楽しんできてねと言ってくれた。
「先輩、キキモラさんたち、とっても良い人ですね」
「ほんとにね、良い人過ぎて最初のパーティ組む時からなし崩し的に私が知恵を絞る羽目になったんだから、笑っちゃうわよ」
与一は王都に来た時に買ったワンピース姿だ。黒髪の可憐な少女は周囲の目を引くが、与一はそんな事を微塵も気にしなかった。
「昔から先輩は苦労されてたんですねぇ。でも、とっても楽しそうです」
「無論、楽しくなくっちゃ一緒に居たりしないわよ」
「私は先輩と一緒にいるだけで楽しいですけどね」
「なんでそこを張り合うのよ」
手を伸ばして頭をわしゃわしゃと撫でると、与一がわふわふと声を上げた。完全に大型犬のそれだ。
そして二人はウィンドウショッピングを楽しみ、お茶をして、それからこういう服はどうでしょうと与一が選んだものに買ってその場でイーリンが着替えたりして。混沌世界とは何が違う、あれも食べてみたい、遊んでみたい。
イーリンのおすすめの教会にも来た。神様も悪い人じゃないのよ、だって私をここまで連れてきたんだからと言うと、与一は少し考えてから、はいと頷いた。
夕方になる頃には、今日も皆で宴会をしようということで帰る。
王都の中心、王城近くのメインストリートは無数の明かりが灯り、昼間とは別のにぎわいを見せる。まるで大きな星の川を歩いているようだ。
はぐれないようにと手を繋いだイーリンに、与一が足を止める。
「どうしたの」
「先輩」
与一の瞳がイーリンの瞳をまっすぐ見つめる。
「先輩は、また旅に出るのですよね」
「ええ、もちろん。どこって決めては居ないけど、必ず」
「なら、行くも行かずも、どういう決断をしようとも。私をお側に置いてくださいませんか」
「与一」
すがるような視線は、決意と不安の一切合切をイーリンに預けるようにも思えた。
わずかに逡巡する。
「ついてくるなら、勝手になさい」
突き放すような言葉に、与一の耳がへたる。
「けど」
と、イーリンが眉をハの字にする。
「一緒に過ごすなら、何でも相談して頂戴ね。私にできることはするから」
「わふ」
与一の目がまん丸になる。
その日一番の与一の魂の籠もったシャウトが響いて。ひどく人目を引くことになった。
『成否:成功』
『参加者:那須 与一(p3p003103)』
「先輩」
目を覚ました後、与一がものすごく尻尾を振っていた。
「先輩」
宿で目を覚ますと、与一がものすごく耳をピコピコさせながら顔を出した。
「せーんぱい」
「すごく懐かれてますねイーリンちゃん」
「はい、先輩は恩人ですので」
元からスキンシップが多いキキモラがびっくりするくらい、与一はイーリンに甘えていた。
ただ甘えるだけではない、ブレイブ達勇者パーティにも家族のように与一は話しかけていた。仕事の打ち上げには全員で肉を食べることにしていたとか。酒は実は全員あまりやらなかったとか。そんな何気ない日常の話さえ、与一は喜んで聞いた。
出会いは本当に、なし崩しでその場に居た人間を引っ掴んだようなものだった。それで五年も、彼らは互いの背中も命も預け合う仲になった。全裸でサイクロプスの巣に放り込まれたり、海賊の潜む入江に小舟で潜入しようとしたらバリスタの雨を受けた話も、自分のことのように聞き入った。
イーリンの側にいると決めた与一。だのに戦場では一歩も二歩も、常にイーリンが先に行っていた。弓を絞れど、矢を放てど届かない場所に居たイーリンのために今回働けた事がどれほどの喜びを抱えたのか、イーリンでさえ予想がつかない。
だから王都に至り、宝剣の返還が終えられた時。与一は笑顔でデートがしたいと宣言した。イーリンがいいわよと言うより先に、キキモラたちが楽しんできてねと言ってくれた。
「先輩、キキモラさんたち、とっても良い人ですね」
「ほんとにね、良い人過ぎて最初のパーティ組む時からなし崩し的に私が知恵を絞る羽目になったんだから、笑っちゃうわよ」
与一は王都に来た時に買ったワンピース姿だ。黒髪の可憐な少女は周囲の目を引くが、与一はそんな事を微塵も気にしなかった。
「昔から先輩は苦労されてたんですねぇ。でも、とっても楽しそうです」
「無論、楽しくなくっちゃ一緒に居たりしないわよ」
「私は先輩と一緒にいるだけで楽しいですけどね」
「なんでそこを張り合うのよ」
手を伸ばして頭をわしゃわしゃと撫でると、与一がわふわふと声を上げた。完全に大型犬のそれだ。
そして二人はウィンドウショッピングを楽しみ、お茶をして、それからこういう服はどうでしょうと与一が選んだものに買ってその場でイーリンが着替えたりして。混沌世界とは何が違う、あれも食べてみたい、遊んでみたい。
イーリンのおすすめの教会にも来た。神様も悪い人じゃないのよ、だって私をここまで連れてきたんだからと言うと、与一は少し考えてから、はいと頷いた。
夕方になる頃には、今日も皆で宴会をしようということで帰る。
王都の中心、王城近くのメインストリートは無数の明かりが灯り、昼間とは別のにぎわいを見せる。まるで大きな星の川を歩いているようだ。
はぐれないようにと手を繋いだイーリンに、与一が足を止める。
「どうしたの」
「先輩」
与一の瞳がイーリンの瞳をまっすぐ見つめる。
「先輩は、また旅に出るのですよね」
「ええ、もちろん。どこって決めては居ないけど、必ず」
「なら、行くも行かずも、どういう決断をしようとも。私をお側に置いてくださいませんか」
「与一」
すがるような視線は、決意と不安の一切合切をイーリンに預けるようにも思えた。
わずかに逡巡する。
「ついてくるなら、勝手になさい」
突き放すような言葉に、与一の耳がへたる。
「けど」
と、イーリンが眉をハの字にする。
「一緒に過ごすなら、何でも相談して頂戴ね。私にできることはするから」
「わふ」
与一の目がまん丸になる。
その日一番の与一の魂の籠もったシャウトが響いて。ひどく人目を引くことになった。
『成否:成功』
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【偽シナ】彼女に最後に残るもの
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