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文化保存ギルド
【第二章 第十節】
『参加者:エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)』
光の国は秩序を重んじる。それは獣や野草においてさえ傾向がある。害獣はこれ、あの薬草はこのあたりと地図が丁寧に存在する。それを一般市民も手に入るのだから、発展の度合いというのも見て取れる。
酒は果実酒が多く、主な輸出産業としているところも多い。さすがに地酒をタルで飲みきったらタダにしてくれと言って実行したら、涙目になられたが。
途中で寄った村々は、街道沿いということもあって整備が行き届いていた。どの村も極端に苦しいというところは見られず、カンソン同様清貧あるいは足るを知る村だった。
ただ、この世界はイーリンの言っていたように神が現役の世界だ。神々の言葉を人々は受け、考え、その上で選択する。神はその選択を尊重するというのがなかなか珍しいがしかし、それでもエクスマリアの盟友に、過酷にすぎる運命を背負わせたのは事実だった。
もう一つ引っかかったのが、エクスマリアが抱える似たような事情だった。
その答えを知るには、やはり聞くしかあるまい。
王都に到着した翌日に、エクスマリアは茶店のテラスで喧騒を眺めながらイーリンを待った。この世界の服に久々に袖を通して出てきた彼女は、なかなか可憐だった。
席について注文し、二つ三つ言葉をかわしてからエクスマリアは切り出した。
「盟友、惚れた男も古い友も居るのに、混沌に帰るのか」
故郷である異世界に許嫁を持つ彼女だからこそ、強く考えてしまう問いだった。
六年間、崩れ行く心身を支える呪いにもなるほどに強い思いを持っていながら、なぜと疑問に思うのも当然だった。
「ええ、混沌に帰る。ネームレスも、その方が良いって。言ってないけど多分言う」
「言葉で確認を取らないのだな」
「あいつは私の夢を応援するタイプだからね。だったら、私はとびっきり大きな夢を追いかけたい」
「そう、か。それは、どんな夢だ」
こんな穏やかな表情をする盟友はいつぶりだろうとエクスマリアは考え、話の邪魔になると考えるのをやめた。
そうしてすぐに、イーリンは空を指さした。
「世界で一番遠いところに行くような、そんな夢」
きらめく太陽は、その象徴だとイーリンは言った。
「盟友」
本当の望みなんて、まだ決めてさえいないのだなと納得した。雁字搦めになっていた翼は鎖が解かれ、今羽ばたかんとしている。その姿の、なんときらびやかなことか。
「なぁに、盟友」
イーリンが微笑む。十四の時から巻き込まれた運命に、およそ十三年囚われてきた少女は。その時の姿のまま、エクスマリアと同じ幼子のようだ。
「マリアも、盟友のように考える時が来るだろうか」
そう、不意に弱気とも取れる言葉が漏れた。
「わかんないわね。けど、盟友がそうなりたいなと思ったら、きっとどんな選択肢でも一番良いものになると思う。故郷に帰るんでしょう、貴方も」
それが今生の別れになったとしても、笑って見送ろう。そういう気概と信頼が、今のイーリンにはひときわ強く感じられた。
それなら、とエクスマリアは紡ぐ。
その時に後悔しないように。今できることをしようと精一杯、太陽に負けないだけの言葉を。
「もし、まだ叶えたいワガママがあるなら。全部吐き出してみるといい」
「そりゃ、貴方。いっぱいあるわよ。例えば」
その後、イーリンはエクスマリアにデコピンを四、五発お見舞いされた。
『成否:成功』
『参加者:エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)』
光の国は秩序を重んじる。それは獣や野草においてさえ傾向がある。害獣はこれ、あの薬草はこのあたりと地図が丁寧に存在する。それを一般市民も手に入るのだから、発展の度合いというのも見て取れる。
酒は果実酒が多く、主な輸出産業としているところも多い。さすがに地酒をタルで飲みきったらタダにしてくれと言って実行したら、涙目になられたが。
途中で寄った村々は、街道沿いということもあって整備が行き届いていた。どの村も極端に苦しいというところは見られず、カンソン同様清貧あるいは足るを知る村だった。
ただ、この世界はイーリンの言っていたように神が現役の世界だ。神々の言葉を人々は受け、考え、その上で選択する。神はその選択を尊重するというのがなかなか珍しいがしかし、それでもエクスマリアの盟友に、過酷にすぎる運命を背負わせたのは事実だった。
もう一つ引っかかったのが、エクスマリアが抱える似たような事情だった。
その答えを知るには、やはり聞くしかあるまい。
王都に到着した翌日に、エクスマリアは茶店のテラスで喧騒を眺めながらイーリンを待った。この世界の服に久々に袖を通して出てきた彼女は、なかなか可憐だった。
席について注文し、二つ三つ言葉をかわしてからエクスマリアは切り出した。
「盟友、惚れた男も古い友も居るのに、混沌に帰るのか」
故郷である異世界に許嫁を持つ彼女だからこそ、強く考えてしまう問いだった。
六年間、崩れ行く心身を支える呪いにもなるほどに強い思いを持っていながら、なぜと疑問に思うのも当然だった。
「ええ、混沌に帰る。ネームレスも、その方が良いって。言ってないけど多分言う」
「言葉で確認を取らないのだな」
「あいつは私の夢を応援するタイプだからね。だったら、私はとびっきり大きな夢を追いかけたい」
「そう、か。それは、どんな夢だ」
こんな穏やかな表情をする盟友はいつぶりだろうとエクスマリアは考え、話の邪魔になると考えるのをやめた。
そうしてすぐに、イーリンは空を指さした。
「世界で一番遠いところに行くような、そんな夢」
きらめく太陽は、その象徴だとイーリンは言った。
「盟友」
本当の望みなんて、まだ決めてさえいないのだなと納得した。雁字搦めになっていた翼は鎖が解かれ、今羽ばたかんとしている。その姿の、なんときらびやかなことか。
「なぁに、盟友」
イーリンが微笑む。十四の時から巻き込まれた運命に、およそ十三年囚われてきた少女は。その時の姿のまま、エクスマリアと同じ幼子のようだ。
「マリアも、盟友のように考える時が来るだろうか」
そう、不意に弱気とも取れる言葉が漏れた。
「わかんないわね。けど、盟友がそうなりたいなと思ったら、きっとどんな選択肢でも一番良いものになると思う。故郷に帰るんでしょう、貴方も」
それが今生の別れになったとしても、笑って見送ろう。そういう気概と信頼が、今のイーリンにはひときわ強く感じられた。
それなら、とエクスマリアは紡ぐ。
その時に後悔しないように。今できることをしようと精一杯、太陽に負けないだけの言葉を。
「もし、まだ叶えたいワガママがあるなら。全部吐き出してみるといい」
「そりゃ、貴方。いっぱいあるわよ。例えば」
その後、イーリンはエクスマリアにデコピンを四、五発お見舞いされた。
『成否:成功』
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【偽シナ】彼女に最後に残るもの
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