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文化保存ギルド
【第二章 第九節】
『参加者:夢野 幸潮(p3p010573)』
「うう"う、飲みすぎた」
花園にふさわしくない唸り声を上げて、幸潮は後悔と、それからレイリーのライブが良かったという感想をマーリンに吐いた。
「惚気をごちそうさま。頼むから花園で吐かないでおくれよ」
「この世界の酒が強いのが悪い。ねいなにも奢らねばならんのにこれは先が思いやられる」
「私は外界の娘の観察で忙しいんだから、宿で寝たらどうだい」
「そうはいかん」
ドン、と身を起こした幸潮がワインとパンを。イーリンが起こした奇跡で出てきた代物をマーリンに突き出す。
「親孝行ができるかわからんだろ、これでも食ってろ」
「君がそういうコト考えるクチだとは思わなかったなぁ。しょうがない、その気遣いに免じて花園に居ることを許可しよう」
おやおやと受け取ったパンとワインを、マーリンは眺めた。
花園には昼も夜もなく、今も穏やかな風が吹いている。
「それで、後は何かないのか」
「今更隠し立てする事もないさ。熱心なファンが私を口説きに来るかもしれないからねぇ、だから門戸を開いておいただけだよ」
「そういう自信過剰なところを見ると、親子だと安心するぞ」
けらけらと笑うマーリンに、幸潮が目をやる。
「じゃあ娘になにか伝えたいこともないということか」
「そりゃそうさ。あの子が一人前になったのは14の時。それまでにあらゆる術を教えた。何よりも愛情はもう丼で毎日頭の上から爪先まで浴びせかけたからねぇ」
「それを本人の前で言ったらどうなる」
「ママンやめてって顔を真赤にするだろう。かわいいぞ」
幸潮も想像する、描写するまでもなかった。
「もう一度聞いておきたい事があるんだが」
「なんだい、気にせず聞き給えよ」
「楽しかった、ありがとうと言うにはまだ早いか」
にま、と笑ったマーリンはああ、と応える。
「最後は皆で打ち上げをする、旅ってそういうものだろう」
「それで、また明日、か」
「ああ、それ以上の終わりはないさ」
「コテコテの青春物語が好きなのだなぁ、貴様は」
「当たり前さ、冒険譚を娘に聞かせて育てた女だよ。ジュブナイルも大好きだ。何より親としては」
マーリンが頬杖をついて笑う。
「行きて帰りし物語。娘がそれを携えて来た時、親としてどれほどの喜びを得たかわかるかい」
「オーケー、お腹いっぱいだ」
辟易したように幸潮が言い、口元に笑みを浮かべると立ち上がる。
「そろそろ酔いも冷めた、上から見られるのは気に入らんが。幸せな母親の邪魔をさすのも気が引ける」
「ああ、行き給えよ。君も君の物語を紡ぐが良い。行間で満足するのもわかるがね」
「貴様」
我を読んだな、と言おうとして。言ったら現実になる。
ハッピーエンドを間近で見るとしよう。幸潮が花園を去る時、コルクの抜ける音が聞こえた。
『成否:成功』
『参加者:夢野 幸潮(p3p010573)』
「うう"う、飲みすぎた」
花園にふさわしくない唸り声を上げて、幸潮は後悔と、それからレイリーのライブが良かったという感想をマーリンに吐いた。
「惚気をごちそうさま。頼むから花園で吐かないでおくれよ」
「この世界の酒が強いのが悪い。ねいなにも奢らねばならんのにこれは先が思いやられる」
「私は外界の娘の観察で忙しいんだから、宿で寝たらどうだい」
「そうはいかん」
ドン、と身を起こした幸潮がワインとパンを。イーリンが起こした奇跡で出てきた代物をマーリンに突き出す。
「親孝行ができるかわからんだろ、これでも食ってろ」
「君がそういうコト考えるクチだとは思わなかったなぁ。しょうがない、その気遣いに免じて花園に居ることを許可しよう」
おやおやと受け取ったパンとワインを、マーリンは眺めた。
花園には昼も夜もなく、今も穏やかな風が吹いている。
「それで、後は何かないのか」
「今更隠し立てする事もないさ。熱心なファンが私を口説きに来るかもしれないからねぇ、だから門戸を開いておいただけだよ」
「そういう自信過剰なところを見ると、親子だと安心するぞ」
けらけらと笑うマーリンに、幸潮が目をやる。
「じゃあ娘になにか伝えたいこともないということか」
「そりゃそうさ。あの子が一人前になったのは14の時。それまでにあらゆる術を教えた。何よりも愛情はもう丼で毎日頭の上から爪先まで浴びせかけたからねぇ」
「それを本人の前で言ったらどうなる」
「ママンやめてって顔を真赤にするだろう。かわいいぞ」
幸潮も想像する、描写するまでもなかった。
「もう一度聞いておきたい事があるんだが」
「なんだい、気にせず聞き給えよ」
「楽しかった、ありがとうと言うにはまだ早いか」
にま、と笑ったマーリンはああ、と応える。
「最後は皆で打ち上げをする、旅ってそういうものだろう」
「それで、また明日、か」
「ああ、それ以上の終わりはないさ」
「コテコテの青春物語が好きなのだなぁ、貴様は」
「当たり前さ、冒険譚を娘に聞かせて育てた女だよ。ジュブナイルも大好きだ。何より親としては」
マーリンが頬杖をついて笑う。
「行きて帰りし物語。娘がそれを携えて来た時、親としてどれほどの喜びを得たかわかるかい」
「オーケー、お腹いっぱいだ」
辟易したように幸潮が言い、口元に笑みを浮かべると立ち上がる。
「そろそろ酔いも冷めた、上から見られるのは気に入らんが。幸せな母親の邪魔をさすのも気が引ける」
「ああ、行き給えよ。君も君の物語を紡ぐが良い。行間で満足するのもわかるがね」
「貴様」
我を読んだな、と言おうとして。言ったら現実になる。
ハッピーエンドを間近で見るとしよう。幸潮が花園を去る時、コルクの抜ける音が聞こえた。
『成否:成功』
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【偽シナ】彼女に最後に残るもの
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