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文化保存ギルド
ここに来るまでも結構そ全能の力のせいでえらい目にあったので、異様な説得力があった。カンソンの一件に始まり、街路樹で小休止している時にイーリンがもたれかかって昼寝をした木が菩提樹めいて巨大になったり。川の水質を確かめるために水を一口含んだらその川の小魚がまるまる太ったシャケのようなサイズまで巨大化して溢れかえったり。その水に至っては念の為に煮沸して飲んだのにその美味しさでノルンの「人生の中でフルコースを作るなら付け合せにこの水を絶対に選ぶ」と思うような味になっていたり。
「ダメです、こんなことを続けていたら、イーリンさんがだめになってしまいます」
「ノルン、心配してるのは良いんだけど私のことどう思ってるの」
苦笑いを浮かべるイーリンに、はっとしたノルンがあわてて取り繕う。
「ああ、ええっと。その。せっかくヒトとして一緒に生きられるのに。それを下手にひっくり返せる状況を持つと人間はどうしても低きに流れると言いますか」
「そうだねぇ、万物に永遠はないとはいえ。気に入らない人間が死ぬまで百年寝てから活動再開なんてするようになっちゃったら。ちょっと気が長すぎるし、手段としても美しくない」
武器商人がしれっと質屋に宝石を入れて換金した通貨を、財布に入れてノルンにも幾らか渡しつつ助け舟を出す。
慣れてるのねとイーリンが言えば、世界を渡るなんてちょくちょくあることだからねぇ、と猫背のようにかがめていた背筋を伸ばした。
それでアレが魔術師の集うアカデミーの一つで、向こうのスラムの奥にあるのが盗賊のギルドとイーリンが王都を紹介を続ける。
「私がそういう神の使いを超えて全能の器になって良いと思ったのは、皆のためだからね。私一人のためにそれを使うというのは、どうしても気が引けるわ」
「おや、謙虚だコト」
武器商人が笑うと、ノルンはほっとしたように頷く。
「ボクも気になるんですけど、混沌に戻ったらイーリンさんは何をなさるんでしょう。あと、その話ってもうキキモラさんたちにはしたんですか」
ノルンの言葉にイーリンは少し考える。ノルンはこの数日、勇者パーティもイレギュラーズもみんな楽しそうに過ごしていた。それこそ、イーリンが私は元の世界に残るから皆さようならと言われても納得しかねないくらい。
「そうね、皆には昨日話したわ。こっちの世界と行き来するためのゲートを、残った神の力で私専用でいいから用意して、それから基本は混沌で過ごそうと思う」
「イーリンさんだけ、ですか」
「ええ、神の力でもできるのはそれが限度。ただ、それに私達――ノルンの言う勇者パーティは今回でどっちにせよ解散だったのよ。十四の時に組んだから、五年足らずの冒険だったかしら。ブレイブは勇者として本格的に神殿に召し抱えられるし。キキモラも十分に冒険をしたから森へ帰る。ネームレスは、まぁ。実はあれで外法を教えた師匠みたいな連中がいるから、そこで保護してもらう予定らしいしね」
「ああ、皆さんにそれぞれ帰る場所があるんですね」
「そういうコト」
イーリンの笑顔が、その別離はいずれ訪れるものであり、そして良いものであると語っていた。全員があるべき道の上にあるのだ。イーリンの笑顔も、この旅で多く見るようになった。
「それなら」
荷物を持っていたノルンが大きく息を吸う。
「それなら、残りの旅も楽しまないとですね。レイリーさん、自分の歌が村でウケたので今借りてる宿屋の楽団用のステージで派手にやるって言ってました。ああ、それにあらためてどこか部屋を貸し切って宴会もしたいです。馬車と宿屋で話すだけじゃちょっと足りないですし。それにここ、テルマエもあるって言ってましたよね」
ならもっと、もっと楽しみましょうと笑顔を浮かべる。
旅はいつか終りを迎えるけど、それならもっと一緒に素敵な思い出にしましょうと。
「うんうん、我もそう思うよ。じゃあアレストの旦那のプランに一つ足そうじゃないか。この世界でありふれたお守りなんか買うのはどうだい」
宝石よりよっぽど思い出になるさ、ただ素材はちょっと頑丈なやつにしようと武器商人が言って、ノルンも同意する。
(ああ、ジョーンズの方。さっきのは冗談ってことにしといておくれ)
一度だけ、ゆっくりとまばたきをする武器商人。
「そういえばここの通りにガレットの美味しい店があったのよ。一緒に食べて帰りましょ」
ハッピーエンドを迎えた彼女に、これ以上何かを求めるのは、ちょっと酷だと感じて。
『成否:成功』
「ダメです、こんなことを続けていたら、イーリンさんがだめになってしまいます」
「ノルン、心配してるのは良いんだけど私のことどう思ってるの」
苦笑いを浮かべるイーリンに、はっとしたノルンがあわてて取り繕う。
「ああ、ええっと。その。せっかくヒトとして一緒に生きられるのに。それを下手にひっくり返せる状況を持つと人間はどうしても低きに流れると言いますか」
「そうだねぇ、万物に永遠はないとはいえ。気に入らない人間が死ぬまで百年寝てから活動再開なんてするようになっちゃったら。ちょっと気が長すぎるし、手段としても美しくない」
武器商人がしれっと質屋に宝石を入れて換金した通貨を、財布に入れてノルンにも幾らか渡しつつ助け舟を出す。
慣れてるのねとイーリンが言えば、世界を渡るなんてちょくちょくあることだからねぇ、と猫背のようにかがめていた背筋を伸ばした。
それでアレが魔術師の集うアカデミーの一つで、向こうのスラムの奥にあるのが盗賊のギルドとイーリンが王都を紹介を続ける。
「私がそういう神の使いを超えて全能の器になって良いと思ったのは、皆のためだからね。私一人のためにそれを使うというのは、どうしても気が引けるわ」
「おや、謙虚だコト」
武器商人が笑うと、ノルンはほっとしたように頷く。
「ボクも気になるんですけど、混沌に戻ったらイーリンさんは何をなさるんでしょう。あと、その話ってもうキキモラさんたちにはしたんですか」
ノルンの言葉にイーリンは少し考える。ノルンはこの数日、勇者パーティもイレギュラーズもみんな楽しそうに過ごしていた。それこそ、イーリンが私は元の世界に残るから皆さようならと言われても納得しかねないくらい。
「そうね、皆には昨日話したわ。こっちの世界と行き来するためのゲートを、残った神の力で私専用でいいから用意して、それから基本は混沌で過ごそうと思う」
「イーリンさんだけ、ですか」
「ええ、神の力でもできるのはそれが限度。ただ、それに私達――ノルンの言う勇者パーティは今回でどっちにせよ解散だったのよ。十四の時に組んだから、五年足らずの冒険だったかしら。ブレイブは勇者として本格的に神殿に召し抱えられるし。キキモラも十分に冒険をしたから森へ帰る。ネームレスは、まぁ。実はあれで外法を教えた師匠みたいな連中がいるから、そこで保護してもらう予定らしいしね」
「ああ、皆さんにそれぞれ帰る場所があるんですね」
「そういうコト」
イーリンの笑顔が、その別離はいずれ訪れるものであり、そして良いものであると語っていた。全員があるべき道の上にあるのだ。イーリンの笑顔も、この旅で多く見るようになった。
「それなら」
荷物を持っていたノルンが大きく息を吸う。
「それなら、残りの旅も楽しまないとですね。レイリーさん、自分の歌が村でウケたので今借りてる宿屋の楽団用のステージで派手にやるって言ってました。ああ、それにあらためてどこか部屋を貸し切って宴会もしたいです。馬車と宿屋で話すだけじゃちょっと足りないですし。それにここ、テルマエもあるって言ってましたよね」
ならもっと、もっと楽しみましょうと笑顔を浮かべる。
旅はいつか終りを迎えるけど、それならもっと一緒に素敵な思い出にしましょうと。
「うんうん、我もそう思うよ。じゃあアレストの旦那のプランに一つ足そうじゃないか。この世界でありふれたお守りなんか買うのはどうだい」
宝石よりよっぽど思い出になるさ、ただ素材はちょっと頑丈なやつにしようと武器商人が言って、ノルンも同意する。
(ああ、ジョーンズの方。さっきのは冗談ってことにしといておくれ)
一度だけ、ゆっくりとまばたきをする武器商人。
「そういえばここの通りにガレットの美味しい店があったのよ。一緒に食べて帰りましょ」
ハッピーエンドを迎えた彼女に、これ以上何かを求めるのは、ちょっと酷だと感じて。
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【偽シナ】彼女に最後に残るもの
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