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文化保存ギルド
【第二章 第五節】
『参加者:刻見 雲雀(p3p010272)』
カンソンでの馬鹿騒ぎは深夜まで続き。そこら中に酔っ払いが転がり、ワインが湧いたという井戸の周りで子供も大人もまだ踊っている。
たださすがと言うべきか、0時前になると深酒をしていない大人たちが子供を家に帰し、酔っぱらいをそれぞれ家に放り込む。
駐在の兵士は顔を赤くしながらも篝火の消し忘れがないかを確認し、路上で寝てる人間がいないかを確認する。
宿屋の一階では知った歌声が聞こえる。戦場で注目を集めた彼女の声が、外の酔っ払いを集めて騒ぎをおさめているのだろう。
雲雀が聞いた話では、ブレイブは勇猛果敢で才能にあふれている。そのせいで一回心停止するまで戦い続けて。猛烈な蘇生代金をイーリン達が払ったと聞いたし、それに心停止した体が傷まないようにありったけの塩と薬草を詰めたタルに突っ込まれて運ばれたというのも面白かった。それもう死体じゃないかと笑った。
そういう時にイーリンは必ず最後まで諦めなかったし、塩と薬草をありったけ買ってこいとタルにブレイブを詰めながらネームレスに怒鳴っていたというのも面白かった。
お返しにイーリンが混沌世界では40人近い人間を率いて戦っていたこと、そっちの世界では勇者と呼ばれた上に幾度も絶望的な戦況をひっくり返し続けたという話をした時、彼は素直にすごいと言うと同時に、俺もそうなる、イーリンが五年でできたんだからと言ったときも笑った。
それと、ネームレスにはなんとなくシンパシーを感じるところがあった。自分と同じようにやり取りを見守りながら。さっきは酒場にイーリンが居る時はリュートをポロンと弾いていた。
彼も、ずっと一人だったのだろう。ずっと一人で、たった一人の大事な人を助けるために、これまでの全部を捨てて吸血鬼になった。
だから、彼も満足なのだろう。何年も同じ人と組んで旅をして、こうして幸せに帰路の旅に出る。それで胸が一杯になってしまうから、何をしたらいいかわからなくなってしまう。
そんな彼を見て雲雀は貰ってきたスープを一杯だけ渡し、彼はすぐに一口だけ手を付けた。二人のやり取りはそれで十分だった。
二階の男部屋に一足先に戻って、雲雀はそうひとりごちていた。
「なーに、たそがれてるのよ」
ノックもなしに入ってきたイーリンが、窓際の雲雀の前に座ったテーブルの上に昼間湧き出したというワインとパンとピザを置いた。
「ありがとうイーリンさん。下はいいの」
「ええ、今レイリー達が飲み比べやってる。タルで酒もってこいでタダで出てくるんだもの。そりゃあやるわよ」
「違いないね」
ワインはホット、量はカップ半分。気遣いが見て取れる。
「イーリンさんはさ、仲間ってどう思う」
「それはまた哲学的な質問ね」
「そうかな」
一口、形だけカップにつける。
「ええ、私にとって全員生き残ってもらうために全力を尽くすべき相手。しかし、それでも死んでしまうこともある。私は神様でもないし、絶対でもないから」
「それはそうだけど」
今は違うでしょう、とは言えなかった。
「だから、仲間は私にとって選択を尊重して互いにそれを支える相手、かしら」
小さな手で同じ物が入ったカップを包みながら、イーリンは言った。
それは、とてもいいことだと雲雀は頷いた。彼女はいつだって誰かに意見を求めていたし、彼もそこで意見を出し続けた。納得した上で、幾度も戦場に出た。
「ねぇ雲雀。貴方にとってはどう」
「どうって、仲間をどう思うかってこと」
「そう、貴方が師匠や弟弟子と仲良くしてるのは知ってるけど。ああいうのとは違うでしょ、仲間って。私は、仲間に分類される」
「それは」
雲雀は、口にしたワインのせいか。あるいはこの旅路のせいか。もしかしたら、眼の前にいるこの世界の女神様のせいか。笑ってしまう。
「仲間だよ、お互いそう思ってないと」
「思ってないと、なに」
恥ずかしいな、と雲雀がはにかむ。
「イーリンさんを救う選択肢を、迷わず選んだりしないよ」
逆でもきっとそうだよと、今の雲雀には確信できた。
そうして、夜は更けていく。
『成否:成功』
『参加者:刻見 雲雀(p3p010272)』
カンソンでの馬鹿騒ぎは深夜まで続き。そこら中に酔っ払いが転がり、ワインが湧いたという井戸の周りで子供も大人もまだ踊っている。
たださすがと言うべきか、0時前になると深酒をしていない大人たちが子供を家に帰し、酔っぱらいをそれぞれ家に放り込む。
駐在の兵士は顔を赤くしながらも篝火の消し忘れがないかを確認し、路上で寝てる人間がいないかを確認する。
宿屋の一階では知った歌声が聞こえる。戦場で注目を集めた彼女の声が、外の酔っ払いを集めて騒ぎをおさめているのだろう。
雲雀が聞いた話では、ブレイブは勇猛果敢で才能にあふれている。そのせいで一回心停止するまで戦い続けて。猛烈な蘇生代金をイーリン達が払ったと聞いたし、それに心停止した体が傷まないようにありったけの塩と薬草を詰めたタルに突っ込まれて運ばれたというのも面白かった。それもう死体じゃないかと笑った。
そういう時にイーリンは必ず最後まで諦めなかったし、塩と薬草をありったけ買ってこいとタルにブレイブを詰めながらネームレスに怒鳴っていたというのも面白かった。
お返しにイーリンが混沌世界では40人近い人間を率いて戦っていたこと、そっちの世界では勇者と呼ばれた上に幾度も絶望的な戦況をひっくり返し続けたという話をした時、彼は素直にすごいと言うと同時に、俺もそうなる、イーリンが五年でできたんだからと言ったときも笑った。
それと、ネームレスにはなんとなくシンパシーを感じるところがあった。自分と同じようにやり取りを見守りながら。さっきは酒場にイーリンが居る時はリュートをポロンと弾いていた。
彼も、ずっと一人だったのだろう。ずっと一人で、たった一人の大事な人を助けるために、これまでの全部を捨てて吸血鬼になった。
だから、彼も満足なのだろう。何年も同じ人と組んで旅をして、こうして幸せに帰路の旅に出る。それで胸が一杯になってしまうから、何をしたらいいかわからなくなってしまう。
そんな彼を見て雲雀は貰ってきたスープを一杯だけ渡し、彼はすぐに一口だけ手を付けた。二人のやり取りはそれで十分だった。
二階の男部屋に一足先に戻って、雲雀はそうひとりごちていた。
「なーに、たそがれてるのよ」
ノックもなしに入ってきたイーリンが、窓際の雲雀の前に座ったテーブルの上に昼間湧き出したというワインとパンとピザを置いた。
「ありがとうイーリンさん。下はいいの」
「ええ、今レイリー達が飲み比べやってる。タルで酒もってこいでタダで出てくるんだもの。そりゃあやるわよ」
「違いないね」
ワインはホット、量はカップ半分。気遣いが見て取れる。
「イーリンさんはさ、仲間ってどう思う」
「それはまた哲学的な質問ね」
「そうかな」
一口、形だけカップにつける。
「ええ、私にとって全員生き残ってもらうために全力を尽くすべき相手。しかし、それでも死んでしまうこともある。私は神様でもないし、絶対でもないから」
「それはそうだけど」
今は違うでしょう、とは言えなかった。
「だから、仲間は私にとって選択を尊重して互いにそれを支える相手、かしら」
小さな手で同じ物が入ったカップを包みながら、イーリンは言った。
それは、とてもいいことだと雲雀は頷いた。彼女はいつだって誰かに意見を求めていたし、彼もそこで意見を出し続けた。納得した上で、幾度も戦場に出た。
「ねぇ雲雀。貴方にとってはどう」
「どうって、仲間をどう思うかってこと」
「そう、貴方が師匠や弟弟子と仲良くしてるのは知ってるけど。ああいうのとは違うでしょ、仲間って。私は、仲間に分類される」
「それは」
雲雀は、口にしたワインのせいか。あるいはこの旅路のせいか。もしかしたら、眼の前にいるこの世界の女神様のせいか。笑ってしまう。
「仲間だよ、お互いそう思ってないと」
「思ってないと、なに」
恥ずかしいな、と雲雀がはにかむ。
「イーリンさんを救う選択肢を、迷わず選んだりしないよ」
逆でもきっとそうだよと、今の雲雀には確信できた。
そうして、夜は更けていく。
『成否:成功』
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【偽シナ】彼女に最後に残るもの
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