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【偽シナ】彼女に最後に残るもの【リプレイ】

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【偽シナ】彼女に最後に残るもの
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 志の志は、事前に粉砕されていた。
「いやあ、ここでこんな派手な祭りをしてるなんて知らなかったわ」
 どっこらしょと荷物を下ろすイーリンに、貴方のせいですよと突っ込まない。これで下手に魔法解除の思考がよぎったりしたら、それはそれで大混乱が起きるに違いない。
「ところで、愛人の方はどのような冒険をされてきたのですか」
 そこで思い悩みながらイーリンに向けていた視線を勘違いしたのか。キキモラが嬉々とした目で言った。
 志のメガネにショックでヒビが入った。予備に交換しながら笑顔をはりつける。
「すいません、今までの話のどこに私が愛人ってところがありましたかね」
「えっ、イーリンちゃんの影として戦うから近くに居る必要があったって話。それってつまり愛人で、自分はそういう身の上なのでって他のお誘いを断るって。きゃーロマンスだね」
 心の底からのツッコミに対して、論理の飛躍が更に飛んでくる。いや乙女心一杯ではしゃいでるキキモラを頭ごなしに否定するのもよくない。
「確かに、イーリンさんに好意が無いとは言いませんが。性欲や肉欲があるわけでもなく、多忙なあの人を支えるとなれば、あの人の名代を使いやすい立場でもある必要があったわけでして。それ以上の理由は」
「じゃあ、純愛なんだ」
「すいません、この世界って同性愛とか妾文化とか全然オッケーなクチなんですか」
「同性愛は珍しいけど否定はされないし、子供は多いほうが良いよね」
 エルフのキキモラはあっけらかんと言う。そうですよね、エルフは基本的に子供が少ないから増やせる存在は貴重ですよね。長い寿命の中でそういう性別を超えた愛情があっても不思議ではないですよね。ああこれ完全に聞く相手も話す相手も間違えたわ。
「混沌世界と比べたらこっちは文化レベルが低いからね。産むことはお家騒動でも無い限りは否定されないし、十五で結婚して二十で行き遅れ扱いされるわよ」
 話の途中でにやにやと楽しげなイーリンが口を挟む。嫌な予感しかしない。
「え、じゃあ志ちゃんの国では違うの」
 ここだ、ここで軌道修正をするんだ。
「そうですね。私の故国では恋愛こそ年齢制限はありませんでしたが。一夫一妻、それから二十歳で成人という形でしたので。それに妾は公にするものではありませんでしたし」
「奥ゆかしいんだぁ。じゃあそれ、故郷の作法を歪めてイーリンちゃんの愛人になったんだ。すごい覚悟だね、ラブだね」
 志にめまいがする。ああそうか、これほど他人の決断や考えをポジティブに捉える。なるほどイーリンがパーティリーダーにしておくのも理解できる。この自然と相手の毒気を抜いて、打ち解ける底抜けの善人。彼女を勇者パーティの顔役にさせたのも納得だ。
 それはそれとしてどうにかしてくださいとイーリンの方を見る。
「その上この子、私の命の危機に平然と自分の命をかけた博打をしてくれてね。それで助けられたこともあるのよ。だから命の恩人だし、ちゃんとお礼を言っておいてねキキモラ」
「そうなんだーーー」
 愛だ、と感激したように握手を求めてくるキキモラ。
 引きつった笑みで握手に応じる志。
 どこぞの黒髪剣士と命のやり取りをする喜びが、人生の目標がどんどん遠ざかるような気がする。
「はい、ですのでこの帰りの旅も、全力で皆さんが楽しめるように努力させていただきますね」
「うん、よろしくね志ちゃん」
 このままだとキキモラ相手に更に余計なことを吹き込まれかねない。話題転換、話題転換。
「あ、でもイーリンちゃんと二人っきりになりたい時は言ってね。私、精霊さんへの魔法で人払いもできるから」
 二個目のメガネにヒビが入った。
 がんばれ志。この旅程はまだ続くぞ。

『成否:成功』

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