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文化保存ギルド
●一路光の国へ
「さて、落ち着いたかいジョーンズの方」
回収した宝剣をリーダーであるキキモラに渡した武器商人が問うた。
泣き腫らしたイーリンは顔を今度は別の意味で赤くしながら頷いた。
「私の悲願を皆が叶えてくれたってことでいいのね。なんていうか、その」
「データ見る限り、お前が死ぬほど頑固だったのが招いた事態だと思うぞ」
「誰よあんた」
ねいなの言葉に思わず悪態をつくイーリン。ねいなは肩をすくめて、そのうちあんたに食い扶持を貰うかもしれない女さと言った。
「まぁ、いいけど。それでこの状況は。多分」
イーリンが困惑しながら自分の手を見る。確かに人間の、生身の手だ。
「司書さんは、多分最後に選んだんじゃないかな。自分では運命を変えられないけど、代わりに誰かに託すことを。それに願望器としての司書さんが反応した、とか」
フォルトゥナリアは言った。推測が多分に含まれるが、自分たちがイーリンの縁者であることを考えればあり得なくもない。
「あとイーリン、気づいてるかわからないんだけどさ。すごい量の魔力が集まってるんだけど、わかる」
メリッカが眼帯を少しずらし、魔眼でイーリンを一瞥した。願望器としての魔力が彼女の周囲でまるでただの空気のように偏在している。それこそ、魔力に敏感なエルフのキキモラがイーリンに抱きついていても何も感じなかった程度に。
「え、マジなの」
「うん、イーリンさんの魔力が俺たちを今までサポートしてくれてたみたいなんだけど。それが一点に集まってる感じ、かな」
「なにそれ聞いてないんだけど」
雲雀の言葉にイーリンが真顔になる。思わずぎゅっと握った手からころんと小さな石がこぼれ落ちた。
「おそらく、なのだが。世界の摂理に沿った結果、盟友は今期せずして、神のようなものになっているのではないか」
エクスマリアがメリッカ同様イーリンを見つめて言う。見つからぬよう髪でそっと拾った石は魔力の塊でできており。手でぎゅっとしただけで空気中の魔力を圧縮してしまったようだ。
「なるほどわからん」
幸潮が説明をするならさっさとしろと暗に言う。
「では僭越ながら」
志がメガネをクイっと持ち上げた。
「イーリンさんは、キキモラさん御一行と危機に陥った際、神の手で召し抱えられ、上位世界に連れて行かれました。そこで紆余曲折あり、様々な力を手に入れて上位世界。私どもが居た世界で役目を果たし、この世界に戻ってきた。これをこの世界の神話に当てはめるなら『外の世界より』『無数の合一を果たした存在』がやってきたということになります。これ即ち、神話における最初に打ち立てられた存在に等しいですね。即ち『剣』です」
「つまり先輩は今最強ってことですね」
志の言葉に手をポンと与一が打つ。
「はい、たとえこの仮説が間違っていたとしても。この世界は分断によってより多くの、より下位の存在が増え、発展していった世界です。即ち合一を行った存在はより上位に近づくという事になります。で、ですね。私達は先程まで一騎当千の英雄としての加護を受けていたので。それが収束したイーリンさんは、どんなに存在の格を下げようとしても一柱の神以上の存在になるわけです」
ぽかんとしているのは、イーリンも勇者パーティも一緒だった。
「つまりイーリンは今何でもできるってことよ」
レイリーが満面の笑みを浮かべて言った。
イーリンは空を見上げる。今なら星の果てまで飛び立てるような気がする。
ちょっと肩を揺すれば、闇の国の首都に地震の一つでも起こしてやれそうな気がする。
少し思索を巡らせれば、この世の真理や摂理を朗々と唱える事もできる気がする。
「さて、どうする。女神イーリン・ジョーンズ」
武器商人のからかうような言葉を、どこか嬉しそうに聞いて。
イーリンは言った。
「じゃあ、皆で光の国まで旅をしましょうか」
「さて、落ち着いたかいジョーンズの方」
回収した宝剣をリーダーであるキキモラに渡した武器商人が問うた。
泣き腫らしたイーリンは顔を今度は別の意味で赤くしながら頷いた。
「私の悲願を皆が叶えてくれたってことでいいのね。なんていうか、その」
「データ見る限り、お前が死ぬほど頑固だったのが招いた事態だと思うぞ」
「誰よあんた」
ねいなの言葉に思わず悪態をつくイーリン。ねいなは肩をすくめて、そのうちあんたに食い扶持を貰うかもしれない女さと言った。
「まぁ、いいけど。それでこの状況は。多分」
イーリンが困惑しながら自分の手を見る。確かに人間の、生身の手だ。
「司書さんは、多分最後に選んだんじゃないかな。自分では運命を変えられないけど、代わりに誰かに託すことを。それに願望器としての司書さんが反応した、とか」
フォルトゥナリアは言った。推測が多分に含まれるが、自分たちがイーリンの縁者であることを考えればあり得なくもない。
「あとイーリン、気づいてるかわからないんだけどさ。すごい量の魔力が集まってるんだけど、わかる」
メリッカが眼帯を少しずらし、魔眼でイーリンを一瞥した。願望器としての魔力が彼女の周囲でまるでただの空気のように偏在している。それこそ、魔力に敏感なエルフのキキモラがイーリンに抱きついていても何も感じなかった程度に。
「え、マジなの」
「うん、イーリンさんの魔力が俺たちを今までサポートしてくれてたみたいなんだけど。それが一点に集まってる感じ、かな」
「なにそれ聞いてないんだけど」
雲雀の言葉にイーリンが真顔になる。思わずぎゅっと握った手からころんと小さな石がこぼれ落ちた。
「おそらく、なのだが。世界の摂理に沿った結果、盟友は今期せずして、神のようなものになっているのではないか」
エクスマリアがメリッカ同様イーリンを見つめて言う。見つからぬよう髪でそっと拾った石は魔力の塊でできており。手でぎゅっとしただけで空気中の魔力を圧縮してしまったようだ。
「なるほどわからん」
幸潮が説明をするならさっさとしろと暗に言う。
「では僭越ながら」
志がメガネをクイっと持ち上げた。
「イーリンさんは、キキモラさん御一行と危機に陥った際、神の手で召し抱えられ、上位世界に連れて行かれました。そこで紆余曲折あり、様々な力を手に入れて上位世界。私どもが居た世界で役目を果たし、この世界に戻ってきた。これをこの世界の神話に当てはめるなら『外の世界より』『無数の合一を果たした存在』がやってきたということになります。これ即ち、神話における最初に打ち立てられた存在に等しいですね。即ち『剣』です」
「つまり先輩は今最強ってことですね」
志の言葉に手をポンと与一が打つ。
「はい、たとえこの仮説が間違っていたとしても。この世界は分断によってより多くの、より下位の存在が増え、発展していった世界です。即ち合一を行った存在はより上位に近づくという事になります。で、ですね。私達は先程まで一騎当千の英雄としての加護を受けていたので。それが収束したイーリンさんは、どんなに存在の格を下げようとしても一柱の神以上の存在になるわけです」
ぽかんとしているのは、イーリンも勇者パーティも一緒だった。
「つまりイーリンは今何でもできるってことよ」
レイリーが満面の笑みを浮かべて言った。
イーリンは空を見上げる。今なら星の果てまで飛び立てるような気がする。
ちょっと肩を揺すれば、闇の国の首都に地震の一つでも起こしてやれそうな気がする。
少し思索を巡らせれば、この世の真理や摂理を朗々と唱える事もできる気がする。
「さて、どうする。女神イーリン・ジョーンズ」
武器商人のからかうような言葉を、どこか嬉しそうに聞いて。
イーリンは言った。
「じゃあ、皆で光の国まで旅をしましょうか」
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【偽シナ】彼女に最後に残るもの
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