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【偽シナ】彼女に最後に残るもの【リプレイ】

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【偽シナ】彼女に最後に残るもの
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【第一章 第五節】
『参加者:刻見 雲雀(p3p010272)』

「全く、イーリンさんったら」
 呪をかけられるという点において、雲雀の感覚はこの場で誰よりも優れていた。
 強大な呪には、相応の犠牲が必要。神により文字通り八つ裂きにされた上で、世界に召し上げられた存在とあれば抱えた呪の質も相応の物だ。
 それこそ『上位世界で完成した願望器にも関わらず、この世界に戻った時点で機能する程度』には強力な呪だ。
 ただ、この世界の神は非常に繊細な選択をした。イーリンという女は仲間を見捨てたりはしない、情の深い女だ。たとえ魂の一部を八つ裂きにされたとしても根本は変わらない。だからこそ『上位世界での仕事を終えれば、必ず帰って来る』事が前提の呪を残した。
 なぜ願望器として完成した存在をわざわざ自分たちの世界に戻すのか。それは呪詛返しの防止。イーリンを経由してイレギュラーな介入が発生することを防ぐと考えれば説明がつく。
 自分たちが何らかの方法でここに介入を果たしていることが、ある種の証明にもなっている。
「死なせないよ、貴女も、貴女の仲間も」
 それは何者かの介入があったのか。それともイーリン自身が本心で望んでいたことを自ら叶えようとしているのか。
 夜の帳の中。彼が独りごちる。それを咎める者は誰もいない。
 確かに先んじて動いた仲間の言った通り、一騎当千に値する能力強化の一環として彼の俯瞰の範囲も暗視も視力も、面白いように強化されていた。それでもなお、丁寧に普段通りの範囲であるものとして行動し、そしてアサシンを刈り取り再起不能にした。
 事前情報にも、自分の足で調べた情報にも誤りはない。道理も通っている。
 となると自分たちは本当に、彼女を救うために呼ばれているのだろう。
 そこを違えてはいけない。
「さて、向こうの休憩が終わったら、レイリーさんたちを誘導しないとね」
 夜の風が吹く。闇の国と言っても元は一つの国が分かたれて生まれた国。夜闇を愛する風土があるといっても、朝になればパンの香りがどこからかして、昼は子供が走り回るのだろう。
 彼女が愛した世界の空気は、しっかりと人の営みの匂いがした。
「ねぇ、美咲さん」
 不意に、ここに居ない女の名前を呼ぶ。
「本当に、しょうがない人だよね。イーリンさんは」
 ここに居たら、どれほど文句を言っていただろう。ただ、それでも声にしたかったのだ。
 本当なら誰よりもここに居たかった女の名を。この世界に居るはずだった証として。
 そのために自分は、最悪の芽を一つでも摘むとしよう。
 夜明けまでは、まだ時間がある。


『成否:成功』

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