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文化保存ギルド
【第一章 第一節】
『参加者:那須 与一(p3p003103)』
拙速という言葉は、今まさに与一のためにあった。
説明を聞き終わるや否や、ポータルを経由して勇者パーティの近くに転移し、夜の闇を切り裂くように黒髪が疾駆する。
そしてすぐに気づく、自分の感覚が鋭敏になっていることに。森の木の葉が落ちる枚数、それが風を切る音。獣のわずかな吐息を温度視覚が逃さない。
今なら足の裏の感覚だけで、この森を走ることさえ可能だろう。
これがあの少女、マーリンと呼んでくれと言っていた者の補正か。
ならばと与一は足を止め、大業弓与一之紫を構えて引き絞る。引分けから会まで、まるで絹糸を引くように柔らかに構えられた。
「先輩のためなら」
与一の口元に笑みが浮かぶ。天の暗雲に向けて放たれた一射は、音を置いていかんばかりの速度で高く高く飛んでいった。馬のいななきにも似た音とともに、暗雲の一部を穿った。
その穴より、わずかに月光が漏れ出す。
その異常事態に、三人。ブレイブ、キキモラ、ネームレスがキャンプの火を消したのを感じ取った。弓をしまう与一。
「とりあえず! いきなりで失礼ですが、あなた方がイーリン先輩のお仲間さん達ですね?」
更に胸の下で腕を組み、戦闘の意志が無いことをアピールして大声を上げる。
「私は与一! 不肖ながらイーリン先輩の後輩です! あなた方の支援に参りました! 色々聞きたいことはありましょうが、後でしっかり答えます故今は何も言わずともに戦わせていただきたい!」
沈黙、少し。
「だったらまずは静かにしてくれ。ここは敵地のど真ん中だぞ」
そう言って出てきたのは、ローブの下で短剣を構えたネームレスだった。
「申し訳ございません! しかし此処にももうすぐ敵が押し寄せるとのことなので、機先を制すことにしました!」
あっけらかんと言う様は、今日か明日に死ぬのではと追い詰められた人間が飲み込むには、あまりにも脂っこい内容だった。
「なぜイーリンが消えた。その装束、どこの国だ」
「これですか。先輩に仕立て屋でお願いしました! 消えた理由はざっくり言うと召喚魔法ですね!」
目を細めるネームレス。
「なぜ私達が従う必要がある」
「宝剣は今別の仲間が回収に回っています! みなさんが死んだら先輩が悲しみますので!」
油断なく構えていたネームレスが、ため息とともにわざと音を立てて鞘にナイフをしまった。
「ブレイブ、キキモラ、どうやら私達の知らないところでとんでもないことが起きているようだ。ここで質問するだけ無駄だと思うぞ」
「い、イーリンちゃんの後輩ってことは、知識の神様のところの」
エルフの少女が顔を出す。怯えよりも困惑の色が強い。
「いや、あんなの居たらさすがに知ってるだろ。それにあれは、動物の耳か。ワーウルフなんて町に居られるはずもないだろ」
出てきた青年は、背中の剣に手をかけたままだ。
「油断なさらないところはさすが先輩のお仲間ですね! 大丈夫です。もし不審な動きをしたら撃ってくださって構いませんので!」
笑顔で腕組みをしていた与一が、ネームレスと同時に、同じ方角を見る。
「嗅ぎつけられましたかね」
「闇の国で月を撃つなんて馬鹿はそう居ないだろうからな」
与一が味方であるという言は、間もなく真となった。
『成否:成功?』
『参加者:那須 与一(p3p003103)』
拙速という言葉は、今まさに与一のためにあった。
説明を聞き終わるや否や、ポータルを経由して勇者パーティの近くに転移し、夜の闇を切り裂くように黒髪が疾駆する。
そしてすぐに気づく、自分の感覚が鋭敏になっていることに。森の木の葉が落ちる枚数、それが風を切る音。獣のわずかな吐息を温度視覚が逃さない。
今なら足の裏の感覚だけで、この森を走ることさえ可能だろう。
これがあの少女、マーリンと呼んでくれと言っていた者の補正か。
ならばと与一は足を止め、大業弓与一之紫を構えて引き絞る。引分けから会まで、まるで絹糸を引くように柔らかに構えられた。
「先輩のためなら」
与一の口元に笑みが浮かぶ。天の暗雲に向けて放たれた一射は、音を置いていかんばかりの速度で高く高く飛んでいった。馬のいななきにも似た音とともに、暗雲の一部を穿った。
その穴より、わずかに月光が漏れ出す。
その異常事態に、三人。ブレイブ、キキモラ、ネームレスがキャンプの火を消したのを感じ取った。弓をしまう与一。
「とりあえず! いきなりで失礼ですが、あなた方がイーリン先輩のお仲間さん達ですね?」
更に胸の下で腕を組み、戦闘の意志が無いことをアピールして大声を上げる。
「私は与一! 不肖ながらイーリン先輩の後輩です! あなた方の支援に参りました! 色々聞きたいことはありましょうが、後でしっかり答えます故今は何も言わずともに戦わせていただきたい!」
沈黙、少し。
「だったらまずは静かにしてくれ。ここは敵地のど真ん中だぞ」
そう言って出てきたのは、ローブの下で短剣を構えたネームレスだった。
「申し訳ございません! しかし此処にももうすぐ敵が押し寄せるとのことなので、機先を制すことにしました!」
あっけらかんと言う様は、今日か明日に死ぬのではと追い詰められた人間が飲み込むには、あまりにも脂っこい内容だった。
「なぜイーリンが消えた。その装束、どこの国だ」
「これですか。先輩に仕立て屋でお願いしました! 消えた理由はざっくり言うと召喚魔法ですね!」
目を細めるネームレス。
「なぜ私達が従う必要がある」
「宝剣は今別の仲間が回収に回っています! みなさんが死んだら先輩が悲しみますので!」
油断なく構えていたネームレスが、ため息とともにわざと音を立てて鞘にナイフをしまった。
「ブレイブ、キキモラ、どうやら私達の知らないところでとんでもないことが起きているようだ。ここで質問するだけ無駄だと思うぞ」
「い、イーリンちゃんの後輩ってことは、知識の神様のところの」
エルフの少女が顔を出す。怯えよりも困惑の色が強い。
「いや、あんなの居たらさすがに知ってるだろ。それにあれは、動物の耳か。ワーウルフなんて町に居られるはずもないだろ」
出てきた青年は、背中の剣に手をかけたままだ。
「油断なさらないところはさすが先輩のお仲間ですね! 大丈夫です。もし不審な動きをしたら撃ってくださって構いませんので!」
笑顔で腕組みをしていた与一が、ネームレスと同時に、同じ方角を見る。
「嗅ぎつけられましたかね」
「闇の国で月を撃つなんて馬鹿はそう居ないだろうからな」
与一が味方であるという言は、間もなく真となった。
『成否:成功?』
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【偽シナ】彼女に最後に残るもの
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