PandoraPartyProject

ギルドスレッド

スレッドの一部のみを抽出して表示しています。

文化保存ギルド

【偽シナ】憧憬は君の瞳に

【偽シナ/異聞録】憧憬は君の瞳に

●第二章
 その娘は、生まれてより孤独であった。
 ワタリの一族は、渡りをつけることを生業とする。
 岩と、山と、強大な生物が潜む覇竜という国という体さえ持てない「領域」では、集落の行き来だけでも命がけであった。
 それゆえに、集落間に物や人の渡りをつける仕事というのは、極めて危険であり、常に誰かが死ぬ可能性を孕んでいた。
 それ故に、ワタリは家族を持たない。
 生まれてから死ぬまで、一族はワタリとして生きる。
 覇竜以外で生きることができないのではない。覇竜以外に目を向けて、生きていられるほど甘くないからだ。

 故に、その娘は生まれてより孤独であった。
 その貪欲さと才覚を兼ね揃えた強者は、覇竜だけに留まる器ではなかったからだ。
 

●ありえたかもしれない、もう一つの歴史(20XX年X月X日、覇竜)
「お"お"うっ❤ 我が愛! 宝石の君! 千里に轟く美貌と名声!」
 平手打ちの音。
 転がる少女。
「愛が重い"っ❤」
「今度人前でそれやったらブン殴るから」
 ギルドローレット、覇竜支部の一つ。椅子に座っていたイーリンを見るや真正面から両手両足で飛びついて抱きつき。大型犬よろしく顔をべろんべろん舐めていた自称「獰猛なる竜の眷属の狐にして狼の牙を持つ者」にして、イーリンにそっくりの顔立ちにほぼ下着のような衣装で求愛する彼女は、ヘイリンと言った。
「はぁはぁ❤ あはぁ❤」
 床にふっとばされて太い竜の尾を床の上でびたんびたんとしばらくのたうち回った彼女はゆっくりと立ち上がり。皆の方を向いた。
「折り行って、君達に頼みがあるワン」
 品よく、椅子に座る。
「キャットは、ワタリである。そして、ワタリである以上覇竜から外には出られないワン。それはワタリの掟であり。キャットはワタリであることに誇りと敬意を持っている。けれど、キャットは外の世界を知りたい」
 穏やかに、けれど言い切る。イーリンはその話を横で聞きながら、ハンカチで顔を拭っている。
「ワタリ自身に渡りをつける手段はある。それは一族の中でも限られたものが知る『試練の墓所』に眠る宝剣を手に入れ、族長に渡すことだワン。その宝剣の譲渡をもってして、ワタリであることをやめ、個として生きることを許されるニャン」
 小さな手をヘイリンを見ながら、少し力を込めて握る。
「キャットは、ヒトとして生きたい。ワタリではなく。たとえどんな形であってもヒトとして生きてみたい。キャットの思うまま、野山を駆け、人とふれあい、学び、育みたいとおもうワン」
 混沌とした装いや行動、エキセントリックな言葉遣いは。あまりに断片的に手に入れた外の世界のため。
 イレギュラーズにあまねく好意を抱くのは、自分の知らない風を渡ってきたため。
「試練の墓所は、その名の通り挑んだ時点で試練を成功してワタリとして死ぬか。突破できなければ死ぬ。故に、試練の墓所の掟はひとつ。一度入ったもの、宝剣を得るまで出ることなかれ……だワン」
 言い淀んだキャットに続けるように、イーリンが今度はイレギュラーズをまっすぐ見つめる。
「渡りをつけるのがワタリの一族の使命とはいえ、つけられるかもわからない渡りを敢行することになる。このルールそのものが、ワタリの一族のプライドを傷つける。そして、過去失敗した者たちは尽く一人で死んでいったというわ。けど、ルールがそれ一つだとすれば『何人で赴いても問題はない』ということよ」
「それさえも、渡りをつけられない場所に連れて行くという、ワタリの生き方への反逆だワン」
 古くからこの言い伝えを聞いていて、その内容が如何に困難なものか、そして自分が突破するには「知識が足りない」事をヘイリンはよくわかっていた。
 諦めていた。
 正確には諦めたフリをしていた。
 けど、運命が渡りをつけようとしていた。
 覇竜に至ったイレギュラーズが
 自分にそっくりなイーリンが
 断片的でも見えてしまった希望。
 それが宝石のように、目をくらませてしまっているのかもしれない。
 深い諦観の中に居たヘイリンは、普段なら自分はキャットと呼べと言う。その仮面を外して、一人の人間として、イレギュラーズに頭を下げた。
「それでも、キャットの、私の願いに渡りをつけてほしい」
 
 
●試練の墓所
 そこは、山の中をくり抜かれた場所である。
 そこは、重い石扉で封をされた場所である。
 そこは、自らの運命を試す場所である。
 
――ドアノブを素手で触れるのか?
――匂いで全て見破られるのか?
――魔眼や透視が万能とでも?
――疑え、疑え、渡りをつけろ。
――宝剣はその先にある。

→詳細検索
キーワード
キャラクターID
=============

●偽GMコメント
 お久しぶりです。
 イーリンジョーンズのプレイヤーです。今回のシナリオにご参加いただきありがとうございます。
 彼女たちのために、また良い物語を紡いで上げて下さい。以下、概要です。

【成功条件】
・ヘイリンが生存した状態で、試練の墓所内の宝剣を回収して帰還する。


【試練の墓所】
 覇竜にある山を一部くり抜いて作られた迷宮です。
 全三階層。
 墓所内に灯りはありませんが、最低限の準備はイーリン・ジョーンズが行います。
 時間制限はありませんが、一度入ると宝剣を手に入れるまでは出ることはできません。戦闘の可能性も大きいでしょう。長時間戦える備えをする必要があります。

●第一階層:天の試練
 入口から広いロビーのような場所を抜けると、真っ直ぐな通路と8つのドアと小部屋がある場所です。
 隙間風がどこからか入っていて、やや埃っぽい場所であります。
 小部屋はそれぞれ幻想、鉄帝、天義、海洋、練達、傭兵、深緑、覇竜の建築を模した内容になっています。
 この小部屋のどれかに下の階層へ行く階段が隠されているとのことですが、パッと見ではわかりません。
 イーリン曰く「ここであまり時間をかけるとよくない。迷宮がどの程度性格が悪いかを知る程度に留めて、王道の手段で見つからなかったらそこで悩めば良い」

●第二階層:地の試練
 階段を降りるとドーム球場のような場所に出ます。グラウンドのスペースは湖になっており、ちょうど中央辺りに小島と墓石が見えます。おそらくですが、下の階層に続く何かがあると思われます。
 ドーム部分は空を模しており、そこには混沌の大陸地図のような物が描かれています。よく見れば、それが第一階層とある程度内容が連動していて、答え合わせのような物になっていることがわかります。
 外縁の壁にはいくつかの走り書きがあり、意味不明な内容がほとんどです。
 水の中を覗き込めば、竜の頭のような巨大な骸骨が沈んでいるのが見えます。
 降りてすぐの場所には無数のガイコツが転がっており、どうやら各階層での死者はここに集められているようです。
 イーリン曰く「おそらくここが試練の主たる階層。真ん中に見える島に飛行やロープだけで行こうとしたら罠があるとおもう。正しい手段が何処かに用意されているはず。第一階層の性格から考えて、突破できない作りには絶対になっていない。これが冥界行を模しているなら、船がどこかにあるはず。」

●第三階層:人の試練
 階段を降りた先は、50m四方の神殿のような場所です。
 イレギュラーズが入ると『とても一人では持てない巨大な宝剣』を携えた竜を模した騎士、の鎧が玉座に座っています。
 それはゆっくりと立ち上がると、宝剣を担ぎ襲いかかってきます。
 イーリン曰く「わかりやすい試練。ここまで来たら全員できっちり倒して帰りましょう」


【敵編成】
●スケルトン
 雑魚です。そこかしこで出てきます。粗末な棍棒や弓で武装しています。

●フロアイーター
 床に擬態しています。飲み込まれると致命的なダメージを受けるでしょうが、それが食事行為であることを加味すると……?

●酸の鳥
 防技や抵抗を下げたり、毒状態にする体液を撒き散らす鳥です。炎や音を恐れず犠牲者めがけて突っ込んできます。

●殺人魚
 必殺、ブレイク、スプラッシュで噛みちぎってくる魚です。遠距離攻撃は持っていません。

●見えない機械
 オブジェクトに擬態しています。文字通り透明な姿であり、正確に姿を捉えないと命中は困難を極めるでしょう。

●竜骨騎士
 フルプレートアーマーにバスタードソード。バックラーと3連装ボウガンを装備した竜骨で作られたスケルトンです。カウンターを積極的に狙ってくる性質を持っています。

●竜将・ワタリ
 巨大な宝剣を手に戦う豪奢な竜を模した鎧を着た騎士です。試練に挑んだ者への最後の挑戦であり、その質量と機動力を生かした暴風のような戦い方を得意とします。
 言葉は発しませんが、言葉を理解しているようです。試練という存在であることを鑑みて言葉を投げかければ、反応があるかもしれません。
 また、試練を受ける者としてヘイリンを集中的に狙います。

キャラクターを選択してください。


PAGETOPPAGEBOTTOM