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文化保存ギルド

【幕間】水天宮 妙見子(p3p010644)へ その2

●2023年 某月 某日

 鉄帝での戦いは、終わりを告げた。
 神である貴方は、お礼参りを終えた彼女が背を向けたところで、貴方も背を向けた。

 皆、無事で帰られました。

 それは、今日の穏やかな彼女によく似合っていたお祈りの内容だったからだ。

「――あ、居た」
「へ」

 だから、当然のように自分を見つけた挙げ句、抱きついてきた彼女に対応できないのも当然だった。
 見慣れぬ装いだと思ったのは、よく見れば鎧のインナーの上に羽織をしていたからだった。
 なぜ、と思いを巡らせる間もなく。貴方の鼻をくすぐるのは柑橘の香り。乙女の柔肌と白い腕。それは貴方を逃さないと腹に回され、柔らかな頬は貴方の顔の横に並んだ。

「ご利益をありがとう。それでね、なんでも豊穣の神様には、お礼参りだけじゃなくて治したい所とかを撫でるとご利益が増すって聞いたのよ。貴方もそうなの」
「え、あ。ひゃい。しょ、そういう神様もありますが。妙見子は」

「妙見子は?」

 密着すれば熱は伝わる。彼女がちゃんと生きているということは、痛いほど伝わる。痛いのは、貴方の鼓動の方なのだろうけれど。
 多くの人に言葉を放つ、ともすれば軽薄ささえ感じる唇が、今は貴方にだけ向けられる。戦場全体を見る視線が、今は貴方だけに向けられている。
 なにか、なにか言わなければ。彼女は知ったことを実践として血肉にするのが好みの人間。このままでは貴方相手に実践しかねない。
 というより、ご利益のお礼参りに来ておいて新しく知ったことを実践するつもりというのはどういう了見か。
 嗚呼いっそ、自分がただの神様だったら遠慮なく不敬と叫べたものを。
 その日神社に響き渡ったのは、鳥のような声だった。

「できまひひゅんっ」


<了>

【参考イラスト】
https://twitter.com/merino_PPP/status/1654654488685445122?s=20

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