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文化保存ギルド

今夜の喋り場その50

それは文化保存ギルドにある一室。
正確には、貴族がこの書庫という屋敷に来た際に執務を執り行うために用意された部屋。

それも今はイーリンの自室となっている。
といっても内装は殆どいじっておらず、書斎机と来客用のソファとローテーブル。本棚と唯一追加されただろうベッド。効率を重視する彼女にとって、ワンルームマンションのようになっているのだ。

おそらく、彼女自身が掃除しているのではない。そう思える小綺麗な部屋。貴方を迎えたのはそういう部屋だ。

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ありがと(短くそうつぶやいてから、話を聞いて)

なるほど、二律背反か。
二面性、というよりは乖離して苦しんでいるから、より厄介ね。
だから、貴方の場合は……依頼で不幸にしていい人間を、大義名分を使って不幸にして。それを味わってなんとか飢えを逃したりするのか。
あるいは、それさえも代用品で、本質的には自分を心底好いてくれるような人間の破滅を望んでしまうのか。
悪い言い方をしましょう、実に興味深い。

そして、辛いでしょうね……。
半端者、私と同じね。そうあらねばならない、英雄や、あるいは汚名をかぶると決めていても、他人に脆さを見せ、同情を買い、自分の周りを囲ませるのと同じように。
そうしてはいけないとわかっていても、そうせざるをえない。
……痛いわよね、ほんと。

安い同情は、重さのない砂糖菓子みたいなものだけど。受け取っておいてくれると嬉しいわ(少し軽い口調は、きっと自分にも思うところがあるからなのだろう。本質に触れるには、今はまだ早すぎるし、そんなぞんざいに扱いたくもないという彼女なりの誠意だろう)

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