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文化保存ギルド

【ファーストコンタクト】ある夜の出来事

●イントロダクション

 その夜、その店を選んだのは、その街路の中では少し小綺麗だったからかもしれない。あるいは「もがれる野菜亭」という珍奇な名前のせいだったのかも知れない。
 見た目より広い店の、案外長いカウンターの一席に、貴方は腰掛けた。その店はごろつきから冒険者風、貴方も含めて聖職者風も居る、ごった煮のような場所だった。それでも居心地が良いのは、少なくともその連中が多少なりとも弁えているからだろうか。
 店主が貴方の注文を聞いて少しした後。隣、いいかしらと声がかかる。貴方が気にもかけずに居ると、その女は遠慮なく隣りに座った。
 小さな背、紫の髪、紅い目、少女そのものの顔立ち。
「アイスミルク。ダブルで。あと適当にお願い」
 慣れた口調で注文する彼女の姿を見た貴方を見ずに、懐から取り出した紙巻たばこを咥えようとして、彼女は貴方を見た。
「煙草、吸ってもいいかしら?」


【状況】
・ここは宿屋兼酒場「もがれる野菜亭」のカウンターです。
・貴方はたまたまそのカウンターに座っていました。
・貴方と彼女は、まだお互いのことを何も知りません。
・貴方は彼女の事を一方的に知っていても構いません。「騎戦の勇者」のパレードは、先日行われたばかりですから。

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「ま、それにそんな『勇者様が出入りする店で粗相をすればどうなるか』なんて。三下だろうとイヤってほどわかるでしょうしねぇ?」
くすくすと子供っぽく笑う姿は、おとぎ話の中のことでも話しているようで。とても自分のことを話しているようには思えない。

「ふふ、私の名前は多いからね。司書、馬の骨、紫苑の君、フィーア、チェスプレイヤーや戦術教官と呼ばれることもあるわ。だけど、貴方が知っているのはイーリン・ジョーンズ」
そう言って嬉しそうに笑ったまま、乾杯に応じてくれたグラスに軽くコチンと。

「よろしくね、シスターコルネリア? ああ、私も元はシスターだったのよ。召喚されたからもう名乗るのはやめたけどね。敬虔な信徒を、私は尊敬するわ」
乾杯した後に、ミルクを半分ほどぐいっと一気に煽る。
それと同時に、二人の前に生ハムとチーズの盛り合わせが出てくる。マスターは何も言わず、どうやらサービスらしい。
目の前の少女はコルネリアにすっかり興味を持ったようで、さあ、次は何を話す? と言いたげだ。

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