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文化保存ギルド

【ファーストコンタクト】ある夜の出来事

●イントロダクション

 その夜、その店を選んだのは、その街路の中では少し小綺麗だったからかもしれない。あるいは「もがれる野菜亭」という珍奇な名前のせいだったのかも知れない。
 見た目より広い店の、案外長いカウンターの一席に、貴方は腰掛けた。その店はごろつきから冒険者風、貴方も含めて聖職者風も居る、ごった煮のような場所だった。それでも居心地が良いのは、少なくともその連中が多少なりとも弁えているからだろうか。
 店主が貴方の注文を聞いて少しした後。隣、いいかしらと声がかかる。貴方が気にもかけずに居ると、その女は遠慮なく隣りに座った。
 小さな背、紫の髪、紅い目、少女そのものの顔立ち。
「アイスミルク。ダブルで。あと適当にお願い」
 慣れた口調で注文する彼女の姿を見た貴方を見ずに、懐から取り出した紙巻たばこを咥えようとして、彼女は貴方を見た。
「煙草、吸ってもいいかしら?」


【状況】
・ここは宿屋兼酒場「もがれる野菜亭」のカウンターです。
・貴方はたまたまそのカウンターに座っていました。
・貴方と彼女は、まだお互いのことを何も知りません。
・貴方は彼女の事を一方的に知っていても構いません。「騎戦の勇者」のパレードは、先日行われたばかりですから。

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「民衆向けの食堂みたいねぇ。まぁ格式たけー飯より好みではあるけど」
 灰皿に灰を落としながら背後で騒いでる男衆を一瞥してイーリンへ視線を戻せば。

「マジックアイテム……随分と便利ねぇ……」
 見せてもらった指輪に目を細めて焦点を合わせれば見覚えのある印。ここでようやく先程から感じていた既視感に合点がいく。
「あぁ、アンタイレギュラーズだったのか。最近騒がれてた勇者ランキングの……名前は確か───」
 紫髪紅瞳の女。少女の姿をした勇者。知と戦旗を持って前へ進む者……

「───イーリン・ジョーンズ」
 コルネリアより歳若く、だが特異運命座標として先を歩む者。
 サングラス越しの瞳に映る興味の色が僅かに強まっていく。

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