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旅一座【Leuchten】

【PPP一周年記念SS】旅一座公演『夜空の星に願いを』

 幻想の王都メフ・メフィートのとある広場にテントがたった。
 テントといえば、サーカス『シルク・ド・マントゥール』。それは幻想を混乱に陥れた魔種の象徴。
 付近の住民は警戒し、訝しがった。
 テントから出てきたのは、ひ弱な感じのするやせ細った背の高い男に、目つきの悪い獣種、蝶の羽根をつけた麗人、ポニーテールの美女、狼の毛皮を被った獣種、水色の髪の少女だ。統一感はなく、個性豊かな面々だ。
 街の力自慢だろうか、強面の男がひ弱そうな男に目をつけて、怒鳴りつける。
「オレ達はサーカスなんてウンザリなんだよ!魔種なんて、よそ行けよ!」
「……俺達、魔種じゃない……。……特異運命座標……。……みんなにサーカスは本当は楽しいし、安全だって伝えたくて、……サーカスをするんだ……。……無料だから、遊びに来て欲しい……」
 ひ弱なそうな男、旅一座の団長、ヨタカ・アストラルノヴァは臆することなく、チラシを一枚、その男に渡した。大の男が気迫に押されて、チラシを受け取った。
「……ひ、暇だったら、見に行ってやるよ……」
 男が態度を急変させたのは気迫に負けただけじゃない。特異運命座標だと分かったからだ。シルク・ド・マントゥールの狂気の呼び声を止め、魔種を駆逐した、あの特異運命座標。 王や貴族の覚えもめでたい、あの特異運命座標だからだ。
 特異運命座標がサーカスをするという噂は噂に噂を呼び、旅一座のテントには行列が並んだ。

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 再び訪れた孤独を嘆く曲の中、中央支柱にスポットライトが当たる。そこにいたのは弥恵だ。薄絹を何枚を重ね、金の装飾品で留めた天女のような姿で、足に掛けた支柱だけを支えに、曲に合わせてクルクルと回転しながら、舞い降りてくる。
 そして、ある一点で止まると、ヨタカの檻に向かって、ふぅと息を吹きかけるような仕草をする。すると、ヨタカの檻が消え失せ、また星空が戻ってくる。
 ヨタカと律は手を取り合って喜び、その喜びをそのまま表現するように、明るく再会を喜ぶような曲を奏でる。それに合わせて、弥恵も皆に喜びを伝えるように、指先の一本一本にまで
神経を集中させ、自らの身体の曲線美を支柱を使って表現していく。それは色めかしく艶っぽいが、いやらしさのない情熱的なポールダンスだった。
 観客もほぅとため息を漏らし、魅惑のダンスに酔いしれた。

 弥恵が降りてきて、観客に礼をして周り、出ていこうとしたとき、銃を構えたジェイクがそれを遮った。ヨタカと律はドキドキ、ハラハラするような曲調へと転調する。
 弥恵が足を上げて、舞いの回転力をそのまま生かして、ジェイクを蹴り上げようとすれば、ジェイクはバク転、宙返りを織り交ぜ、逃げ回りつつ、ヨタカと律へと銃口を向ける。
 観客の誰もが危ないと思ったが、その弾は横倒しになったドラムセットに当たり、ヨタカと律の曲にテンポのいい打楽器の音が組み合わさる。
 その間もジェイクと弥恵の殺陣とジェイクのドラムへの曲撃ちは続いていて、観客は大盛り上がりだ。
 ジェイクがシンバルに弾を撃った瞬間、天井から凄い勢いで何かが降りてくる。クァレの空中ブランコだ。クァレは金銀の紙吹雪を舞わせながら去っていく。その煌く紙吹雪を浴びたジェイクは苦しみ悶えながら、舞台を降りていった。

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