ここは庭園。私はイルミナ。
最近、この庭園で独りのんびりと過ごすことが多い……のだが。
今日はどうやら、他にもお客さんがいるらしい。

いつものように散歩をしていると、光る蝶が目の前を舞い飛んで。
珍しさと美しさに思わず目で追っていると、声を掛けられた。
こんにちは、と挨拶を返しながら、いつものように相手を観察する。
……自分の事をおばあちゃん、と呼んでいたが。外見で言えば……そう、外見だけで言えば自分とそう変わらないように見える。
尤も、外見と実年齢が合わないことは自身でも実証済み。つまりはそういった種族、生物なのだろう、と結論を出す。
それはさておき。相手から話をしないか、と問われて断る理由はない。

「……はい、イルミナで良ければ。お話させていただけますか？」

……さて、どんな話ができるだろうか。

有難う。少し、暇をしていたの。(そう言うとゆったりした動作で近寄って)
…改めて、私はアルチェロ。しがない妖精よ。大したモノでは無いのだけれど…どうぞ、宜しくね。

なるほど。イルミナで良ければ暇つぶしのお相手になるッスよ！
アルチェロさん、ですね！イルミナはイルミナと言います、よろしくお願いしますね！
……妖精、ッスか。いやはや、やはり色々な方がいらっしゃるッス。

イルミナ、ね。綺麗な響きの名前だわ。素敵ね。(賞賛して)
貴女もヒトでは無いと思ったけれど…機械の子、なのかしら。間違っていたら、御免なさいね。

ふふ、ありがとうございます。アルチェロさんのお名前もとても美しいと思うッスよ！
ご明察ッス、イルミナは機械ッス。どうして……いや、機械という物を知っていればわかるッスね、ええ。
妖精、妖精。ふむ。いまいちこう、どういう存在なのかがイルミナにはわからないのですが……

そうかしら。…昔、新聞を見掛けた時に適当に拾った言葉だったけれど。
美しく聴こえるのであれば、幸いだわ。
(有難う、と続ける。適当に拾った言葉でも、嬉しいものは嬉しいらしいと内心呟いて)

…私は、中でも特殊な方だと思うわ。
ヒトが、知性あるモノが、初めて願った願いより生まれたモノ。願いの化身。…確か昔、ファストメア、原初の夢、なんて呼ばれた事もあったわ。

新聞から……ふむ、どういった意味だったんスかね。

願いから生まれた、ッスか……？願いを叶えたりしてくれる……と、いうわけでは無いんスよね。

さぁ…あの時の新聞の内容も、詳しく覚えている訳では無いし…。

嗚呼、ええと、そうね。私の本来の役割は、生まれた夢を見守り、捨てられた夢を見送る事だから。
誰かの願いを叶えたりするような、凄い力なんて持って無いのよ。

む、そうッスか……しかし、アルチェロさんにはそれまで名前がなかったんスかね？他人と関わったりすることも無かったんでしょうか。

あはは、そうッスよね……おとぎ話のようにはいかないッス。
うーん、なかなかイルミナには難解ッス……捨てられた夢はどこへ行ってしまうのでしょう。

ヒトと関わる事が少なかったから。何時もヒトの居ない森に住んでいたのよ。

…御期待に添えなくて、御免なさいね。
私の世界での夢の立ち位置は特別だったわ。
解らないのも当然よ。(穏やかな眼でそう呟いて)

お一人で森に住んでた、と……寂しかったりとか、そういうのはなかったッスか？それとも、自然や動物と意志疎通というか、触れあってたから問題なかったんスかね……？

……案外、アルチェロさんからしたら科学の方が魔法とか、おとぎ話の世界に見えるのかもしれないッスね……！