４月某日、鉄帝美少女領内、領主館庭園にて。

咲花百合子が血を好む事は周知の事実だが、花を好むのを知るのは領地で百合子の世話をする者達位なものだろう。
普段から目に見えて深い愛情を注いている訳ではないが、時々小さな花が綻ぶのを見つけてはじっと眺めて居たり、使用人を下げて手ずから植え替えをしていたりする。
貴方が訪れたのはそういうタイミングだ。

（足音を感じ取ると僅かに眉を寄せた。
　別に庭に入る事を禁じている訳ではないが、人に会うのが酷く億劫だった。
　身の回りの事をさせている使用人たちもそれを感じ取ってか、最低限の会話しかしてこないが、この足取りだと緊急の要件でもあったのだろうか）

（その足音が急いでいるというよりも、いっそ領域を侵すほどの乱暴さであるのに気づかなかったのは感覚が鈍磨していたからか。
　それとも、その可能性を意図的に考えないようにしていたからか）

（振り向いた時、その表情は驚きというよりも痛みに揺れていた）