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美少女道場
そう。
(一呼吸置く。
惜しむ様に軽くワインを口に含んで、酒気交じりの呼気を吐いた。)
我々の距離はすれ違えるほど近くはないよ。
事実は絶対だが、そこから組み立てられる推測は妄想だ。精神に依るものは特に。
お前はきっと勘違いしているし、吾は何もわからない。
吾は何もわからないんだ。
何を好むか好まざるかも、どういう考え方や感情で動くのかも知らない。
だから例えその場限りのものであったとしても手がかりが欲しい。
だって、お前、吾を支配するんだろ。
仮に自主的にそうなったとして捧げられるものがまるで見当違いなものだったらきっと困るぞ。
絶対困る。
(一呼吸置く。
惜しむ様に軽くワインを口に含んで、酒気交じりの呼気を吐いた。)
我々の距離はすれ違えるほど近くはないよ。
事実は絶対だが、そこから組み立てられる推測は妄想だ。精神に依るものは特に。
お前はきっと勘違いしているし、吾は何もわからない。
吾は何もわからないんだ。
何を好むか好まざるかも、どういう考え方や感情で動くのかも知らない。
だから例えその場限りのものであったとしても手がかりが欲しい。
だって、お前、吾を支配するんだろ。
仮に自主的にそうなったとして捧げられるものがまるで見当違いなものだったらきっと困るぞ。
絶対困る。
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狂乱に飲まれたポンペイの街も今は静かに死の灰が降り積もるばかりです。
その様子を小舟の上で奴隷のニディアだけが感じていました。
盲目ながらも彼女の素晴らしい感覚はチリチリと肌を焼く熱気と灰の匂い……或いは滅びの匂いを正確に感じ取っていたのです。
恐ろしくなってニディアは主人のグローカスを探す様に手を彷徨わせましたが、すぐに諦めて船の縁を掴みました。
きっとグローカスの横にはアイオンが居るに違いありません。
この船が陸に着いたら、グローカスが国元に帰ったら、二人は結婚してしまうでしょう。心を狂わせる薬さえも二人の愛を引き離す事は出来なかったのですから。
ニディアは残る力を振り絞って立ち上がり、磯の香りが濃い方に踏み出しました。
「さようなら、グローカス様」
水音に船を漕いでいた船頭が振り返りましたが、ニディアの体はとても小さくやせ細っていたので魚の跳ねた音だろうとかたずけてしまいました。
小舟は陸地を目指してゆらゆらと進んでいきます。
やがて水平線から日が昇り、疲れ果てて眠るグローカスとアイオンを照らし出しました。