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ギルドスレッド

美少女道場

【RP】『マノン・レスコー』鉄帝公演

鉄帝の国立劇場近くの喫茶店。
暴れ牛を放って皆で仕留めて食うタイプの鉄帝的サービスは行っていない。
諸外国とちょっとメニューが違うだけの普通の店だ。
窓側ボックス席だが、外は結構吹雪いている。

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吹雪いてきたな。すぐに収まるとは思うが……。
(注文した紅茶で指先を温めながら、ちらと外を見る。
 硝子に映る顔には雪が積もっていた柔らかな毛先は濡れてしっとりと額に張り付いていた。
 そして半透明の自分の向こう、白く霞む大路の向こうはつい先ほどまでいた場所である)
(沈黙。)

  (もう四拍分の沈黙を置いて)………ああ。

(どうにか捻りだしたような返事をした。)

(先程、公演が終わった時からずっとそうなのである。
 極端に口数が少ない。普通なら雪に対して文句のひとつでも言うであろうがそれもない。
 組んだ両手に額を預けたまま、うんともすんともならない。
 呼吸をしているのかも怪しいほどなんともならないし、何もしていない。)

(本当に何も言ってないものだから、彼のテーブルの前には飲み物もなにもなかった。
 雪さえ碌に落とさないコートはずくずくと濡れ、微かに噴霧されていた香水の香りを際立たせているようだった。)


(そしてまた、だんまりとなって何も言わない。)
(こうなるのを見るのは初めての事ではない。天義公演の時もこうなっているのを見た。
 それよりも今回は深いか。

 ぱちぱちと深い紺色の星空が瞬いて、それからゆっくりと腰を上げた。
 そのまま静かに移動を気取らせないように……といっても正面に居たので丸見えなのだが、対面に座った貴方の隣に腰を下ろして)

”美しいお嬢さん お許し頂けましたら
 その甘い唇であなたの名前を告げては下さいませんか”

(劇中のセリフを唱える。
 覗き込む様に首を傾げれば豊かな黒髪が揺れて百合の香りが舞った)
”レスコー。マノン・レスコー。それが私の名です。”



…………なんでお前がそっちの役なんだよ。逆だろ。

(ふつ、と長く息を吐ききって。ようやく顔を上げた。
 まだ浮ついた感情の整理がつかないようで、それを悟られることを不快がっているような、そういう複雑な感情がった。)


良かった。
いや…正直、舐めてたとも言っていいな。
よいではないか。

(ようやく此方を向いた金色の双眸に小さく鼻を鳴らした。
 表情は変わらないくせに、形ばかりの「よくも放っておいたな」という不満は表してくる)

そうか。
貴殿の認識が改められたならよかった。
……まぁ第一幕から第二幕に変わる時は流石に吾も驚いたのであるが。

(だが、それも「分りやすく」する為のポーズに過ぎないのだろう。
 不満の追及に些かの未練も見せずにそう続ければ)

だが、先に飲み物でも頼んでおけ。
体が冷えているし、そろそろ店員の目線が痛い。
悪かったよ。
流石に浸りすぎた。

(視線は献立表を2往復する。アルコールを探し求めた。
 3度目の往復でようやくコーヒーを注文した。)


……さて、そうだな。何から話そう。
あの回転式舞台は聞いていたよりもずっと音が小さくて観劇の邪魔にはならなかったな。
それに、そう。内容も軍国主義的な改変がかかっていたが、物語としてもよくまとまっていて……………悪い、もう1分…いや、30秒待て。整理する。
うむ、特に差し許す。

(再び思考の海に沈もうとする貴方を横目に、自分と言えば先に来た紅茶にミルクと砂糖をたっぷり入れてスプーンでかき混ぜる。
 自分の感想でも語ろうかと思ったが、思考の夾雑物になるのも忍びなく、結局はのんびりミルクティーに口を付けているばかりだ)
……よし。
今回の改変で特に注目するところはデ・グリューが軍人であったことだ。
強く勇敢で胸の内に激情をたたえた。非常にわかりやすい物語の英雄。
対して貴族共はきらびやかな欺瞞に満ち、権力によって個々人の強さを踏みにじり支配するという…この国では嫌われそうなタイプの悪人だ。
今回の観劇はわかりやすく王道な「勧善懲悪」…いや、あれは善の勝利といっていいのか?
まあいい。ともかくわかりやすく王道であったがゆえに、奇をてらわぬが故の素直な作品としての良さがあった。
鉄帝という国が芸能方面に投資を行っているとはあまり考えてはいなかったが……いや、なかなかどうして……むしろ「力ある英雄が不当な権益を振りかざす者どもから愛しいものを取り戻す」という話であったからこそ、役者としても演じやすかったのか……?
なにからなにまで文句なしによくて腹が立つな。
くふっ。聞くところによれば北国と言う気候が室内芸術を育てたらしいぞ?

……物語の構造として出会って恋に落ちて引き裂かれて燃え上がっての連続故、基本的に見せ場しかないのよな。
それを分かりやすいストーリーで殴ってくるのであれば人気が出るのも当然といえよう。
吾は小説の方を先に読んだが、其方のマノンよりも劇中のマノンの方が奔放さが抑えられて運命に翻弄される少女としての面が強調されているようであったな。
まぁ幻想と違って鉄帝ではそういう方向性はヒロインには相応しからざると判断されたのやもしれぬ。
しかしながら、最終的にはデ・グリューと共に追手と戦うようになると思えば英断であろうか。
それに多分、あの主人公二人元軍属か何かであろう。殺陣の動き方が実践に近い。
迫力のある決闘など劇中でみられようものか、と思って居ったが、なるほど実に見栄えしつつも、「納得できる」動き方であった。
ボクが読んだほうじゃあ、マノンもグリューも一時の感情に身を任せ、計画性のない逃避行を行う……とまぁそういう内容が多かったな。
それだけに、鉄帝向きに改変されたそれが良い出来だということは知っていたが……国風が作品とうまく噛みえば、ここまで真に迫るような作品になるのかと驚いたよ。
特にレジスタンスの手引きを経たマノンがグリューを救出し、すぐに逃避行に及ぶでなく貴族邸へ乗り込み暴れるシーン。あの改変は個人的に特に気に入るところだった。
レジスタンスとともに人としての強さと尊厳を叫び戦う姿は…胸が躍るところがあったな。

(早口にならないように気を付けるような、独特の歩調で語るところ。
 そこにようやくコーヒーが届いた。乾いた唇を濡らすと再び息をつく。)

それに…そう、ヒロインだ。マノンだ。
ボクが見たほうではマノンが戦うまではなかったんだ。あれは驚いた。
本当にいい動きだったからあとで名前を確認したが、ここいらでは有名な女形だったんだ。
カストラートってやつだ。今日日珍しい。
……かすとらーと。

(初めて聞いた。と鸚鵡返しに繰り返し)

少し動き、と言うか歩調が違うと感じたがそうか男か……。
たしかにヒロインの役者の名前が男性名であったが、そういう芸名か何かだと思うておったわ。
つまり、奴がしておった強調された女性らしい動きのようなものは演技ではなくそれらしく見せる記号か……。
うむむむ、悔しいが全然気づかなんだ。というかそんなん居るなど可能性も考えなんだわ。
声はどうしておるのだ。全然低くなかったぞ。
声を出す訓練もしてるんだろうが、それこそカストラートとしての才もあるだろう。

カストラートっていうのは……いわゆる去勢された男性歌手のことだ。
声変り前にそのような施術を行うと、成長しても少年特有の透き通るような高い声と、中性的な美貌が手に入るというものだよ。
それでいて鍛えれば体力は男性相応とくる。
声・演技・活劇…いずれの分野でも活動できる。
彼自身がひとつの芸術作品と呼んでもいい。

いまじゃ人道的理由や治癒再形成技術の発達で見なくなったが、昔はカストラートを抱えることができて初めて一流の一座を名乗ることができる…っていう程度にはいたらしい。
…らしいってのはボクが生まれる前の話だからだが。
その昔は歌のうまい子供は去勢して売りとばされるなんて話もあったそうだ。
ふぅん、ざっと100年前か?
しかしまぁ……人も同族を加工するのであるな。
貴殿が珍しいというほどであるから余程すたれた風習なのであろうが……。
耳が尖っていなかった故、過去の遺物がいまだに居るという訳でもあるまい。
ということは、アレは自分から志願してなったもの、という事であろうか。

なれば、マノンの演技が鬼気迫るものであるのも頷けような。
”私の罪は忘れ去られるでしょう。けれど、私の愛が死ぬ事はありません”
あの末期の台詞の声の震えは、役者が男か女かなどつまらぬ事で褪せるものではなかった。
……くふ、吾が同じセリフを言うと価値が落ちる気すらするであるな。
もっと前だったかもしれないな。
廃れた理由もたくさんあるにはあるらしいが… まぁ、なんだ。
ここで歴史の講釈なんて聞いてもつまらんだろう。
(普段ならここで苛立ちを見せるぐらいありそうなものだが、そんな様子を見せることはなかった。よほど機嫌がいいらしい。)

ともあれ、今でも偶発的な事故で去勢した少年が、たまさかなんの病にかかることもなく健康に育ち、たまさか一座に迎えられるとか、そういう話もあるだろうな。
真意のほどは直接聞かなきゃわからんが…彼自身の演技は、あの手の俳優には珍しくしっかりと脚本の意を汲み取った、心震わすものだった。
……自分で言ってて腹が立ってきた。
まあ見た目に関しては間違いなくボクが上だったとしても、あの声は…百歩譲れば…いや、間違いなく彼の方が上だものな。
あーほんと悔しい。

悔しいけど。
美しいものは美しいし。美しいものは素晴らしい。
それこそ尊敬を向けるに値するほどだ。
はぁーーーーーーーーー………
ふうん?

(興味深い、と言う風に目を瞬かせた。
 素直に自分以上と認めて羨望の溜息をつく様子を、観劇する時か、あるいはそれ以上に熱心に「観測」して)

素直だな。
ソレはカストラートよりもよほど危険を冒して手に入れたものであろう?
そんなに容易く価値を認めてしまっても良いものなのか?
皮肉かオメー。
(怒っている様子はない。軽口の範疇である。)

危険を冒した分だけ、支払った分だけ、本当に誰にでも通じる美しさなんてあるはずないだろ。
美しくありたいという思いの強さだけで美しくなれるわけないだろ。
どんなものにも天運とか下地とか努力の巧さとか、そういうのがある。
でなきゃボクは今頃、自分の美貌だけでお前の脳神経を焼き殺してるね。

それに敗北ってのはどう取り繕っても自分の中にあるもんだろう。
本気で敗北を認めないうちは敗北じゃあないが、ちょっとでも認めりゃそれは負けだろ。
どうあがいたって敗北でしかないだろ。
お前だって実際どうだよ。
「ああいう風になりたい」とか「こんな作品に関わりたい」とかさ。
そんな感情とか憧れとか言葉もないような感動とか。
どうあがいても認めるしかないなにかとか、そういうのあったかよ。
……吾にも覚えがなくもない。とっくの昔に諦めたが。

才能の欠如と言う奴でな。
美ならば直視すれば脳神経を焼き切り、足跡を見るだけで魅了する程度まで行ったし、武であれば、数合でも打ち合えるものがろくに居ないという所まで行ったが……。
まぁ、化け物になってもどうしようもないモノもこの世にはあるよ。

でも、貴殿はきちんと美少年になったのであろう?
成果を出したものと、出さなかったものの敗北の価値は違おう。
……それなのに、貴殿は認められるのであるな。
そりゃあお前。
今回負けても最終的に勝てればチャラだろうが。
そういう身の程知らずの事を言うから人間は嫌いになれぬなぁ。
そうかい。
お前の諦めが早すぎるだけかもしれないぜ。
そうか。そうかもな。

でも、お前は酷いやつだな。セレマ。
望みを追う事は尊くて美しいが、それは地獄への片道切符だ。
勝っても勝ってもずっと苦しむぞ。進まない事が安楽である事もあるだろう。
そういうものを「わたし」にすすめるのか。
言っていることは理解する。それも幸せの形だろうな。

さて…たしか‥‥
”幸せでした。本当に。
ええ、幸せだったこともかつてはありました。
静けさの中に私の喜びがいて… 友達と出かけることもあったのですよ。
時々ダンスも踊ったんです。
想像できますか。こんな私が。

……それでもそんな幸福も逃げ去ってしまったのです。

私は哀れな娘なのです。
この顔には美しさの輝きもなく、こぼれるのはため息ばかり。
悲しみが、悲しみが私の運命を支配しているのです…”


……こんな感じだったか?
望もうと望むまいと価値は変わる。
後生大事に抱えているものは時とともに劣化し、失われて、価値のないものだけが残る。
ボクは価値のないものに縋りつくのはまっぴらだ。
死んでもごめんだ。地獄を天国と錯覚するだけの病気だぜ。

だったらボクは進む方を選ぶ。
勇ましいなお前は。
わたしは……

(そんなことをするだけの価値もない。と口をついて出かけた言葉を飲み込んで)

吾は見たいと思うよ。お前の結末を。
だが、価値が変わらないものもあるはずだ。
それは只の願望であるかもしれないが、変化したものがただ一晩の気の迷いでない可能性は何処にもない……。
……想いを作るのは過去だ。古ければ古い程重くのしかかり、輝かしければ輝かしい程抗いがたい。
因果なくば動けないしお前を不老不死へと駆り立てる狂奔もまた過去由来の物であろう。

もしも、お前の結末が破滅でなければ吾も信じよう。悪かったと首を垂れても良い。
なるほど。
結末そのものを判断基準とするなら、お前が負けることはないな。
だが安心しろ。ボクだって誰かに価値を強制するつもりもない。

というかさ。誘われといてなんなんだがな。
お前すげー根暗だな。超絶陰キャだぞ美少女よ。
よくもボクの性格を知りながら、その性格で、誘ってやろうって思えたよな。
初めて言われた。根暗か、そんなに。

……まぁ、一人でも来れた。
誘えばお前は借りがどうとか言って渋りそうだったし、巻き込むならお前が懇意にしている劇団に頼む形にして貸しを作っておくのがよいかも、とも考えた。
お前は特に演劇の振興に興味があるようであったから、吾を口実にして私設劇団に金を回すのは一石二鳥であろう。

否、そういう事ではないな。
きちんと考えていなかった。誘った後どうなるかとか、どうしようとか特に思ってなかった。
「一緒にいかがですか」と書くのはとても簡単だったので……。
よくわかってんじゃないか。
めっちゃくちゃ喜んでるとも。想定以上に。
この借りをどうやって返そうかと悩む程度にはな。

でもこっちとしては借りの返し方に悩むと知ったうえで乗っかったわけだし。
まあ…なんだ。互いに一時の迷いからこういう状況に陥るってこともある……。
……いや、この表現は適切じゃあないな。

ともかく、たまにはそういう関係性であるような日常に興じるのも悪くはないってことだろ。
互いにそういう気分だったってことだ。不自然でもない。よくある話だ。
じゃあ、今日はともだちの気分?

(首をかしげて見せる様子は酷く幼げだ。
 互いに見た目通りの年齢ではないが、器と魂と精神に酷い軋みがある様な……)
さあな。


お前がこの時間にどういう意味を付けるかは、お前の好きにすりゃあいいんだ。
ボクはそうするつもりだ。
わかった。

なぁ、美少年。
借りについてだが、吾はまた観劇にでも誘ってくれればよいぞ。
お前と私とでは演劇鑑賞の価値は違うが、別の所では多分釣り合うから。
きっちり足元見るじゃん?
……まあ、しゃあない。
一度で返しきれる気はしないから何度かに分ける。あとで文句言うなよ。
……言わない。吾が強請ったものだぞ。いうものか。
…そう。
(一拍ほどの間をおいてから「言質は取ったからな」と念押しする様に言った。
 あくまで利害関係にうるさい、偏屈な人間のようにそう言った。)
うん。

(それっきり沈黙が落ちる。
 レコードの音楽と遠くからくぐもった談笑が聞こえるばかりで、置き去りにされたように全てが遠い。
 近いのは隣の貴方くらいだが……以前味わった沈黙よりも随分と気安い様に感じた。

 すっかり冷えたミルクティーに口を付けてちらと窓を見れば、白んでいた視界は晴れていた。
 薄闇のヴェールの向こうに幾つもの街灯が通りを彩っている)

日が暮れてきたな。そろそろ酒場も開く頃か。
そう。

いいとこ知ってるなら案内しろよ。
飲み代くらいなら持ってやる。
よいぞ。この辺の店はわかる故。
飯が食える店と飲むだけの店のどっちがいい?
あー………じゃ、食えるほうで。
この国に関しては不案内だからな。
いい機会だから食っとこう。
ん、分かった。
庶民的であるが評判のいいとこがあるのでそちらに行こう。

……ここは吾が出すからな。大した額ではないが。

(残っていたミルクティーを飲み干して立ち上がった
 すっかり乾いた毛先が楽し気に揺れて遠ざかり、百合の香りばかりが取り残される)
……………そう?
じゃあ…それでいいや……。
(絶妙な居心地の悪さを飲み込むような返事である。
 冷めたブラックコーヒーを眉をしかめて飲み干し、コートに手をかけ……
 そこにきてようやく「なんだってこんなずぶ濡れなんだ」と、今更になって雪に対して文句を言いだした。)

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