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遥か夏のカプリチオ
はじめまして、ヴァリューシャですの。これからどうぞ宜しくね。
でも……ふうん、イカのディープシーって、実は結構珍しいですわよね。私、初めて見ましたわ。(興味深げにじろじろ)
誰か、そこの扇を取ってもらっても構わないかしら(隅っこで炭火をおこし始める)
でも……ふうん、イカのディープシーって、実は結構珍しいですわよね。私、初めて見ましたわ。(興味深げにじろじろ)
誰か、そこの扇を取ってもらっても構わないかしら(隅っこで炭火をおこし始める)
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馬車に揺られていたのはさて、どのくらいの時間だったか。少なくとも車上で数回は夜明けを迎えたはずだ。痛む腰を擦りながら汽車にすればよかったと後悔したが、目的の町まで線路が通っていないというのだから仕方ない。なにせ、この馬車ですら途中の町で乗り継いで、船に乗らねばならないというのだから。
ところで、はて。目的の町というのは何という名前だったか。
町についたとき、日はとっぷりと暮れていた。さて、この時間から取れる宿はあったものか。どことなく陰気な雰囲気の漂う町中、頼りないガス灯の明かりを頼りに私はさまよい歩いた。
海が近いからか、ひどく生臭いにおいが鼻をついたことを覚えている。
幸運なことに、その町の唯一の宿屋の部屋に、一つ空きがあるという。長旅で疲れ切っていた私は、部屋の鍵を受け取ると食事も断り部屋へと向かった。適当に荷物を放り投げ、ベッドに身を投げ出せばすぐさまに睡魔が襲いかかってきた。普段ならシャワーの一つでも浴びてから床につくのだが、その日ばかりはそんな気力すら湧かなかった。
否。むしろ、そのときはすぐにでも眠らなければならないという、使命感というか、焦燥感のようなものが私を追い立てていたのだ。
夢を見ている。というのはすぐに分かった。宙空に浮かぶ巨大な烏賊と対峙しているという状況は夢でもなければ経験し難いものだからだ。
さて、人間通常ならば、そのような状況においてはどのように対応するのもであろうか。おそらくは、警戒し、可能ならば逃げるであろう。
だが、私はこの期に及んで楽観していた。夢であるとわかっていたから。だので、のんきにもその烏賊に話しかけてみることにしたのである。
「烏賊よ、烏賊よ。何故君は浮かんでいるのだい?」
『……。』
返事はなかった。それはそうだろう。烏賊なのだから。喋る烏賊というものを、私はとんと知らなかった。宙に浮かぶ烏賊というものも知らなかったが、宙に浮かぶからと言って喋りもするとは限らないだろう。
なので私は、そのまま一人喋りかけ続けたのである。どうしてだか、そうしたほうが良い気がしたからだ。
「烏賊よ、烏賊よ。何故君はそんなにも大きいんだい?」
『……。』
「烏賊よ、烏賊よ。ここはなんと言う場所なのかな?」
『……。』
「烏賊よ、烏賊よ。何故君はここに居るのだい?」
『……。』
「烏賊よ、烏賊よ。何故君は」
『……。』
「烏賊よ、烏賊よ。」
どれほど呼びかけただろうか。ほんの数瞬の刹那だったかもしれない。気が遠くなるほど永い時間だったかもしれない。ただ私は問い続けた。それが、私に与えられた唯一の氏名であるかのように。
「烏賊よ、烏賊よ」
「烏賊よ、烏賊よ」
「烏賊よ、烏賊よ」
「烏賊よ、烏賊よ」
「烏賊よ、烏賊よ」
「烏賊よ、烏賊よ」
「烏賊よ、烏賊よ」
「君の名は、なんと言うのだい?」
「……e'lla」
それが認識できた最後の音だった。
気がつくと私は住み慣れた屋敷の私室で横になっていた。いつの間に帰ってきていたのか。しかし、家人に聞いてみれば、その日は私が旅行に出かけた日の翌日であるという。さらに言えば、私は旅になど出ておらず、その日もいつものように就寝したはずだと。
夢だったのだ、何もかもが。そう結論づけるほかなく、実際にそれで納得がいく結論であった。
だが。どうしてもあの町の生臭いにおいが鼻の裏にこびりついているような気がするのだ。
というわけで今回の入団者。
『九本足のイカ』エルラ
くんでーす。
うん。イカ。面接の時に二度見しちゃいましたからね。新手の怪異かなって。
えー、なんかね、昔サメに脚を一本食べられちゃって、サメを倒すことを目標に頑張ってるらしいですよ。目標が大きいのは良いことだと思います。
そんな感じで。
では、以後よろしく。