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遥か夏のカプリチオ

【入団報告】いん ざ あんだぁぐらうんど

その男は、晩酌の手を止めると本日のため息カウントをひとつ増加させた。
さて、この混沌世界に渡ってきてどれだけの時間だたっただろう。
一月は経っていないはずだ。そこそこの年月をともに過ごしてきた愛用の腕時計を路銀に買えた時、質屋が切り詰めれば一月分の食費になると言ってよこした金銭がまだ尽きては居ないから。
この目減りするばかりのキラキラした円盤が、自分の名を刻む砂時計のように思えて、本日のため息カウントがまたひとつ。

「異世界って聞いたときは、なんとも夢のある話だと思ったんだけどねぇ。世知辛いのはどこの世界も一緒とはねぇ」

穂根・貢、38歳。元の世界でリストラの憂き目にあった男は、新たな世界でも無職であった。
これが物語であったなら、例えば異界の知識を用いて地位を築いていくのだろうが……。
あいにくとこの混沌世界、異世界人は溢れていて。有り体に言えばごく一般人のおっちゃん一人の持ちえる知識など、大した価値などありはしなかった。
それこそ、身につけていた一番高価なものが一月分の食費にしかならないくらいには。

いっそ異世界らしくモンスターとか倒してみようか。でもこの年になって危ないことするのはなぁ。と、安酒の酔気に乗せてつらつらと考えていると

「あら、だめよぉ。お酒を飲むのにそんな辛気臭い顔してちゃ」

いつの間にそこに居たのか。幻創種の女が一人、貢の隣席に腰掛けていた。
なおこれは、その女、名はシグレ・ヴァンデリアが隠密に優れているという話ではなく、単に酒が入ってる上に考え事をしていて注意散漫だっただけである。

「お酒を飲むときはねぇ、救われてなきゃだめなのよ?」
「どこの孤独なサラリーマンですか…というかなんですかあなたは」

言うだけあって、そのシグレは楽しそうに盃を舐めていた。

「うふふ、ごめんなさいね。あんな顔で飲まれてたら。お酒も可愛そうだもの、声をかけずにはいられないでしょう?」

さては酔っ払ってるなこいつ。
にわかにめんどくさくなってきた貢。
しかしシグレの語りは止まらない。

「それでぇ、どうして旅先でおみやげに買った手足が動く木彫りの人形を調子に乗って弄ってたら帰りの馬車の中で腕がもげちゃった子供みたいな顔してたのかしらぁ?」
「そんな具体的にがっかりしたような顔してましたかねぇ!?」

結局貢はこれも酒に酔ってたからだと思うことにして、シグレに自分の境遇を話していた。
あるいは、誰かに愚痴りたかったのかも知れない。

「とまぁ、そんなわけで。どうにも世知辛いなぁって話ですよ」
「お酒がまずくなっちゃったわぁ……」
「あんたが聞いたんだろうが!?」
「そうだけどぉ。もっとこう、誰かと喧嘩しちゃったとかぁ。なんかそういう心の持ちようでどうにかなりそうな悩みに適当に発破をかけてあげようかと思ってたらぁ。なんかそんなおっちゃんの侘しい懐事情とかどうにもならないじゃない」
「こいつ最低だ!?」

ぎゃーすか
お互いに酔っ払っているのでどうにもこうにもな会話の歩み。
お互いにだんだん声が大きくなってきて、店員が来てやんわり注意された後。

「よし、わかった。落ち着きましょう。ここで騒いでたっておっちゃんのお財布が寂しいことに変わりわないもの」
「もう遠慮とかなくなってきたな」
「良いことでしょう?それにね、ひとつ名案が思い浮かんだのよ。うん、やっぱり私天才じゃないかしら」
「へぇ、どんな?」

その目に期待という名の輝きはなかった

「どうにもならないなら飲んで忘れましょう!カンパーイ!!」
「そんなこったろうと思ったよ!はい、カンパーイ!」

夜は更ける。
よく考えたらお互いに名前も知らないままにやけくそのように盛り上がる二人だけの宴席。
あるいはこれも、この世界で紡がれる無数の物語のひとつなのかも知れなかった。

多分ね。






というわけで今回の入団者
『デュ○ダは嗜み』穂根・貢さんと
『』シグレ・ヴァンデリアさんでーす。

『』が空欄になってるのはなんかそういう無を表すとかそんな感じの称号なんじゃないかなって思いました。

何故かここ若年層が分厚いんですがお二人とも成人ですね。

お二人ともなんか違った方向性にアダルティな雰囲気で大変よろしいんじゃないでしょうか。
とか思ってたら貢さん、あなたタバコ加えてるのかと思ったらお菓子じゃないですか。最後までチョコたっぷりじゃない方の。
ギャップ萌えってやつですか

違う?

はい


まぁそんな感じでこのへんで
では以後よろしく

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おや、一気に2人紹介か。俺ぁ邪神もどきのマカライト、ビールくれ

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