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遥か夏のカプリチオ

【入団報告】むかしむかし

お妃様は言いました。

「鏡よ鏡、世界で一番美しいのはだぁれ?」

 鏡は答えます。

「ここはお妃様だと答えておくのが無難なのでお妃様です」

 ばきぃっ!
 硬いものを殴打する音が響きます。もちろん、お妃様が鏡をぶん殴った音です。魔法の鏡はとても頑丈なのでそのくらいでは傷一つ付きません。でもその心はとても繊細。些細なことでいじけてしまうので優しく言葉をかけてあげると言いでしょう。

「鏡よ鏡、お前一言余計って言われませんか?」

 お妃様は取扱説明書とか読まないタイプなのでそんなことは木にせず鏡に言葉を投げつけます。

「やっぱ自分、頭の回転が速い弊害っていうか?ついつい本質をついちゃうんですよね。それがどうにも人を傷つけちゃうみたいで。いやぁ、すんませんw」

 どごぉっ!
 重い音が響きます。なにせ、お妃様の部屋の椅子は職人が手間ひまかけて作った、重厚な高級品ですので。

「マジすいませんでした」
「わかればよろしいのです」

 お妃様は仕切り直します。

「鏡よ鏡、世界で一番美しいのはだぁれ?」

 鏡は答えます。

「えぇ~そうっすねぇ。俺の見立てだとぉ」
「結論だけ言いなさい」

 お妃様は今度はテーブルの方に目を向けています。鏡は冷やせをかき──もちろん、鏡は汗なんかかきませんから比喩表現ですが──言われたとおり簡潔に述べることにします。

「お城で働く女中の、ミエル・プラリネです」

 主役の名前が出るのに、580文字も使いました。

 さて、場面は変わって森の中。
 お妃様に嫉妬されたミエルはなんやかんやあってこの森に追い出されたところです。

「うっ、うっ……ひどい話ですぅ……大臣様バナナの皮事件の責任を全て押し付けられるなんて……」

 ユカイな事件があったようですが、この場で語られることはありません、なぜなら。

「あぁあああああああ!!!異様に腹をすかせて血に飢えた人食い熊がついさっきお城を追放されてきたかのような女の子のもとに!!!!」

 切羽詰まっているくせにやたらと丁寧な説明口調に振り返ると、実際なんかそんなビーストが駆け寄ってくるのが見えました。一つ訂正をするのなら、人食い熊と聞いて想像した姿よりも2,3周りほど大きかったことです。なにアレ、もうビーストっていうかモンスターじゃん。

 あぁ、何ということでしょう。お城を追放されたミエルは、更に不幸なことにこのままモンスターに食べられてしまうのでしょうか。

「あらあらぁ、お腹をすかせているんですねぇ」

 しかし、ミエルは慌てることなく、一つだけ持ち出せて荷物を取り出します。それは、甘い匂いを漂わさせる、青林檎でした。

「わたしがおやつに食べようと思っていたんですけどぉ、これは熊さんにあげちゃいましょう」

 ぽいっ、っと、ミエルを頭からまるかじりしようと大きく開いた口の中へミエルは林檎を放り投げます。
 熊も、急に口の中に入った林檎に驚き、思わずそのまま飲み込んでしまいました。

「ぐ、ぐるぅわぁあああああ…………」

 すると、どうしたことでしょう、アレ程に荒ぶっていた人食い熊は、フラフラと姿勢を崩したかと思うと、そのまま地面に横になりスヤスヤと寝息を立て始めたではありませんか。

「なんと、これはたまげたね。魔術の使い手だったとは」
「えへへ、大したものじゃありませんよぉ」

 と、掛けられた声に謙遜しながら、ミエルは周囲を見渡します。はて、今の声はどこから聞こえたのでしょう。

「ここだよここ。いやすごいね。助太刀はいらなかったかな」

 そう言いながら、眠る熊の影から一人の人間が現れました。手には、頭の方に分厚い本をはめ込んだような、奇妙な杖を持っています。その声をよく聞くと、どうやらこの人物が先程ミエルに警告を投げかけた人のようです。

「いえいえ、声をかけてもらったので気がつけましたのでー」
「結構すごい音立てて走ってたけどねこいつ。声かけてやっと気づいたんだ」
「えへへ」

 ミエルは照れたように笑います。どこに照れる要素があったかはわかりません。

「しかし、この時期にこの森に魔術の使い手が現れるとは……」
「あれぇ?なにか駄目でしたかぁ?」
「そう言うわけではないんだけど……」

 杖の人は語ります。この森では数年に一度、最強の魔術師を決める戦いが行われており、今日はちょうどその他か会が始まる前日なのだと言います。

「普通は数日前には森に入って環境に体をなじませるんだよ。前日にやってくるのは、道理を知らない未熟者か、よっぽど自分の力に自信のあるやつだけ……キミはどっちかな?」
「そうですねぇ、お掃除は得意ですけど……」

 ミエルの闘いは、ここからはじまる……!









というわけで今回の入団者。
『新たなるレシピを求めて』ミエル・プラリネ
さんでーす。

女中さんなんですって。現代風に言うとメイドさん。
現代風でもないな。

いいよね、メイド。そこにはある種のロマンってものがさ。
ところでメイド服って家の男性が使用人に欲情しないようにって地味なデザインになったって言うけど現代だとメイド服に興奮する人も多いんだから人間の業って計り知れないよね。

そんな感じです。
では以後よろしく。

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お前さん達がセッティングしたんか?

邪神もどきのマカライトだ、宜しく頼む。

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